022 クエストのお・さ・そ・い サミ編
短くてすいません。
最近携帯の調子が悪くて遅くなってしまいました。
ホントすいません。
マジすいません。
オメガすいません。
「──あとは、サミだけか」
廊下を一人呆然と歩く蒼流は、虚空を見つめ、思考の中に沈む。
······なんでクエストに誘うだけなのにこんな疲れているんだろう。
ごもっともな疑問、だが蒼流は自答すべき言葉を知らない。
そもそも世界を救うってどうやんだよ。この前街を遅ったゴブリンの集団が、凶暴化したモンスターだって聞いたけど、俺はどうすればいいんだろう。
永遠にまとまらない散らかった疑問たちを、首を振ることで無理矢理脳内から追い出す。
クエストすら始まっていないのに、早くも気怠さが湧き上がってくる。
「はぁー。とっととサミ探すか」
「こんにちわそーりゅう。ボクに何か用かい?」
「なんで君たちはいとも容易く背後を取れるのかが知りたい」
最早、突如背中から人が現れる現象に慣れを感じ始めた蒼流と、その後ろにピタリと佇むサミ。
およそ女性とは思えない口調、幼女べからぬ雰囲気でサミは笑っている。
「ふふ、ひとえに愛のなせる技というものだよ。──それで?ボクに用があるんじゃないのかい?」
「ああ、そうだった。一緒にクエストでも行かないか?」
「──!」
デートのお誘い!?そーりゅうがボクに!?
「も、もちろん!!もちろんだよそーりゅう!」
サミがぴょんぴょんと可愛らしく跳ねる。その行動は、小さい女の子であるサミと非常にマッチングしていて愛らしい。
それを音と振動だけで感じた蒼流は、サミに背を向けたまま一人顔を青くする。
絶対勘違いしてるぅ。──しかし、今度の俺は失敗はしない!
「じゃあ、装備に着替えたら正門前に集合な」
そう、勘違いさせたまま騙し通す。
こんなにも幼い少女に嘘をつくのは胸が締め付けられるが、今の蒼流には、構っていられるほどの余裕などなかった。
ヤミリーとシルで精神をゴリゴリと削られた蒼流は、クエストに行くまでもなく瀕死状態なのだ。
「私服ではないのかい?」
「何かあったら困るだろ?」
「むぅ、そうか、心配してくれるのは素直に嬉しいけど、私服姿も見て欲しかったな······」
透き通るような純粋な声音が蒼流の心に刺さる。
声だけでこの罪悪感。果たして面と向かっていたらどうなっていたのだろうか。
「大丈夫、どんなサミも可愛いぞ」
罪悪感から逃れるためというのもあるが、これは紛れも無く蒼流の本音だ。
それを目で伝えるべく振り返って、大粒の瞳を見下ろす。
長い睫毛は素直に綺麗だった。
「······もう、またそういうこと言って······」
表情では平静を装っているが、内側の毛が白い、髪と同じ藍色の耳がピコピコと空を叩く。また、スラッと長い尻尾は、ハートを象っている。
······かわいい。
蒼流の手は無意識の内にサミの頭へと伸びていた。
その本能とも言える行動に逆わず、サミをゆっくり労わるように撫でる。
サミが「ふわっ」と小さく零すが、蒼流は気にしない。
暫く続けていると、サミは強ばっていた体の力を抜き、蒼流にもたれ掛かる。
······やっぱりかわいい。
すると間もなく、サミは顔を蕩けさせ、身体をビクンビクンとしきりに跳ねさせる。
これ以上やると、本当に腰が抜けてしまうことをシルで学習していたため、蒼流は撫でる手を止めた。
その手を名残惜しそうに、心の底から求めると言いたげな目つきで見つめられるが、蒼流は心を鬼にして手を離す。
ここで止めなければ話が一向に進まないのだ。
「──ほら、早く準備してこい」
「う、うん。分かったよ」
顔を引き締めることさえ忘れたまま、たどたどしく歩き去っていくサミを横目に、蒼流は正門へ向かうのだった。
マジカルすいません。