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029 もうやだお家帰りたい













「──お、おおお!」


 (つた)を身に纏う灰色の外壁と点在する突き抜けるような複数の紫色の屋根。

 周りを点々と囲む枯れ木と岩のオブジェクト。朽ちた荒野に悠然ともんを構えるその存在感たるや、キャメロットの王城さえも見劣りするものだ。

 見上げる魔王城を前に、


「正しく、ファーンタジーーー!!」


 蒼流のテンションマックスだった。


「どーせ皆死ぬんだー。アハハハハハ」


 ──絶望の先のマックスだった。


 そびえ立つのは巨大な敵の総本山。向かう蒼流たちは五人。


 終わったー。かんっぺきに終わりましたー。


 時を惜しむように思考に没頭していたとき、クイッと、服の袖が引っ張られる。


「だいじょーぶ、だよ?変な奴が、来たら、私が、蒼流を守るよ?」

「シル······」


 なんていい子なんだ。そうだ、何も心配することはなかったじゃないか。俺には皆がついてるんだ。


「ああ······往くぞお前ら!」


 そして蒼流たちは、開け放たれた門の中に消えていった。










 ■■■










「······」


 これは、どういう状況だ?

 門をくぐった真横には、頭のトゲトゲした緑色の人型モンスターが、口の中に並べられた長く尖った歯を半開きにして、「きしゃしゃしゃ」と笑っていた。


 こっわ、なにこいつこっわ!


 助けを求めシルたちに目を向けるも、彼女らは緑の化け物には目もくれずに普通に素通りして行った。


 え、無視!?明らかに変な奴だよこいつ!!え?え〜〜〜······。


 確認するように緑色のモンスターにもう一度振り返る。


「きしゃしゃ」

「······」

「きしゃしゃしゃ」

「······」

「き······ポッ」

「何故そこで顔を赤らめるぅ!」


 なんなんだホントに。


 気まずくなった蒼流は、小さく会釈をした後仲間の背中を追う。過ぎ去った背後からの視線が、蒼流を一層げんなりさせるのだった。


 本当に、何をやっているのだろうか。


「お待ちしておりました、勇者御一行様」


 庭園を通り、城の入り口をくぐったところで、黒い執事服の男が行く手を阻んでいた。

 月明かりに照らされ、影となっていた顔が晒される。


 カエルだった。

 なんか、うん、カエルだった。

 朱色のカエルの顔が、執事服を着ていたのだ。


「わたくしは、今回勇者御一行様を案内させて頂きます、ピョン吉ピョン太と申します」

「ピョン吉ピョン太!?」

「ではこちらへ、魔王様がお待ちです」

「お待ちしちゃってんの!?普通こういうのって四天王とかそういのから倒していくやつじゃないの!!??」


 ピョン吉を先頭に魔王城を迷いなく進むシルたち。

 敵の本陣をなんの警戒もせずに自然体の四つの背中。


「──おい、絶対罠だって」


 堪らず蒼流は、ピョン吉に聞こえないような小声で、四人に耳打ちをする。


「──?なに、が?」

「どうかしたのですか?」

「なにかあったのかい?」


 ダメだこりゃっ。


「リリエル。このままついて行くのはまずい、一回策をねろうぜ」


 頭のネジぶっ飛んだ三人組をほっといて、この場唯一の常識人に最後の希望を託す。


「──────なんで?」

「お前もかーい」



 清水蒼流、辞世の句。

 こりゃダメだ もうダメダメだ こりゃダメだ



 光ない眼で今までのことを脳内再生する蒼流と今尚進みつずける仲間たちの前に、黒い人影が現れた!



「止まれ!ここを通りたくば、我らを倒していくんだな!」


「もうやだお家帰る」














キースの一人称が〝俺〟から〝僕〟に変わりました。

そしたら口調もちょっと変わりました。

するとキャラが変わりました。


詳しくは人物紹介2の内容を少し書き換えたのでそちらを。

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