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18話 ちょっと専門的な話

「花香さん、花香さんは盗塁はしないほうがよろしいです」


「いいじゃん、うちのチームは走れるのって、椿か漆原くらいでしょ。生粋はあまり走らないようにしてるけど」


「椿さんは盗塁成功率8割5分を越えています。企画数も多いのにも関わらずです。漆原さんは回数は多くないですが、成功率が9割あるから意味がああります。花香さんは6割9分を越えてないですから、走らないほうがいいです。非効率的です」


「そんな理論的な考えはいいんだよ。走れるときに走っとけば」


「ずいぶん白熱してますね。2人は仲がいいと思ってましたけど」


野球部の時間とは関係のない時間でも、女子野球部のメンバーは野球の話をしていることは多い。


今日はお昼の長い休憩時間、友人がのんびり歩いていると、激しい議論を交わす花香と冬香のコンビを見つけた。


「別に喧嘩してるわけじゃない。冬香がやたらと理論的なことばかり言って、私を困らせるの。友人からも言ってよ。データだけじゃ野球はできないって」


「野球は感覚のスポーツでもありますから、センスあふれる花香さんのプレーを認めてはいます。しかし一方で考えてするスポーツでもあります。長年培われたデータも大事です」


「大体OPSを重視してるのが冬香は駄目なの! あんな欠陥じゃなくて、NOIを重視してよ」


「OPSは分かりやすいですから。NOIは3で割ってる根拠が意味が分かりません。非論理的です」


「あのー、俺にも分かる言葉で説明していただけませんか?」


花咲く17歳の女子としてはなんともマニアックな会話に、普通の17歳には憑いていけない。


「あ、そうだね。えーとね。OPSは出塁率+長打率で、NOIは出塁率+長打率÷3だよ」


「……?」


友人には何を言っているか分からなかった。


「誰でもわかる説明をしなければだめですよ。ちゃんと説明いたします。えーと、打率はお分かりですよね」


「あ、はい。安打数を打数で割った数字ですよね」


「はい、それで出塁率とは、(安打+四球+死球)÷(打数+四球+死球+犠飛)で、簡単に言うと、フォアボールとかでもいいから、塁に出れる確率のこと。うちでいうと、椿さんが4割5分くらいで1番高いです」


「長打率っていうのは、塁打÷打数だよ。塁打って言うのは単打が1、2塁打が2、3塁打が3、ホームランが4で計算して、1打席あたりの塁打数の期待値を出す計算式だよ。安打数における長打数を出すのとは違うからね。うちだと生粋が7割越えしてるかな」


「おおう……、なんとなくわかった」


丁寧な説明を2人からされるが、やはり難しい。


「この上で、長打率と出塁率を足すのはOPSもNOIも同じですが、この2つを同等にしてそのまま足すのがOPS、長打率は3で割って、出塁率を重視したのがNOIといいます」


「へー、どっちがいいんです?」


「長所短所両方あります。OPSは分かりやすいですし、海外でも使われています。ですが打者の評価がやりづらいという難点があります。例えば、うちのチームでは椿さんが出塁率が4割3分で長打率はほぼ5割でOPSが.953ですが、弥生さんは出塁率が3割2分で長打率が6割2分なのでOPSだと.954でほぼ同じになってしまいます。2人ともタイプは大きく異なるのにも関わらずです」


「だからNOIのほうがいいって……」


「よくわかりませんけど、どっちにしてもそれが高いほうがいいんですよね。多分ですけど、生粋先輩は高いんですよね」


「……そうですね。チームで1番高いです」


「出塁率2位、長打率1位だもん」


「うちで1番いい打者が1番いい指標になってるなら、それでいいんじゃないですか?」


「…………」


「…………」


「あれ? なんか変なこといいました?」


「……そうでした。私たちは野球の知識がありますから、こだわりますけど、素人の方にはその程度のものでした……。こだわりすぎるのは非効率的でした」


「ごめん、ちょっと私熱くなってた


「いえ、私もこだわりすぎました」


「じゃあとりあえず、椿さんに盗塁のコツでも聞きましょう。それで少しでも効率があがれば」


「そうだね。冬香も足は速いんだから、練習してみたら?」



「あれ? 白熱した議論は?」


友人の言葉で2人は何かを察して、離れて行ってしまった。



「友人くん、最近あの2人が盗塁の練習をよくしてくれるようになったのはあなたのおかげなんだってね」


「へ?」


数日後、生粋に友人は声をかけられるが、覚えがないので?マークである。


「それに言い合いも減ったわ。ありがとう」


「あ、はい……?」


「花香は感覚的に動くタイプで、冬香は理性的に動くタイプで、基本的には仲がいいんだけど、野球に関してだけは割と意見が合わないことも多かったの。特に盗塁に関しては結構あって、花香ちゃんは足が結構あるのに、気分で走るから、成功率低くて、冬香ちゃんも早いのに、リスクを嫌って走らないから、全然練習してくれなくて」


「そうだったんですか……」


「でも2人の意識は変わって、お互いをリスペクトするようになって、また2人とも上手になったわ。ありがとう」


「俺が力になれたようでよかったです」


「ふふ、あなたが野球に詳しくすぎないからこそできることもあるのね。このまま私たちを助けてね」


生粋は笑顔で友人にそう言い、友人もそう答えた。


【花香と冬香の走塁、盗塁レベルが上がった】


花香のウワサ②


機嫌がいいときはやたらぴょこぴょこ跳ねるような歩き方をするらしい


冬香のウワサ②


ポーカーフェイスだが、ポーカーには勝てないらしい。

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