024 スケルトン討伐クエスト その2!
墓場を駆け抜けるソウリューズの面々。背後に目を向ければ無数のスケルトンの赤い目が、不気味に暗闇を滑る。
「くそう!あいつら耳ねえのに聞こえてやがる!」
リーダーの蒼流がやけくそ気味に喚く。
その間にも、脳内ではモーターの如く活性化された思考が次々に作戦を練り上げていく。
迫るスケルトンは恐らく二十を超えている。モンスターとして底辺に位置する悲しい魔物も、あれだけ集合すれば脅威というもの。数の暴力という言葉が良く似合う。
湯水さながらの速度で浮かび上がってくる作戦たちを解析、選別、合体、改善、改善、改善。
頭の回転に多少の自信を持つ蒼流の全力全開フルパワーが、最適解を導き出す。
「──作戦を考えた。先ず、キースを囮にするだろ?」
「異議アリ!」
犬が噛み付く勢いでの猛反発。
「だいじょぶだいじょぶ、スケルトンってめっちゃ弱いらしいじゃん?」
「──ああ、普通の大人なら武器さえ持てば勝てる。──まっ、オレが十人束になっても勝てんがナ」
「お前ホンット役に立たねえな!!」
舌を出しておどけてみせるキース。もしそれが小悪魔系の美少女だったのなら、それはそれは様になっただろうが、男であるキースがやるとただイラつくだけだ。
「そもそもなんでお前ついてきてんだよ!前回は脳内に直接語りかけてくるだけだったじゃん!ニュータ○プだったじゃん!」
「仲介の為ダヨ!大事だろ仲介役?」
かつてこれ程までに頼りない仲介役がいただろうか。いやいない。坂本龍馬もびっくりだ。
「──となると、今考えるべきはどうやってキースを囮にするかね」
「ついてこれない速度で走り去るというのはどうでしょう?」
「──足、折る?」
「ボクの魔法で下半身を凍らせてみようか?」
「なんで君たちは乗り気なんダ?」
話を仕切るリリエルに、ヤミリー、シル、サミが順に案を出していく。この頃には、キースを囮にすることは暗黙の了解と化し、如何にしてキースを囮にするかという次のステップに踏み出していた。
物騒極まりない会議は続く。規則的に並び立つ墓の間をすり抜け、横たわる見知らぬ誰かの墓標を飛び越え。しかし、そこは月明かりも届かぬ森の中。完全に足下を視認するなんて不可能で、ましてや言い争いの最中だ。注意も散漫になるというもの。
キースの体が前に傾いた。
「──エ?」
コケた。
お手本のように綺麗な転び。
どうやら地面から盛り上がった木の根っこに、足が引っかかったらしい。
点になった目でキースは顔を上げる。その視線の先には遠ざかっていく蒼流たち。振り返れば迫り来るスケルトンの大群。
「······いやぁあああああああああ!!!!!」
絶叫が谺響する。
すぐさま起き上がり走り出すキースの動きは、一切の無駄が無いと言える。しかし悲しきかな、起き上がったときには、既に蒼流たちは岩陰に身を潜めていた。
「ちくしょう、あいつらどこ行きやがっタ!いやぁああ、近い近い!!オレ食べても美味しくないカラ!肉無いカラ!ほら見ろこの細腕······それでも足緩めないとか、お前らの目は節穴カ!!······節穴だったワ」
喚き散らしながら墓場を駆け回るキースを余所に、大きな岩の後ろに隠れた蒼流たちは小声で話し合いだ。
「それで?この後はどうすんのよ」
「待て、今考える」
「考えてなかったの!?」
顎に手を当ててウンウンと唸る。
──ふと、疑問が浮かぶ。
この岩、何?
暗くて気にしていなかったが、明らかに異質だ。墓場に岩など置いてあるものだろうか?
蒼流はそっと岩に手を触れた。
──瞬間、
岩が眩い光を放つ。
「えぇ、なにこれ······」
諦めたように目を瞑る蒼流。
光は、収まることを知らずに墓場を照らし続ける。
短い悲鳴をあげて腕で目を隠す女性陣と、それを遠くから呆然と眺めるキース。
不思議とスケルトンたちも足を止め、呆然といった雰囲気だ。
やがて、神々しささえ覚えさせる岩が、脳天からヒビを伸ばした。
そのヒビは徐々に下へ下へと進んでいき、遂に一番下、地面に埋もれている部分にまで達した。
そして、一際強い輝きが放たれ、墓場全体を支配した後に収まる。
目を開けてみると、蒼流の目の前には、あの立派な岩が真っ二つに割れ、ゴツゴツとした断面図を晒していた。
その直上、先程の激しく刺すような光とは対照的な、暖かく包み込んでくれるような光が降りてきた。
「あはぁ、やっと逢えましたねぇ。我が主様ぁ♡」
背中から真っ白な二本の立派な羽根を生やした、息を呑むほど美しい女性が、ゆっくりと蒼流の目の前に着地し、滑らかな動作で跪いた。
岩から生まれたから、岩太郎ってか?ハハッ!!······はぁ。
リアル忙しくて暫く投稿ペース落ちます。御迷惑おかけします。