038 モッブ再来!彼らの本当の実力とは!?(瞬殺)
「〝スカートめくりのザッシュ〟さんは、ユニークスキル持ちなんです」
「ユニークスキル?」
突如ミアの口から発せられた知らない単語に、蒼流は首を傾げる。
「ユニークスキルっていうのはですね、その人が持っている世界で一つだけのスキルのことです」
それは、自分一人だけが所持する特別な能力だと彼女は語った。
「そして、ザッシュさんのユニークスキルは〝瞬間超強化〟。一日に一秒だけ、自身の能力を飛躍的に向上させることができるんです!」
迫真といった表情でテーブルに手をつくミア。
身を乗り出したことにより、その大きなお胸様が揺られていらっしゃる。
「しかもですね!なんとこのスキル、使っている間は冒険者のトップであるSランク冒険者の実力ですら凌駕しちゃうんです!」
「おお、それはすごいな!」
いざという時の奥の手というのは持っていて損は無い。しかも確実性と応用性にも優れている。
「──まあ、いつも女の人のスカートめくるのに使っちゃうんですけどね」
「約立たずじゃねえか」
何やってんの?馬鹿なの?馬鹿だよねえ。とんでもチート能力何に活用してんの?やってることが小学生だよ。
「あの人、毎日十時にギルドに来て最初に目に付いた女性のスカートめくってから依頼受けるんですよ。おかげでその時間帯だけ女性冒険者の方がめっきりいなくなって、男性冒険者の方ばかり沢山押し寄せて来ちゃうんですよ」
溜息混じりに不満を零すミア、そこにはいつも見せている受付嬢としての顔はなかった。
「ミアさんも苦労してるんですね」
「そうなんですよう」
苦笑を顔に貼り付けながら、蒼流は心の中で至って真面目に決意した。
これからは毎日十時前にはギルドにいよう。
──その時、ギルドの入口付近で荒々しい声がこだました。
「あぁん!なんだぁあんちゃん、ぶつかっておいてごめんなさいもなしか?あぁっ!?」
蒼流が目を向けると、二人の大柄な男たちが凄みをきかせていた。
相手は、丁度蒼流と同じくらいの背丈の少年だ。
全身を薄汚れた黒のローブで包み、フードを深く被っているので、その表情は分からない。
あ、あれは、いつぞやのモッブ二人組!?
まさかの再開に目をみはる蒼流だが、次いで響いた食器が割れる音ですぐに正気に戻る。
そこでは、ローブの男に無造作に殴り飛ばされた金髪モッブがテーブルをひっくり返していた。
次の瞬間には、流れるような動作で、ローブの男が横で茫然と口を開けている緑髪モヒカンモッブの顔面に拳をめり込ませる。
勢いそのまま、緑髪モヒカンモッブは倒れている金髪モッブに激突──二人とも完全に目を回していた。
──モ、モッブーーーーーーー!!
瞬殺されたモッブ二人組の重なる山をみて、蒼流は涙を禁じ得ない。
あいつら、久しぶりの登場なのにこの扱い······酷すぎる!
誰もが唖然と静寂を守るなか、ローブの男が手を叩いて声を上げた。
「はいはい皆さんこんにちはァ、人を探してるんですけど知りませんかね?」
男がフードをとる。
その顔は見下した嘲りを刻み、髪は奈落を思わせる黒。
邪悪な何かを感じられる少年だった。
「ええっと、〝勇者〟様らしいんですけど、〝清水蒼流〟って名前の」
心臓が、意図せずして高鳴った。