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031 デンジャラス真っ黒男












 漆黒の鎧と、それが腕に抱える同色の兜。胴体から頭が転がり落ちたような異様な姿のモンスター。

 ──名を、ディラハンと言う。


「吾輩はディラハンのディラン。勇者よ、突然で悪いが勝負を申し込む」

「結構です」

「その言葉、了承と受け取った!」

「君たち耳ついてるかなー?」


 おかしいな、意思の疎通ができないぞ?


 蒼流の言動に一切の耳を傾けないまま、ディランと名乗る漆黒の鎧は、がしゃりと自らの頭を鷲掴む。

 そして天高く掲げた後、大袈裟に振りかぶって、


「──くらえ!頭デンジャラススローイング!!」


 頭の悪い掛け声と共に、しなりを効かせ頭をデンジャラスにスローイングした。

 蒼流めがけて飛来する真っ黒な豪速球は、確かにゴツゴツとしていてデンジャラスだ。

 しかし蒼流は、落ち着いき果てたゆったりとした動きで、鞘から黄金の剣を引き抜く。


 ──ドクンッ、と心臓が大きく鼓動する。身体の奥から熱い何かが湧き上がってきた。

 蒼流の髪の白く染まった部分が、(ほの)かに光を帯び、周囲の感覚を一層強く感じる。


 光り輝くエクスカリバーを縦に構え、がっしりと両手でロックする。


「蒼流デンジャラスフルスイング!!」


 前足に重心を置き、地面を踏みしめ、腰を捻り、その全ての動作が、蒼流の腕に余すことなく力を伝えた。

 黄金のスイングが宙に光を残す。


「オウチッ!!」


 エクスカリバーの腹がディランの頭を捉え跳ね返した。


 ノックされた頭は、弧を描いて飛んでいく。

 そして、勢いそのまま窓ガラスに衝突した。

 ゴツゴツとした硬い球が、かなりの速度で飛来するのだ。当然普通の窓ガラスが耐えられる訳もなく、甲高い音をたてて薄氷(はくひょう)さながらに砕け散る。


「──な、馬鹿なぁ~〜~〜~〜~!!」

「馬鹿はお前だ」


 ここは五階。下を覗くと紫色の草が手招きしている。それに導かれるように、もがく手足すらないディランの頭が消えていった。

 遅れて、ディランの胴体が窓から身を乗り出して手を伸ばすが、虚しく宙を切るばかり。


 その横を素通りする蒼流と仲間たちは、ディランの胴体には目線ひとつ向けなかった。



 さらば、脳内デンジャラス男。





 ■■■





 繊細な彫刻の乗った黒い門。こちらを見下ろしてくるその威圧感は、筆舌に尽くし難いものだ。


「この先に、魔王様がいらっしゃいます」


 ──おかしい、敵が少な過ぎる。今まで三人としか戦っていない。


「この先は、私は同行が許されておりませんので······」


 ピョン吉は軽く会釈し、待ちの姿勢をとる。


 ──やはり、これは罠だ。恐らくこの中はモンスターハウスで、門を開けた瞬間魔法や弓の雨あられ。ぜっっったいに入ってはダメだ。


「では行きましょうか」



 ヤミリーが門を押し開ける。ギギギと音をたて思いのほかスムーズに開いたのは、しっかりと整備が行き届いている証拠か。



「························ッッッッ!!!???」



 蒼流の顔が時間差で崩れた。

 その顔はもう、鬼よりも鬼の如くと言った感じだった。











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