11話 弁当の魅力
「京里ちゃんって、お弁当は持ってこないよね」
場所は1年生の教室。京里、飛鳥、友人のクラスである。
京里と飛鳥は野球部の絡みで仲良くなり、普段も一緒にいることが多くなった。
もちろん友人も仲はいいが、友人は男子と一緒にいることが多いので、たとえば昼休みの時間は別々になっている。だが、高校生ともなれば、いくら幼馴染でも男女が分かれて過ごすのはそこまで変なことではない。
「うん、うち母さんが忙しいし、父さんは単身赴任だから、どうしてもね」
「京里ちゃんは料理はしないの?」
「お恥ずかしながら全く……、背が大きいのに、女子力も足りなくて……」
「そ、そんなことは言ってないよ~。ごめんごめん」
自分の女子にしては大きい身長にコンプレックスのある京里だが、野球一筋に生きてきた体育会系の彼女は、家事は一切できない。
「私もぜんぜんできないから。別に今は必要ないからいいじゃん。京里ちゃんは女子野球部の期待のルーキーなんだから」
「でも飛鳥のお弁当はいつも綺麗よね。栄養のバランスもいいし、何より冷凍食品とかそういうものが無いもの」
飛鳥の弁当箱には、メインに小さなとんかつ、青い野菜が仕切りに入って、卵焼きも入っているが、どう見ても冷凍食品の要素がないものだった。
京里は何度か飛鳥の弁当を眺めているが、卵焼きこそ毎回あるものの、ちゃんと栄養バランスがよく彩りのよいものを選んでいる。
「お母さんが料理上手なのかしら?」
「お母さんは京里ちゃんと一緒で忙しいから朝はつくれないよ」
「え? じゃあこれは誰が?」
「これはゆーじん君が作ってくれてるんだ」
「え?」
京里があっけに取られた顔をし、その京里と飛鳥の会話を聞いていて、飛鳥の弁当を見たことのある女子もざわついた。
「ん? なんで皆こっち見てるんだ?」
そして目線を友人に向けるのだが、友人は困惑するばかりだ。
「あ、確かに飛鳥と同じレパートリーじゃない!」
そして1人の女子が弁当を見比べて、全く中身が同じであることに気づき、再びざわついた。
「おまえなぁ。幼馴染が弁当を作るって、あこがれのシュツエーションだけど、役割が逆だろ」
友人と一緒に昼食をとっていた男子も呆れ顔だ。
「別に弁当は1人分つくるなら、2人とか3人作っても一緒だし、対した手間じゃねぇよ。ちゃんと材料費は飛鳥の母さんからもらってるしな」
おそらく男子の言いたいことはそういうことではないのだが、突っ込むのも面倒なのか、苦笑いで返す。
「京里ちゃんも食べてみる? 美味しいよ」
「え、ええ」
京里は困惑しながらも、飛鳥の弁当を一口食べる。
「何これうまっ。冷めてるのにサクサクじゃん」
一口とんかつを食べてみると、その味と触感に京里は驚いた。
「ねーねーゆーじん君。お弁当京里ちゃんにも作ってあげない? 京里ちゃんパンとかばっかり食べてて栄養のバランスがよくないと思うんだけど」
飛鳥が京里の良い反応を見て、友人に提案する。
「え、それは悪いし……」
「別にいいけど。それこそ3人前作るなら4人前作っても手間はそんなに変わらないし、マネージャーとして栄養のバランスがよくないのは気になるしな。京里、材料費200円くれれば作ってもいいが?」
「え……ほんとにいいの?」
「別に気になるんだったら、毎日じゃなくて、やってほしいときだけ言ってくれてもいい。俺のやる手間はつめる作業が1つ増えるだけだからそんなに気にならんし」
「じゃ、じゃあ早速明日お願いしてもいい?」
「分かった。弁当箱だけ準備しといてくれ」
そして京里も次の日から友人の弁当を食べることになった。もちろん、その日以降、ほぼ毎日お世話になるのであった。
【京里の栄養バランスがよくなった】
京里のウワサ①
文字がものすごく綺麗らしい。




