13話 注目
キン、キン。
右打席から綺麗な流し打ち。
カキン!
左打席から豪快な引っ張りうち。
パァン!
やや難しい背走キャッチもこなす。
「上手ですよね。漆原先輩は」
「ええ、地味だけどスイッチヒッターで、小技ができる漆原は貴重ではあるわね」
友人が生粋と一緒に練習を見ているのは、漆原陽菜。日比野高校女子野球部のセンターであり、8番打者。ただこのチームにおいては、8番打者は3番打者に近い役割も果たす。
「そういえば、何で皆名前で呼び合ってるのに、漆原先輩だけは苗字なんです?」
「特に意味はないんだけど……、私と凪と漆原は小学校時代からの付き合いがあって、凪は幼馴染でそれよりも付き合いが長いから、名前呼びなんだけど、漆原は小学校のときに知り合って、そのとき漆原って呼んで、そのままここまで来ちゃったから、私と凪もそのまま呼んでて、そしたら、周りも皆漆原って呼ぶようになっただけよ」
「ああ、確かに1回呼び方が馴染むと、あえて言い直すのも変になりますもんね」
「クラスメイトもそのせいか漆原って読んでるけど、別に仲が悪いわけじゃないわ。とても気が利くいい子よ。日直が休めば代わりに仕事してるし、教室の掃除もこまめにしてくれるし、本当はもっと豪快にバッティングしたいのを、抑えて小技に努めて貰ってるし……、ただちょっと地味なの。打撃もあまり大味じゃなくてそつなくこなすし、守備もポジショニングがいいから、普通に取っちゃうから目立てなくて」
「最初忘れかけてましたもんね」
「いてくれないと困るんだけど、いなくなってからいないと困ることに気づくタイプなのよ。成績や体力もちょうど真ん中くらいであまり課題もないから。つい手がかからなくて、存在を見失っちゃうの。だから、友人君には少し漆原を気にしてくれてもらえると助かるわ」
「俺は皆を共通で気にしますから」
「お願いね」
「ねぇ生粋。最近すごく見られてる気がするんだけど……」
数日後、陽菜が、生粋に相談を持ちかけた。
「そんなことないわ。友人君は皆のことを平等に見てるわ。漆原は地味だから、見られなれてないんじゃないの? 自意識過剰になっちゃった?」
「そ、そんなことないけど……、見られるって割と緊張するね。しかも男の子だし……、生粋はいつもこんな感じでしょ……」
「いい緊張感をもてるのはいいじゃない。試合にも生かされるわ。だからそのままでお願い」
「……分かったけど……」
そして、陽菜は友人の目線を常に気にしつつ、練習することになった。
【陽菜の練習精度があがった】
陽菜のウワサ①
目立つのは嫌いらしい。




