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34話 とげとげしさがなくなって

「最近調子いいわよね。杏」


「そうかな? あんまり気にしたことなかったけど」


練習前のキャッチボールをしながら生粋と杏が話す。


「ううん、試合でのムラがすごく減った気がするわ。前はいいときはとてつもなく良いけど、悪いときは割とはっきり球に出ちゃうことが多かったでしょ」


杏の持ち味は抜群のコントロールと2種類ずつあるスライダーとフォークだが、その分球は平均程度である。


変化球の速度は普通程度なので、通常の投手と比べるとストレートと変化球の急速差でタイミングを外すということはあまりできない。


もちろんその分リリースがうまいので、ほぼ同じフォームでストレートと変化球を投げられるので、スライダーとフォークのキレがいい日は、まず手が付けられないが、変化球がいまいちだとイライラして投球の幅が狭くなる。


また、ストレートもギリギリストライクゾーンをつく投球をするので、審判によって差が出て、ゾーンが普通かやや広いくらいの審判だと、見逃し三振も増える。


だが、ゾーンの狭い審判が相手だと、むきになってそのあたりばかり投げるので、余計審判の反感を買って、せっかくのコントロールを生かせなくなる。


1年生の時の試合では、ノーヒットノーランを2度達成しているが、5回も持たずに降板してしまうことも少なくはなかった。


それでも並の投手ではないので、試合を極端に壊すことはなかったが、注目されてからはこの癖もばれてしまい、球をじっくり見られることも多くなっていき、スタミナに難があることが露呈してしまったのである。


昨年の快進撃から日々野高校は練習試合を組まれることも多くなったので、この傾向はより目立って行った。


だが、2年生になって5月を過ぎたくらいから、このムラがあまり目立たなくなっていった。


審判が誰でも、試合のまとめがうまくなり、そのため、変化球が多少キレが悪くても、ストレート中心でまとまるようになりはじめた。


「というか、前より怒りっぽくなくなったんんじゃない? リードに首をあまり振らなくなったし、ピンチになってもイライラしなくなってるし」


横から女房役凪も声をかける。


「私もそう思いますわ。クラスでも前は目つきが少しするどくて、あまり話しかけられることもありませんでしたけど、最近は少しおだやかになられて、お話をすることも増えましたわ」


弥生も会話に参加する。


2年生のクラスは、生粋、凪、陽菜の3人、花香、冬香、椿の3人、弥生、杏の2人が同じクラスである。


「実際何か心境の変化があったの?」


「そんなこともないと思うけど……。あ、友人」


「はい、タオルです」


友人がタオルを渡す。


「うん、ありがとう」


「…………、もしかして……」


「私も同じことを多分思った」


「というより、そうですわ」


3人が何かを察したように顔を見合わせる。


「?」


「?」


その様子に友人と杏は首をかしげた。


~試合中~


「ふぅ……」


守備が終わりベンチに杏が戻る。


「友人」


「はい、ドリンクです」


友人は杏にドリンクを手渡す。


「うん、いい感じ」


「調整してますから」


「…………」


ほかのメンバーが杏を見る。



「えーと」


「グラブはあっちです」


「それで」


「ボールの準備はできてます」


「あれは?」


「壊れそうだったので、備品申請してあります。すぐに届くので大丈夫です」


「うん」


「……杏と友人が阿吽の呼吸になってるわね……、必要なものが必要なときに出てくること以上に気分がいいことはないわ」


「しかも言わなくても伝わるんだから、イライラしないよね」


「あれだけ気を使ってもらえるなら、人当たりも良くなりますわ。やはり友人様はお優しいですね……」


杏自身も自覚はなかったが、かなり気分よく大好きな野球をできていることで、私生活もおだやかになっていった。



【杏への周りの評価があがっているらしい】


杏のウワサ③


目がよくないが、眼鏡が似合わないのでコンタクトにしているらしい

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