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38話 ライバル

ザワザワ。


「なんか注目されてますね」


日比野高校のメンバーは試合後にインタビューを受けたり、応援されたりしていた。


「1回戦の勝ち方がすごかったからね。やっぱり野球は点が入って面白いスポーツだから」


野球は1点だけ取って勝とうが、10点差以上つこうが、得失点差の概念がないので、同じ1勝でしかない。


とは言ってもやはり観客が見たいのは、たくさん点が入る派手な試合。見ていて楽しいのは間違いなくそうである。


上位ベスト4は王者天神山高校はもちろんだが、桜花ブロッサム高校は勝っても負けても派手なので、野球にそこまで詳しくない観客からの人気も高かったりする。


「ベスト4も順当に上がったみたいですね」


「そうだね。天神山が22-0、小田井高校は3-0だけど完全試合、桜花高校は18-11、赤が丘は9-2で勝ってるね。前評判の通りで波乱なし」


「しかも勝ち方も大体評判通り。1つも波乱なし。ほかのところも勝つだろうと思われたほうが勝ってる」


友人と飛鳥が試合結果の書かれた掲示板を見てコメントする。


なんの面白みもない結果のため、さほど食いついてみる人もいない。


「楽しみにしてます。去年のあの試合は負け同然でしたから」


「いいえ、今年はうちのチームが甲子園の夢をかなえます」


「生粋先輩?」


その傍らで生粋がだれかと話していたので、友人は気になって声をかける。


「あら? 男の子? 生粋さんの知り合い?」


その女子は女子としては少し大柄で、普通に友人と同じくらいの体格だった。


通常運動をしていれば女子は多少なりとも筋力で太くなるもので、日比野高校の女子メンバーが細すぎるのである。


「ええ、うちの野球部のマネージャーで野津友人って言うの」


「あ、はい。初めまして。野津友人と申します」


「え、ええ。私は赤が丘高校3年生の武間涼代ぶますずよよ。男子のマネージャーなんて珍しいわね。居心地悪くない?」


ほかの高校だと、ある程度人数を確保できている学校はあふれた部員がマネージャー業務を行う。人数の少ないところは、マネージャー業務をメンバー全員で分割するか、女子マネージャーを採用する。32校のうち、男子がマネージャを行っているのは、日比野高校だけだったので、顧問や関係者を除くと同世代の男子は友人1人しかいなかったのだ。


一応日比野高校のジャージを着てはいるが、事情を知らない女子からは、いぶかしげな眼で見られていた。


「いえいえ、普段から練習中は女子しかいませんし、気になりませんよ。武間さんが赤が丘高校の方なんですね。話は聞いてます。昨年もうちと当たってるんですよね」


「ええ、去年のスコアは4-2で勝ってるけど、あれは勝ったとは言えない。最終回あなたに打たれたライナーがほんの少し横に逸れていれば長打で逆転サヨナラだったはず。あれを勝ったとは言えないわ」


「あ、そこまで僅差なのは聞いてませんでした……。生粋先輩は赤が丘高校を明らかな上位互換とほめてましたので」


「それには変わりないわ。ただ、あの試合の9回裏に関してはそうじゃなかった。だから今回は最後の最後まで油断しないわ。去年より間違いなく強くなってるから」


「それはこちらも同じです。昨年のメンバーが全員1年たってレベルが上がって、期待の1年生もいます。去年の差をひっくり返せるのは間違いありません」


「まずはベスト8まで上がってきてね。今年も甲子園に行くのは私たちだけど」


バチバチ!


目と目が合い、生粋と涼代が火花を散らせる。


【赤が丘高校の涼代と出会った】


去年の日比野高校と赤が丘高校の試合のウワサ


最終回2点差で日比野高校ビハインドでツーアウトランナー満塁で最後に生粋が捉えた打球は

サードのグラブに直接入るライナーだったらしい。

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