32話 椿の過去
「きゃっー、かっこいいですー、椿先輩!」
椿がファーストライナーを華麗に回転しながらとる。
椿のプレーは魅せるプレー。キャッッチングは素人目に見てもかっこよさが目立ち、受身まで含めてとても綺麗な流れである。
そんな彼女のプレーにはファンがついている。レベルの高い日比野高校女子野球部のメンバーには皆ファンがいるが、椿のファンはかなり根強い。
試合中も彼女を単独で応援する子までいるくらいである。
「にしても、椿先輩と生粋先輩のファンは多すぎでは」
椿と生粋のファンには、友人が見慣れない制服を着た人間までいる。つまり人気が学校外まで広がっているというわけなのだ。
「椿さんですよね!」
「お会いできて光栄です!」
「サインくださーい」
「おお、まるでアイドルですね」
「あながち間違っても無いよ。椿先輩はもとジュニアモデルで、同世代の女子からはすごく人気があったんだ」
友人が冗談交じりにいうと、飛鳥が説明する。
「ふふ、君達は今でもファンでいてくれるのかい?」
「もちろんです! 野球をやってる姿も好きでしたから!」
「モデルやめちゃって残念でしたけど、近い距離で話せるようになったので嬉しいです」
「とてもうれしいよ。共鳴者との邂逅ができる今を嬉しく思うね」
クールな台詞というよりは、忠ニな台詞ではあるが、非常にファンには好評のようである。
「椿先輩すごかったんですね」
練習後、友人は椿に話しかけた。
「おや? 昔のことを聞いたのかい? だが、何も引け目に感じることはない。過去は過去のこと。それを良しとしてくれる子を否定はしないが、やはり大事なのは今だろう?」
「何でモデルをやめたんです?」
「野球をやめてくれといわれたからさ。私の肉体に傷がつくことを良しとしない大人がいたのさ。私の体は私のもの。あえてどちらかを選ぶとするならば、受身であるモデルよりも自らが進む野球を選んだ。それだけさ」
「なるほど、昔にモデルと野球ばっかりやってたから、頭が悪くなってんですね」
「……、き、君は本当の私を知って、第一声がそれかい? ある意味ではたくましいな……」
「今が大事というなら、きちんと勉強をしてくださいね。虚数とかアニマとかわけのわからないことを覚えてないで、基礎を覚えてください。赤点取ったら、また一緒に花香先輩と補修タイムですからね」
「か、勘弁してくれ。あの時間は私の自我を壊してしまう……、分かった、真面目にやるから」
【椿の評価があがった】
椿のウワサ③
知り合い全員に痛いあだ名をつけているらしい




