16話 気高き理想
守備練習中の女子野球部。
「今のゲッツー取れる打球よ!」
「今のポジショニングはナイスね」
「ナイス送球!」
レフトから一際声を発しているのはキャプテンである生粋。
かなり深い外野のポジションにいながら、ベンチまで届く大きな声で、みんなを鼓舞する。
「やっぱかっこいいなー。プレーも鮮やかだし」
野球に詳しくない友人でも、そのカリスマ性とリーダーシップにはやはり魅力を感じるのであった。
「やっぱり男子は生粋みたいな子にあこがれちゃう?」
キャッチャーの凪が側にいて、聞き耳をたてて軽口を言う。
ノックを行う選手のフォローを友人がやっているので、凪とは良く話すことも多いのである。
「ふぅ、皆今日も課題は見つかったかしら? 今週は天気が悪いらしいから、1日ミーティングをする日を設けるわ。その日までにきちんと意見を発表すること」
生粋の指示で文句を言うものは誰もいない。意識の高さが伺える。
「ミーティングですか。大変そうですね」
「そんなことないわ。きちんとコミュニケーションをとることは大事よ。みんな普段仲良くしてるけど、言えることはちゃんと言わないと」
友人が生粋に話しかけると笑顔で答えた。
部活が終わり、皆帰宅をしていたが、生粋と凪は残っていた。
凪はこの部活では副キャプテンの地位を持っているので、2人で方向性を話していることも珍しくは無い。
「生粋先輩はよく皆のことを見れてますよね。外野手なのに、内野の指示も上手ですし」
いつもは2人だけだが、備品整理をしていた友人も残っており、会話が途切れたところで切り出した。
「そりゃそうだよ。元々生粋は内野手だからね。去年の大会もベスト4に残ってない中では唯一ベストナインでサードで選ばれてるし」
「え? そうなんですか。でもレフトの守備すごく上手ですよね」
凪の言葉に友人が首をかしげた。
「ええ、でもあれは普通にできてるだけで、上手とは言えないわ。もっともっと練習はしないとね。あまり弥生が守備が上手じゃないから、私がちゃんとしないと漆原に迷惑をかけるし」
「なんでサードをやらないんです?」
「京里を使いたいからよ。あの子はサードしかできないから」
「生粋もポジションにもう少しこだわっていいのに。元々ね、生粋は中学時代は男子を含めても負けないくらいショートが上手だったの。なのに、あっさりポジションを冬香ちゃんにゆずって、サードになって、それで今年はレフトでしょ」
「いいの。皆が気持ちよくプレイできるのが何よりだから。それに、できるポジションが多いに越したことは無いわ。将来的にプロを目指すなら」
「プロですか」
「ええ。厳しいとは思ってる。でも私は女子プロ野球の地位を上げれるような存在になりたいと思ってるから」
「それで皆にもいろんなポジション試してるんだよね。複数守れないのは私と杏ちゃんと京里ちゃんくらいでしょ」
「ええ。いろんな視野を持ってほしいから。京里もいずれはサード以外もできるようになってほしいけど、今は気持ちよくやらせてあげたいわ。ね、私は犠牲になってるとか思わないから。これをチャンスにして、もっと上手になっていくつもり」
高い志と利他的な思考。やはりキャプテンらしいと友人は思った。
【生粋の評価が上がった】
生粋のウワサ①
クラス長や生徒会をやったことはないが、生徒から1番頼られ、教師にも頼られているらしい。




