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003 モブキャラは大抵何処にでもいる






 蒼流が勇者になる決意をしてから早くも1日がたった。


 突然ですが問題です!!勇者になるとシルに伝えたら、上機嫌(まあ無表情だからよく分からんのだが)になって武器の調達に行くとかで一緒にとある泉まで向かっているのです。そして、その途中にある城下町の広い道路を白銀の美少女シルと一緒に歩いているのですが、俺がとてもビクビクしながら歩いているのは何故でしょう!?

 ・・・・・・・・・・・・正解は〜、超絶美少女と二人っきりで歩いてだけで妬まれるのに、挙句の果てに手まで繋いでいるのだからでした〜。アハハハハハハー。・・・・・・視線が痛い!!なんか皆さんの目が怖いのですが。てか何でこの人(シル)は俺の手握ってんの!?温かくて柔らかいんだけど、にぎにぎしちゃお。


 ────しかーし!もし運命というものがあるのなら言わせてもらおう!!────ありがとうッ!!!!

 サヨナラ()えない俺。こんにちわ新しい理想郷(せかい)

 民衆よ刮目せよ!非リアよ嫉妬せよ!貴様らの醜い感情が、より一層俺を愉悦に浸らせる。


「んーふふふふ、ふはーはっはっは、アーハッハッハッハッハ、イーヒッヒヒヒヒヴォホッ、ゴホッ、ゲッホゲホッ、オエッ」


 待って出ちゃう、内蔵出ちゃう。胃吐き出して洗い始めちゃう。


「よおよお、姉ちゃん。俺達と遊ばねえかい?」

「おおー。なんてまぶい女だ。ひゃははははっ」


 ガタイのいい男二人組が現れた!


 なんて典型的なチンピラだ・・・・・・。断言しよう。俺じゃ絶対勝てない!というわけで失礼のないようにしてこの場を乗り切らなくては・・・・・・よし、まずは挨拶からだな。


「おはようございます。モブAさんとモブBさん」


 あーあ、やっちまった。つい本音でちゃった☆


「んだとてめぇ・・・・・・」

「死ぬ準備はできてんだろうなあ。あぁ?」


 モブAとモブBが拳を鳴らして近づいてくる。


 完全にブチ切れちゃってますね。どうしよう。

 こんな時こそ・・・・・・テッテレー、スカウター。説明しよう、スカウターとは、レンズごしに相手を見るだけで雰囲気からその戦闘力を知ることができる優れものなのだ!注:蒼流のとんでもない独断と偏見で決まります。


 蒼流は何処からともなく現れた見るからにド〇ゴンボールのスカウター的な物を装着する。


 ──ピピッ、戦闘力5か、ゴミめ。まあ、俺は1なんだけど・・・・・・しょうがない、あの手でいくか。


 ──受けるがいい!必殺〈ド・ゲザ〉!!


 蒼流が男らしい豪快な()みを刻み、膝を折りたたんで土下座の体制に入るのと同時に、二人のモブが大きく振りかぶって蒼流に破壊の一撃を喰らわせようしたその瞬間、()()()()宙に浮かび、後方に半回転して頭から着地した。


「「「────は?」」」


 モブA、モブB、そして蒼流が打ち合わせた様なタイミングで同時に声を漏す。

 そこにはモブ達を返り討ちにした張本人、シルが毅然(きぜん)と立っていた。


「蒼流には、指一本触れさせない・・・・・・」


 抑揚の少ない声に殺気を乗せて小さく呟く。

 果たして華奢(きゃしゃ)な身体のどこにそんな力があるのだろうか。



 ──嘘やん。


 この人こんな強かったの!?勇者様完全に置いてけぼりなんだけど・・・・・・。


「蒼流、行こ?」


 へっ、カワイイじゃねえか。じゃあな、モブ・・・・・・いや、モッブ達。


 隣におられる格上様に恐怖を抱くも、蒼流は必死に強がる。しかし、そんな心の中の呟きを音にする勇気は流石になかった。

 引きつった笑顔で手を引かれる蒼流。その足が少しだけ震えて見えるのは、ただの見間違いだろう。


 未だ状況が理解できず、でんぐり返しの途中のような体制で、足の間から呆けた表情の顔を覗かせているチンピラ二人組の姿がだんだんと小さくなっていった。





 ■■■






 キャメロット城下町最北端の奥に位置する迷わずの森。その中心にある小さな聖光の泉という泉には、伝説の聖剣エクスカリバーが眠っているという。

 そして、蒼流とシルは今まさにその森の中を歩いていた。

 広葉樹が生い茂り、小鳥たちが歌を歌う。そんな穏やかな一時に、


「へー、この森迷わずの森っていうんだー。すごく安心感のある名前だね。アハハハー。────じゃねぇんだよ!!なんだ迷わずの森って。普通迷いの森だろ!!二人に襲い掛かる数々の危機、乗り越える内に縮まる二人の距離。そういうテンプレを俺は送りたい!!」


 蒼流の怒号が一人虚しく森に溶ける。


 ──その時、蒼流の腕が何者かによって引っ張られた。そこには、蒼流と手を繋いだ超絶美少女シルビィアさんが、相変わらずの無表情、しかしわかりやすく青ざめた顔でこちらを見つめていた。


「──どうかしたか?シル」


 明らかに様子がおかしいシルに蒼流が首を傾げる。するとシルは、





「────迷った」





 そう呪いの言葉を零すのだった。

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