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017 スライム討伐クエスト その1!










「クエストに、行きたいかー」

「全然、行きたく、なーい」

「1ミリも行きたくないでーす」

「絶対行きたくないよー」

「死んでも行きたくないわー」

「誰が行くカばーか」

「という訳でクエストに行きたいと思います」


 パーティーメンバーを前に呼びかける蒼流。誰一人として賛同してくれないその惨状を、ゴリ押しで乗り切る。


 てか酷くない?


「俺はクエスト行ってねぇ、モテたいんですよ。急に現れて次々に難しい依頼をこなす期待の新星としてチヤホヤされたいんですよ」

「欲望丸出しじゃねーカ」


■■■


──ギルド──


 縦長のテーブルが規則的に並べられ、入口の正面に堂々と構える受付には、数人の女性職員が冒険者の対応をしている。

 受付の左隣にはクエスト板という木の壁が置かれており、依頼の書かれた紙がびっしりと貼られていた。


「──なんでもう既にギルドに登録されてんの俺・・・・・・」

「ああ、それなら全て私が登録しておきました」

「なにそれ怖いんだけど」

「ご安心ください。ちゃんと蒼流様に合った設定にしておきました」

「一ナノメートルも安心できねえ」


 一つの長机に陣取って向かい合う蒼流とヤミリー。そこにサミがとてとて可愛らしく走ってくる。その後ろから依頼書を持ったリリエルとシルがついて来る。


「クエスト取ってきたよ」

「えーと、なになに、──ん?」

「どうかしたのかい?」

「──いや。スライム討伐か。チュートリアルっぽくていいな!」


 このとき蒼流は、依頼書が()()()で書かれていることに、多少の違和感を感じつつも、流すことにした。








■■■











 見渡す限りの大平原、その広大な土地に、蝶や鳥が空を翔ける。


「ここにスライムが出んのか?」

『ああ、そこで間違いないね』


 突如頭の奥底に声が響く。その奇妙な感覚に、蒼流だけでなく他の四人も身体が跳ねた。


「こいつ、脳内に直接っ!?」

『いや、オレオレ、キースダヨ』

「・・・・・・あっ、あーあー、キースねキース。キース・カラメルソースね」

『誰!?僕の名前はキース・カルマリオン!今完全に忘れてたよネ!?』

「大丈夫大丈夫、俺お前のこと片時も忘れたことねーから」

『素直に気持ち悪イッ!!・・・・・・とにかく、オレはこうして時々サポートするから宜シク』

「はいはい。──ん?あれは・・・・・・」


 ふと目の端に映った緑色の影。それはドロドロとした粘液でその身を構成する、紛れもないスライムだった。


「いた!スライムだ!なんかもっと可愛いの期待してたけどドロドロのヤツ来た!!特訓の成果を見せてやるぜ!!」


 蒼流が、腰に下げた白い(さや)からエクスカリバーを引き抜くが早いか颯爽(さっそう)と走り出す。


「ソウリューズリーダー清水蒼流、参るぅううううああああああああ!!!!」

『このパーティーそんな名前だったノ!?だっせ!!』


 雄叫びを撒き散らしながらスライムへと辿り着いた蒼流、遠くから見たときは分からなかったが、スライムは蒼流を容易く飲み込んでしまえそうな大きさだ。ドロドロと体を流動させる半透明の緑色の塊が蒼流を見下す。しかし蒼流は、特訓の成果からか、はたまた相手がスライムだからか、全く怖気(おじけ)付いた様子はなく、姿勢を低くしてその巨体を睨みつける。


「────シッ」


 ──横一閃。肺から空気が細く吐き出される音と共に繰り出された斬撃は、光の軌跡を残し、スライムを上下二つに文字通り両断した。

 二つに割られたスライムは、上半分をべしゃり、と落とす。


「ふう、まっ、こんなもんよ」


 既に活動を停止した粘液体を見てドヤ顔を決める。────が、上半分のスライムと、下半分のスライムが、プルプルと震え出す。


「──あれれー?なんかスライムが動いてるように見えるぞー」

『スライムって核がないから切っても二体に増えるだけダヨ』

「それ早く言ってよぉおおおおおおお!!」


 蒼流がUターンして全力ダッシュする。スライムが飛ばしてくる特有の酸液が、自分の真後ろの地面を抉り、焼くような音と白い煙を発生させる。ダッシュ、ダッシュ、ダッシュ。命からがら、やっとの思いでパーティーメンバーが集まるところまで辿り着く。過呼吸になりながらも振り返ると、スライムは遠くに見える。どうやらいつの間にか振り切っていたようだ。


「ハァー、ハァー、あんな奴、ハァー、どうやって、倒せっつうんだ、ハァー」

「スライムは跡形もなく消し飛ばせばなにも問題ないよ」

「やだこの子脳筋」

「ふふ、そこで見といてよ」


 サミが一歩前に出る。そのまま両手を上に広げると、サミの頭上に何処からか現れた炎が、集まるようにして二つの玉を形成する。


「えい」


 明らかに場違いな掛け声で、腕が前に振り下ろされる。つられて飛び出した炎の玉が、それぞれ二匹のスライムに向かって弾丸の如く飛来する。

 着弾、かなり距離があるはずの蒼流の所まで熱風が届く。

 二つの小さなクレーターのみを残し、スライムは塵となって跡形もなく消し飛ばされてしまった。

 いとも簡単に有言実行して胸を張るサミを、蒼流は唖然と見つめることしかできなかった。












誤字脱字、アドバイス、感想等ありましたら気軽にコメントくれると嬉しいです。また、少しでも面白いと思って下されば、評価お願いします。

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