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042 迫る絶望

遅くなってほんっとぉおおおおおおに申し訳ございませんでした。














 そこは、薄暗い教会。

 ある男を模したステンドグラスから差す淡い光が、教会の最奥に位置する石像を神々しく照らしていた。

 その前で、軽くウェーブのかかった煌めくような金髪の少女が、額を冷たい地面に擦るつけ土下座していた。


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい、ごめんなさい主様ぁ」


 さっき、確かに呼ばれたのだ。

 しかし、ここは自分の主と離れすぎてしまっている。


 主の期待に応えられない不甲斐なさと悔しさ、己の内で暴走する会いたいという気持ち、そして、それでも少しお仕置きを期待してしまう想いを胸に、少女は額を擦り続ける。

 目の前の石像に、精巧に作られた清水蒼流の石像に。

 修道服から突き抜ける翼さえその意志を見せるように地に垂れ、ラファエロはひたすらに謝罪の言葉を繰り返す。


 ──ああ、主様、主様、会いたいですぅ。会いたい、会いたい会いたい会いたい。早く、会いたい。


 彼女の瞳は、光なき深淵のようにただただ黒かった。








 ■■■








 ところどころ黒く焼け焦げ、抉れ、瓦解した街道で、四つの影が踊る。


「──チッ、流石に三対一は不利だな」


 フード付きの黒いローブを揺らして黒髪黒眼の男が着地、同時に悪態をつく。

 彼の細められた双眸が指す先には、三人の少女が戦闘態勢で出方を伺っていた。

 ──そして、その後ろには······


「こっこまでおーいでー、プギャー!」


 顔の横で両手を開いて、如何にも馬鹿にしてますといった表情で、如何にも馬鹿にしてますといった幼稚な挑発を繰り出す勇者の姿。

 ──うん、まあ、勇者です、アレ。はい、すいません。


「〈収束解除(バースト)〉!!」


 額に青筋を浮かべながら、男が叫ぶ。


 黒い炎が凄まじい速度で距離を喰らうが、蒼流に当たる直前、それは透明な壁に阻まれ霧散した。


「どうだいそーりゅう、やっぱりボクが一番役に立つだろう?」


 スライムの粘液塗れのネチョネチョしたサミが顔を綻ばせる。


 ──無だ、無になるんだ。これは汚くない。綺麗な汁。ああ、不思議と輝いて見えてきた──あ、テカってるだけだこれ。


 蒼流はただ無表情でサミの頭を撫でる。とりあえずこうしとけば全て解決する。


「──んあ!ふぅ、んっ」


 一撫でする毎にネチョッと嫌な音がする。

 引くつきそうにな眉を自己暗示で組み伏せて、蒼流は何処か遠い所を見つめていた。


 その光景を穴が開く程の眼光で凝視するシルが、黒髪の男に向き直り、地を踏み締めて瞬速の突きを繰り出した。


 突然の攻撃を、男は身体を捻ってなんとか躱す。


 しかし、次に待っていたのはヤミリーの追撃だ。


 無理な体制の男の顔に、赤を基調とした巨大な篭手が迫る。

 男は苦悶に顔を歪めて、黒い剣の腹で拳を受けた。


 しかし、身体を捻った状態では踏ん張ることすらできず、男は後方に吹っ飛んだ。


 レンガ造りの壁に激突、だがその勢いは止まらない。

 拮抗すら見せずに壁を突き破る。


 崩れ落ちるレンガの残骸は小山を作り男を埋めた。


「──蒼流······私、役に立った、よ?──だから······ナデナデ、ちょうだい······?」

「蒼流様、わたくしが最もお役に立ちました。ですので、蒼流様が寵愛を与えてくださるのはこのわたくしでございましょう?」


 シルとヤミリーが蒼流に駆け寄る。

 サミを真ん中に挟んで立つ二人を撫でるため、サミの頭に置いた両手を持ち上げようとするが、一回り小さな可愛らしい掌が上から押さえつけるようにそれを阻んだ。

 幼い体の何処にそんな力があるのか、蒼流の両手はサミの髪に押しつけられて沈む。


 やめて、凄いネッチャネッチャしてるから。それに見てくださいこれ、外はトゲトゲで、中もトゲトゲ、グサッという歯ごたえと一緒に口の中に殺気が広がります。どうです?痛そうでしょう?口の中血だらけですね。


 蒼流の手を自分の頭に固定して気持ち良さげに目を細めるサミの両隣で、シルとヤミリーが殺気をビンビンに飛ばしてる。こわいですね。





「──ほんと、癪に障るぜぇ勇者ぁ」





 淀んだ声が頭上で響く。

 いつの間にやら瓦礫から抜け出して建物の屋上に立つ男は、言葉に似合わず楽しげに口端を吊り上げている。


 誰も気づかなかった。そう、男が声を発するまで誰一人として気づけなかったのだ。その事実に、蒼流は男に対する警戒度を一段階引き上げる。


 魔法打つばっかの唯の陰湿野郎じゃないってことか······。


「まあいいぜ、どうせてめえら──ここで終わりだからなあ!!」


 その異様な雰囲気に、蒼流が息を呑む。


「俺の名はブラッド!闇ギルド〝月の死神〟ギルドマスター、ブラッドだ!」


 ローブの男──ターンは後ろに跳躍、そのまま姿を消した。

 声を飛ばそうとする蒼流だが、すんでのところで脳内に響く声にせき止められた。


『──キースダ、皆聞こえるカ!?急に走ってったシルヴィアたち三人が蒼流のとこに行ったと仮定してはなすゾ!』


 キースからの通信だ。なにやら声音が酷く焦っている。

 嫌な予感を感じながらも、蒼流は固唾を飲んで続きを待った。


『九時の方向から魔物の群れがその街に向かってル!オレ達も急ぐけど間に合いそうにナイ!数は──








 ──三万以上!!』














感想待ってます。批判的な感想でもいいです。もういっその事唯の罵倒でも構いません。「おせえんだよカス!」「文章下手かゴミが」「消え去れ」などでも気持ちい──嬉しいです。(え、エムなんかじゃないんだからね!)

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