1話 選択肢
「ふぁ~。部活何にしようかな~」
野津友人は日比野高校に入学した1年生である。
彼にとって部活はとても興味深いものだった。家の都合でなかなか部活動に入ることは無かったのだ。
その都合がようやく解決し、晴れて高校デビューを果たすことになった。
「しかし日比野高校は聞いてたとおり部活動が多いな」
日比野高校は文武両道、自由自立が校風であり、基本的には部活動は何でも認めている。
「料理部……、手芸部……、園芸部……、この辺がメジャーか……、お菓子同好会に、清掃研究会、家事クラブ……、面白いな……」
だが、彼の好みは一般的な高校生の男子とは少し変わっていた。
別に運動部に入らねばならないというわけではないが、男子が文化部に入るとすると、天文部や文芸部などの部活が多い。彼の選んでいる部活は、どちらかといえば女子が多い部活動であった。
「ねーねー、ゆーじん君」
彼が部活動のリストを眺めていると、1人小柄な女子が話しかけてきた。
「どうした? 部活決まんないのか? 飛鳥」
彼女は名前を丹羽飛鳥という。童顔でおっとりしている友人の幼馴染であり、ゆーじんとは友人のあだ名である。
「ううん、女子野球部に入るんだ」
「野球? 飛鳥って野球やったことあったっけ?」
「ううん、無いけど、チャレンジしてみたくて」
「へー、まぁいいんじゃないか?」
飛鳥はコミュニケーション能力も高く、どこに行っても馴染めるタイプであり、本人さえそれを望むなら、どこでもやっていけるタイプなのだ。
「もう入部してお世話になってるんだー」
「行動が早いな」
既に部活動への加入可能時期から時間がたっているため、1年生も参加して活動している生徒は多い。
「ゆーじん君もどうかな?」
「野球? 俺は野球はさっぱりだ」
友人は完全な文科系で運動はからっきしである。いつもより長い距離を歩くとすぐに筋肉痛になるレベルである。
「ううん、マネージャーってゆーじん君向きじゃない? うちの野球部マネージャー募集中なんだって」
「マネージャーね……、考えたこともない」
友人はいろいろな文科系の部活に参加してみたかったが、マネージャーという形は考えがなかった。
「じゃあやろうよ!」
「やるっつっても、マネージャーってどうやってなるのか」
「いいっていいって。じゃあ放課後一緒に行こー」
そのままよく分からないまま、飛鳥は友人の席を離れてしまった。
【友人が女子野球部の存在を知った】
野津友人
日比野高校1年生。女子野球部マネージャー。
かなり家庭系男子。右投右打?
女子野球部のメンバーの中で最も手先が器用。