14話 お嬢様は主語が足りない
「この学校はすごいですよね」
「急にどうしたの?」
生粋と一緒に準備を友人がしているときに、友人がふとつぶやいたことに生粋が首をかしげる。
「さすが部活にも力を入れてるなって思いまして。去年の成績見ましたけど、遠征とか、試合数とか、合宿とか、設備購入とかすごくしっかりしてるなって思いまして」
友人が確認したのは、昨年の部活動活動記録である。練習試合の数が多くあったが、割と遠征も多く、備品の購入もきちんと定期的に行われていて、合宿も夏と冬にわざわざ他県に1週間近く行っていた。高校の相場を友人は良く知らなかったが、それでも多いのは良く理解できた。
「ええとね……、そこはちょっと複雑な事情があって……、本当のことを言うと、私たちの部活はちょっと特別なの……、というより野球関連の部活が特別なのかな」
「へ? 男子野球部が強いから、女子野球部も予算が多いとかですか?」
「ううん、それもちょっと違って……、弥生のお父さんがね……、お金持ちで……ね……、弥生のことを……溺愛しててね」
「あ、はい、なんとなく分かりました、確かにちょっと言いづらい話ではありますね」
基本的に物事をずばずば言う生粋がややどもったのは、そこに少し申し訳なさがあるからだろう。
「生粋様、フォームを見ていただけるでしょうか?」
「あ、ええ、ちょっと待っててね。友人君、でも弥生はすごく真面目に野球をやってるから、遊びとかじゃないの……、それだけは……」
「いえ、大丈夫ですよ」
生粋が何かを言おうとしたが、友人はすぐに首を振って答えた。
「弥生先輩」
「あら、いかがいたしました? 友人様」
その後、友人は弥生に話しかけた。
「弥生先輩って本物のお金持ちだったんですね。というか様付けはどうにかなりませんか?」
まさにお嬢様という優雅な動きに物腰、上品な話し方空気の違いを感じさせたが、まだ慣れるもの。だが、自分が様付けされるのはこそばゆくて仕方ない。
「申し訳ございません、ですが、学友の皆様を全員このように呼んでおりますので、どうしてもご不快でしたら直しますが」
「いえ、そんなことはないです。ただ、ちょっと恥ずかしいというか、俺は様付けされるような人では」
「そのようなことはございませんわ。友人様は私の初めてをささげた方なのですから……」
「「「???」」」
その時に近くにいた杏、京里、花香が全員振りむいた。よりによって、勘違いしそうな3人である。
「やっぱり男はけだものじゃない!」
「友人はそういうことしないって信じてたのに!」
「部内でそんなことをするのはご法度だぞ! 生粋に言いつけてやる!」
そして案の定である。しかも3人とも声もでかいので、結局全員に知れ渡ってしまう。
「えーと、友人君? どういうことかしら?」
そして生粋に問い詰められる。
「お、俺も何のことかわからないんですが」
友人は当然心当たりが無くて動揺するだけである。
「弥生先輩? 私も聞きましたけどどういうことですか?」
全員の注目が友人に向かう中、飛鳥だけ弥生に話しかける。弥生は自分の発言のあと、頬に手を当ててトリップしていたので誰も話しかけていなかった。
「あら飛鳥様、どうかいたしましたか? なぜ皆様友人様に詰め寄っていらっしゃるのですか?」
「弥生先輩がゆーじん君に初めてをささげたとか言ったので、みんな混乱してるんです」
「あら? 皆様はまだ男性の方に初めてをささげたことがなかったのですか? ほかの皆様は共学で過ごしていたと聞きましたし、男性の方に交じって野球もやられていたのですから、経験はあると思っておりました」
「そ、そんなことないよ! みんな全然だよ!」
「あら? 飛鳥様は友人様と幼馴染なのですよね? 握手もしたことがないのですか?」
「え? 握手?」
飛鳥が声を出して首をかしげると、ほかのメンバーも友人と飛鳥と弥生に目線を向ける。
「ええ……、男の方の手のひらはこのような感じなのだと……。私初めて手を握りましたわ……」
「…………、そういうことね……」
生粋含めて全員が嘆息する。
「まったく紛らわしい……。そんなことか」
杏がつぶやき、全員が嘆息する。
「そんなこと? ではさきほどは何のことだと思って皆様怒っておられたのです?」
弥生の純粋な質問に全員顔を背けてその場を去ってしまった。
【弥生の評価が上がった】
弥生のウワサ①
ボディガードや執事がいるが、学校には入れないようにしているらしい。




