24話 特集
「おや?」
友人がいつも通りに作業していると、グラウンドにスーツ姿の大人が何人かおり、生粋たちがインタビューを受けていた。
「こんにちは。生粋先輩」
「あ、友人くん」
「お、黒田さんのお知り合いですか?」
「はい、俺はここの野球部のマネージャーで、野津友人です」
「女子野球部にマネージャー? 最近までいらっしゃいませんでしたよね」
「ええ、ようやくマネージャーが入ってくれたんです。彼はとても優秀で私たちを助けてくれてます」
「それでは更に期待ができますね。ではまた特集を組ませていただきますね。では」
そういって、その男性は去っていった。
「生粋先輩。あの人は誰です?」
「女子野球特集っていう雑誌の編集をされている人よ。去年私たちが1年生だけでベスト8に行ったことで、特集を組んでくれるようになったの。新戦力が入ったから、今日はそのインタビュー」
「へー、すごいですね」
「多分来週くらいに発売されるから、確認しておかないとね。私たちと同格かそれ以上のチーム情報が特集
されるから、チェックもしなくちゃね」
「というわけで、買ってきたよー」
凪が雑誌を1冊持って、部室に入る。
「ちょっと見てもいいですか。俺こういうのあまり知らないんで」
「どうぞ」
友人は凪から雑誌を受け取り、ページを開く。
「『昨年大旋風を巻き起こした日比野高校。実力はもちろん可愛さも兼ね備えた強豪校! 対外試合勝率9割越え! 今年も波乱を巻き起こすか!』 決まり文句めちゃかっこいいじゃないですか」
「ちょっと褒めすぎだとは思うけどね」
「おのおのも載ってるんですか。さすが期待されてるだけはありますね。というか、生粋先輩は1面もらってるんですか」
「そりゃ生粋は去年のベストナインだもの」
「『えーと、カリスマ性光るクールビューティー。ミート力S、長打力A、走力A、肩力A、守備力A(内野ならS)。4代王者に土をつける最右翼チームのキャプテン。昨年はベスト8ながら、打率、得点圏打率1位でベストナインを勝ちとった。今年は外野手でのプレーになるが、それでも一級品である。勝負強さは今年も健在で、5割近い得点圏打率を誇っている』」
「生粋先輩の評価すごいですね。というか、写真がモデルみたいに綺麗じゃないですか。野球好きじゃなくても普通にこの写真ほしいですけど」
生粋の写真は髪がなびいていて、抜群の角度で取られており、写真集の中身のようになっていた。
「そ、そんなにみられると恥ずかしいんだけど……」
「あ、すいません。えーと、ほかには……」
「『精密機械南雲杏、球速D、コントロールS、変化球A、スタミナC、(打撃平均B)。昨年のエースで4番。今年も投打に活躍。唯一の弱点スタミナは今年も課題だが、四球を出さないピッチングで今年も審判をうならせるか』」
「『守備の要安池凪、ミート力A、長打力C、走力C、守備力S。日比野高校の頭脳。ランナーがいてもいなくても一切変わらない打撃はもちろんだが、それ以上に捕手としての能力はベスト4にも劣らない。制球力抜群の南雲投手をリードしているとはいえ、エラー、捕逸はともに0。そして、独特のキャッチングでボール球をストライクに見せる。まさに魅せる捕手である」
「『クールなリーディングヒッター田岡椿、ミート力S、長打力D、走力S、肩力F、守備力A。出塁率4割5分越えの出塁率の鬼。盗塁も天才的で、塁に出したくないバッターの1位である。ファーストの守備も一級品で、キャッチングミスをすることはない。ちなみに女性ファンがものすごく多い』」
「『小さな大打者阿南花香、ミート力D、長打力C、走力A、肩力S、守備力C。女子野球トップクラスの肩を持つセカンド。守備範囲は狭いが、堅実である。打撃は非凡だが小技大技をこなせる。ゲッツーの多さや中継プレーに彼女の存在は欠かせない。小柄で前向きな性格でチームのムードメーカーでもある』」
「『知的な守護神吉川冬香、ミート力B、長打力D、走力B、肩力B、守備力A。非常に平均値の高い選手で、打撃では小技、守備では広範囲の守備力を見せる。守備では独特のポジショニングでファインプレーを普通のプレーに見せ、打撃ではバントや進塁打をほぼ100%成功させる。野球に関する知識や常識が全部頭に入っており、味方も敵も動きを一切見逃さないとの噂』」
「『スイッチヒッター漆原陽菜、ミート力B、長打力C、走力B、肩力B、守備力B。高打率に俊足、好守備範囲で、しかもスイッチヒッター。明確な弱点はないが、これといった特徴もさほどない。筆者もコメントに困る』」
「『豪打爆発盛田弥生、ミート力F、長打力S、走力F、肩力E、守備力F。当たれば飛ぶロマン砲。低打率ではあるが、決め打ちをするのでこのタイプには珍しく変化球でも打てる。ただ、どまんなかストレートでも待ってなければ振らない。そのため、三振は多いが、出塁率もそこまで低くない』」
「みんないいコメントもらってますね」
「ちょっとよく読んでよ! 私のコメント地味って書かれてるじゃん! 筆者も困るって、この筆者誰よ」
一応陽菜も褒められてはいたが、内容にやや不満げのようだ。
ほかの控えのメンバーも2年生はコメントされており、期待値の高さがうかがえる。
「お、京里も載ってるじゃん」
「え?」
生粋の期待枠とはいえ、まだ1年生の自分が載っているとは思わなかったのか、京里が身を乗り出してきた。
「『期待の新人大砲、牟田京里、ミート力A、長打力A、走力E、肩力A、守備力E。1年生離れした破壊力のある打撃で3番を確保した期待枠。飛距離を出せるパワーヒッターでありながら、抜群のミート力もあって、三振もほとんどしない。このチームは決して打撃が貧弱ではないが、ホームランを打てる打者となるとやや弱かったので、彼女の加入でさらに得点力が増した』」
「写真が可愛くない!。こんな思い切りフルスイングしてる写真を採用することないじゃーん!」
「そこかよ。次からはそうお願いすればいいんじゃないか?」
「むー、そうだけど……」
基本的にビジュアルのいい女子野球部メンバーは、生粋を筆頭に写真映りがいい。もちろん京里も劣らぬ見た目をしているが、写真の採用に京里は不満げである。
「あとは……、お、ちっちゃいけど飛鳥も載ってるぞ」
「え、え? そんなわけ……」
2年生の控えメンバーが小さく載っているところだったので、初めは気づかなかったが、右下の情報は1年生の飛鳥のものだった。
「『守備のユーティリティープレイヤー丹羽飛鳥。ミート力E~F、長打力F、走力E、肩力E、守備力D。郷里と同じく1年生の期待枠。未経験ながら、入学からわずかの間で、全ポジションをこなし、なんと捕手まで卒なくこなすセンス抜群の女子。控え捕手不在のチームの救世主となるか』」
「いいな。めっちゃいい風に書かれてるじゃん」
「なんで私が載ってるんですか! 生粋先輩」
「聞かれたからだけど……。2年生のメンバーだけの紹介のはずだったけど、京里も紹介したら、捕手練習してる飛鳥ちゃんのことも聞かれたから……」
「わわわ、そんな私が……。でもうれしいです!」
もろ手を挙げて飛鳥が喜んだ。
【飛鳥の知名度がわずかに上がった】
日比野高校女子野球部のウワサ
やたらビジュアルのいいメンバーが揃っているので、取材や雑誌の特集が上位の強豪校と変わらないらしい。




