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001 強制転生ってお前······。

リメイク版を作りました。下のリンクをタッチすれば簡単に行けますのでそちらのほうを読んでいただけると幸いです。















 世界には、どうしようもなく理不尽なことが何億と転がっている。

 中でも凶悪で醜いのが、人権を無視した強制的な命令だ。相手の意見などなんのその。権力、暴力、財力、あらゆる〝力〟を武器に盾に、抵抗も許さず切り捨てられる。その災禍さいかが降りかかったとき、人は何を思うのだろうか。





 ──私はこう思います、ふぁーーwwwマジうぜぇ。






 ■■■







「突然ですが、あなたさんは死にました」






「──ん?」


 発せられたあまりに突拍子(とっぴょうし)もない言葉に、思わず声が漏れてしまった。


「そして、あなたさんにはこれから異世界転生してもれーます」


 そう語るのは燃えるような赤いツインテールと瞳に整った顔立ちと、それに良く似合う白いワンピースを着た小さめの少女だ。


「──ん?・・・・・・あれ、ん?俺がおかしいのかな?」


 そして、こっちはボサッとした茶髪に真っ黒な目、ところどころ焼け落ちた半袖と黒いジーンズというみすぼらしい服装に身を包む、いかにも平凡そうな男、名を清水蒼流(しみずそうりゅう)という。


 今この2人は上か下かもわからなくなるようなどこまでも続いている真っ白な空間に、椅子だけが向かい合って置かれた部屋で座っていた。


 蒼流は、何を言っているのか分からないといった表情で、目をぱちくりさせる。

 その混乱ぶりといったら、あまりの状況に自分がおかしいのかと疑い始めるほどである。


「じゃ、転生開始しますよ〜」

「ちょ、待て待て待て」


 蒼流がそう言うと女性は心底面倒臭そうに問いてきた。


「・・・・・・チッ。なんですか?まだ状況わかんねーんですか?」

「わかるわけないよね!?」


 蒼流は頭を抱えて状況把握に脳をフル回転させる。


 ──異世界転生?っていうとあれか?異世界行けちゃったりするのか!?


 その時、ふと思いたった疑問に、思考を中断して顔を上げる。


「先ずお前誰だよ」

「私はアイネ。神です。・・・・・・なんすかその顔、さては信じてませんね」

「わー、しゅごいねー。アイネちゃんは神様なのかー」


 微笑ましいものを見るように緩んだ目を向ける蒼流。その視線を不服そうに受け取るアイネと名乗る少女に、蒼流は息を吐いて気持ちをリセット。再度質問を投げかける。


「おい自称神様、俺は死んだんだよな?」

「はい」

「転生して異世界に行くんだよな?」

「はい」

「転生しなかったらどうなるんだ?」

「輪廻の歯車に戻って、元いた世界に生まれ変わります」


 ······なるほど。転生しなかったら今までいた世界に新たな生命として産まれるのか。


 蒼流は顎に手を当て考えるポーズをとる。──数秒後、答えが決まったのか、笑って大きく頷いた。


「まあ、折角だし」

「じゃあ!」


 椅子から身を乗り出して食い気味に答えを()かすアイネ。その花が咲いたような笑顔は、見た目通りの少女っぽさが感じられた。



 そう、答えは勿論、







「お断りします」






「では行きま············え?」



 一人納得した様子で腕を組む蒼流と、対照的に唖然と口を開いた状態で静止するアイネ。

 我に返ったアイネが更に身を乗り出す。最早半分立っているようなものだ。


「──えええ!?なんで!?今の完全に承諾する流れだったでしょ!!なんでそこで断るの!?」


 あまりの焦りに、口調すらも忘れて問い詰める。


「知らない人についていっちゃいけないってお母さんが言ってた」

「従順か!?十六にもなってどんだけ素直なんですかおめーさん!」

「何故俺の年齢を────まさか、ストーカー!?」

「ちがーーーう!!」


 肩で荒い呼吸を繰り返すアイネ。


 何興奮してんだこいつは。


 蒼流は呆れたように頭を掻く。


「いやてかさ、異世界って魔物とかいるんだろ?」

「そりゃまあ」

「チート能力とかって貰えたり······」

「ちーと?なんすかそれ」

「馬鹿じゃねえの?」


 思った通りだ。絶対すぐ死ぬ。断固として行かねえ。


「クソッ!こうなったら!!──ポチッとな」


 腰から取り出したスイッチを、アイネは無造作に押した。

 というか女の子がクソとか言わない!



 ──瞬間、蒼流の足元に大穴が口を開けた。


「────え?って、いやぁぁああああああああ!!」


 突如として踏むべき地面が無くなった蒼流は、抵抗すら出来ずに落ちていく。

 底の見えない果てしなく続く奈落。

 遠く小さくなっていく穴の入口に手を伸ばす。

 しかし、その手は虚しく空を切り、落ちる速度は加速するばかり。

 自由落下は、思ったより自由では無いのだ。


 胸の中の臓器が飛び出すような不快感を感じながら落ちてゆく蒼流。


 ──待って、出てきちゃう、胃袋出てきちゃう。


 大粒の涙が

を宙に零す蒼流を、アイネは穴の入口から顔を顔を出して覗く。


「迎えは呼んでありますんでー、それじゃ、いってらっしゃーい」

「てめぇえええええええええ!!!!」




 蒼流が、穴の闇に溶けて消えた。







■■■







 “転生”、それは一種のお約束であり、アニメやゲームなどの創作物登場するとおり、男の憧れである。

 そして、例に漏れず清水蒼流もその一人なのだが、


 そんな蒼流が、この状況に不安しか感じられないのは、あのふざけた女のせいだろうか。


 ろくに説明もされずに、目を開けたらそこはもう真っ白な空間ではなく、洋風なレンガ造りの一軒家が立ち並び、活気ある人々が流れるように行き()っている。

 そして、目の前には見上げる程大きく、立派な城がそびえ立っていた。


──んなアホな。


 夢か(うつつ)か、蒼流の前にはまさしくおとぎ話にでてきそうなベタな異世界が広がっていた。


 確かに心は踊るような展開だが、何も聞かされてない蒼流には不安しかない状況だった。果たしてこの胸の高鳴りは期待と不安、どちらなのだろうか。



 ──そんな時だった、

 城の方面から一直線に向かってくる少女が目に止まった。

 ──否、目を奪われたと言った方が正しいだろう。

 真っ白い髪を伸ばし、とても細く可憐、だが確かな雄々しさをもつ剣を(たず)えた、どこか儚さを覚える少女が歩いてくる。

 しかし、身に纏うのは、水色の(つや)のあるニーソックスに、背中部分が裂けた白いスクール水着にも似たピッチリとした、非常に目のやり場に困る服だ。


 その少女の美しさに、今さっきとは比べ物にならない程の胸の高鳴りを蒼流は感じた。

 事実、見た者全ての眼を奪う魅力を彼女は(ゆう)していた。


 その魅力に当てられ、活気ずいていた街もすっかり静まり、人々の視線が彼女に集まっていた。

 そして、彼女は蒼流の前で立ち止まり、ただ無表情に言葉を紡ぐ。


「・・・・・・貴方が、清水蒼流?・・・・・・世界を救う、勇者様・・・・・・?」


 鈴を思わせる静かで綺麗な声だ。

 そして、蒼流はその言葉を聞くと、笑顔で脳のオーバーヒートにより気絶する道を選んだ。


 薄れゆく意識の中、蒼流は誓った。





 あのクソ女神、いつかぶん殴る。








↓頭のおかしなリメイク版

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