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027 色々とシャレにならない朝

三章スタートです。

いつものごとくグダリますが、どうぞ宜しく御願いします。

















 朝、蒼流が目を覚ましたとき、殆どの確率でシルヴィアが被さるように乗り寝息をたてている。最早添い寝じゃない。添ってないもん。すごい苦しいもん。

 まあそれは蒼流も黙認している。というかバッチコイ。蒼流のジョージさえ暴走しなければどうということはないのだが、今回のは少々まずい気がする。


 なぜ、この子はシャツ一枚しか着てないのだろう。

 待て、落ち着くんだジョージ。ここはお前の出る幕じゃない。


「シルヴィアさん?何をしているのかな?」

「──?睡眠?」

「僕が言ってるのは君がなんでシャツしか着ていないのかということでね?」

「──パンツは、履いてる」


 普段よりも目元をキリッとさせて無表情なままドヤ顔を作るという器用な技術を見せるシル。


「パンツ一枚で許されるほど世界は優しくないんだよ?」

「──優しい、世界を、作りたい······」

「誰もシャツとパンツだけで許される先進的過ぎる世界なんて望んじゃいねーよ」


 パンツという唯の布キレが何故性的欲求を刺激するのか?それはその希少価値故だ。普段は目にすることの叶わぬそれが、一陣の風によりガードが破られたときにのみ垣間見える素晴らしきチラリズム。そこに人は夢と希望と神秘と興奮を覚えるのだ。


 ──つまり、常時剥き出しにされたパンツは唯の布キレに成り下がるということだ。


「いいかいシル?パンツはね、お淑やかではないといけないんだ。だからね?ズボンかスカートをちゃんと履こう」

「──ん、分かった」


 そしてシルが起き上がる。

 上に乗られる圧迫感から解放された蒼流の目に飛び込んできたのは、揺れるシャツから顔を出す、真っ白なパンツだった。






 ──圧倒的、チラリズム!!!!






 一撃で思考を吹き飛ばされた脳内には、その言葉だけがデカデカと貼られていた。


「止めてっ、童貞には刺激がキツイッ!!」


 毛布にくるまり、外界との一切を遮断する防御形態。その大きな団子のような白い塊を前に、シルは不満そうに頬を膨らませる。


「むー」


 彼女の頭を支配するのは、蒼流に構って貰いたいという強力な欲求。

 内容だけは可愛い欲求に逆らわぬままシルは行動する。

 丸く膨らんだ布団の下に開いた僅かな隙間に、無理やり顔をねじ込んで侵入する。

 頭が入り、肩が入り、胴が入り、最後にはつま先までするりするりと吸い込まれていった。

 シルの細く平らな身体は、なんの抵抗も見せずに滑るように布団に潜り込んだのだ。


「ぎゃあ!!やめろぉ入ってくるなぁ!!」


 シルの頭を鷲づかんで押し返す蒼流。しかしエクスカリバーを装備しているときなら露知らず、今の蒼流は力の強い一般人ぐらいなもの。対するシルは、華奢な身体から莫大なエネルギーを引き出す超パワー。結果は火を見るより明らかだ。────が、シルの身体は一向に前に進まない。


 ──拮抗していた。


 エクスカリバーを装備していない蒼流が、布団の中で頭から突撃してくるシルを押しとどめている。


 もしかして、俺強くなってる?


 ──しかし、伸びてきたシルの腕が、蒼流の胴体に絡みついた。


「──え?」

「むー!!」


 蒼流が固まるとともに、今までの倍くらいの力で引き寄せられる。

 束の間の拮抗が崩れる。

 肘が折れ最早阻む手段のない蒼流に、勢いそのままシルが突っ込む。

 相変わらずの鯖折りをかまし、シルは蒼流の腹に顔面を押し付ける。


「──ん、蒼流の匂い」

「ぐ、うぉぉぉぉ」


 目眩のするような苦痛の中で、蒼流は必死に意識の手綱(たづな)を握る。

 顔を埋めて深呼吸を繰り返すシルを、引き剥がそうと奮闘するも、その吸引力は何処からくるのかビクともしない。



 ──そのとき、



「蒼流、起きてるかし──ら?」


 茶色のポニーテールを揺らし、リリエルが入ってきた。


 目の前には、もぞもぞと動く布団が、大きなベットの上で弾んでいるわけで、

 ベットがギシギシと音をたてているわけで、


「し、しつ──失礼しましたぁああああああああ」



 それを〝ナニ〟と間違えるのは当然といえば当然なわけで······。












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