31話 利他的
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本日現実世界恋愛でランキング入りできました。
ブン! ブン!
「ん?」
友人が近くの公園を歩いていると、素振りをするような音が聞こえた。
以前までならその音は耳に入らなかったが、さすがに野球に絡んでこれば自然と気になるものである。
「きれいな素振りの音だな。野球が上手な人がやって……って、生粋先輩だ」
公園で一心不乱に素振りをしていたのは、日比野高校野球部のキャプテン、黒田生粋であった。
ちなみに、生粋はもちろん一流のプレーヤーなのだが、ずっと外にいるのに肌が真っ白で、髪もきれいなストレートの黒髪、おっとりした仕草で、しかもかなり細い。知らない人が見ると文学少女にしか見えないのである。体のつくりと野球のスタイルが一切かみ合っていないのである。
その妙な独特のギャップは見慣れてないといろんな意味で見とれる。
「お疲れ様です。生粋先輩」
「あら? 友人君、何か公園に用事?」
「いえ、俺のうち、この辺なんですよ。生粋先輩の家もこのあたりなんですか?」
「ええ、だから昔からここで素振りはしてたわよ。だから、もしかしたらどこかで会ってたかもしれないわね」
「しかし今日は部活が休みなのに、練習されてるんですか?」
「? いいえ、これは朝の日課みたいなものだから、むしろやらないと気がすまない感じね……」
「あ、そうなんですか……」
友人はその後特に何かを話すわけでもなく、じっと生粋の練習を眺める。
(うーん、見られるのはそこまで気にならないけど、知ってる男の子に注視されるのはちょっと力入っちゃうわ)
ここで生粋が素振りをしていると、遠巻きに誰かが見てくることはあるが、あまり近くに来ることはない。
あまりにも綺麗なスイングと真面目な表情で、邪魔をしてはいけない空気感があるからである。
また、普段から目立っているので、見られるのもそこまで気にしない。
とは言っても、これだけ0距離でしかもお互い顔見知りの相手にさすがに見られることはなかったので、さすがに気になるようだ。
(でも、ちょっと空気が変わっていいからこれはこれでいいかしら)
だが、友人が全く意識していないところで、妙な緊張感が生まれて、ルーティンのようにやっている素振りに刺激が出たので、そのまま素振りを続けるのであった。
「話しかけても大丈夫ですか?」
「ええ、会話くらいはできるわ」
「この前のショートの守備素敵でしたね。俺でも生粋先輩があのポジションが得意なのが分かりましたよ」
「そうかしら? 私はレフトの守備もそんなに悪いとは思ってないけど」
「いえいえ、なんと言うか、自然なんです。生粋先輩はもちろんレフトも上手なんですけど、ショートは守備をしているというより、身についた動きをしてるって感じなんです。ショートをやられた方がいいんじゃないですか? あ、すいません、文句をつけるわけではないんですが」
友人はいろいろなことを女子メンバーに言うが、生粋に関してだけはほぼ何かを言うことは無かった。
だが、今回に関してはあまりの生粋のショートの守備の美味さについて友人が思うところがあったのだろう。
「ううん、気にしないで。でも大丈夫だから。冬香ちゃんのショートは私ではできない独特のポジショニングがあるし、何より花香ちゃんとのコンビネーションはあの2人じゃないとできないもの。私はあの2人のプレーを見て、何の躊躇もなくポジションを譲ったわ。そして、ずっとショートしかしてこなかった私がサードの世界を知って、そして今はレフト。前も言ったけど、いい経験になってるから」
「そうでしたね。でも生粋先輩ももう少し我がままになってもいいと思いますよ。俺から見ても、生粋先輩は何でもできてパーフェクトな人だと思いましたから、何も口出しはしませんでしたけど、俺、完璧な人間なんていないと思ってるんです」
「……、ふふ、そんなことを言ってくれる人は始めてね。ありがとう、でも私はそういうのがあまり得意じゃないから、もし気がつくことがあったら、助けてくれればいいわ」
「はい、もちろんです。少しおせっかいかもしれないですが」
「いいえ、あなたのおかげで皆少しづついい方向に向かってるから。あまり気にしないで、このままの友人君でいてくれればいいわ」
こうして、友人は生粋と話をした。
【生粋と友人の関係が少しだけ深くなった】
生粋のウワサ②
占いをルーティンにしているらしい




