1-6
「けっかはっぴょ~~~!!」
俺たちは先ほどまでいた南門の前、スタート地点に集合した。
「よ~し、それじゃあパ-ティー組むわよ!」
「はいよ」
パーティー申請が来たのでYesを押して承諾する。パーティーを組めばお互いのレベルがわかるのだ。
「ヨシノちゃんのレベルは~…………へ?」
「おお、俺の勝ちだな!」
現在のレベルはマヤが9で、俺が11だ。
「ええ~~~!!なんでなんで!?何を狩ったの!キリキリ吐きなさい!!」
「え、普通にロックラットとロックゴーレム狩ってただけだけど?」
「なっ!?ロックゴーレム出てきたの!?」
「ああ、確か二体が二組、三体が一組だ」
そう、最後の三体が出る前に二回ほどロックゴーレムに遭遇していたのだ。
「……ふぁ!?な、七体も出たの!?」
「ん?ああ、そんなもんじゃないのか?」
「んなわけないでしょ!!滅多に出ないからレアモンスターなのよ!!」
どうやら俺のレアモンスターのエンカウント率は異常らしい。
「ま、とにかく俺の勝ちだな!」
「むぅぅ~~~~~……」
狐耳としっぽをしょぼ~んと垂れさせながらほっぺを膨らまし、涙目になって俯いていた。……なんだこの可愛い生き物は!思わず抱きしめてナデナデしまった!仕方ないよね!
「……かわいい」
「なっ!?」
「よしよし」
「…… ―――――!!!///」
あ、やばい。悔しさと恥ずかしさで顔を真っ赤にさせ、ぷるぷる震えてる。
「バカ~~~~~!!!」
「お、落ち着いて姉さん!」
「バカッ!!芳人ちゃんのバカッ!!バカ!バカ!バカ~~~ッ!!」
「ぐへっ、ちょっ、杖で殴るのやめ!ま、待って!俺が悪かったからやめてくれ!」
死ぬっ!まじで死ぬっ!
「バカバカバカバカバカ~~~!!!」
「ちょ!まじで死ぬから!死に戻るって!!あ……」
―――― ヨシノハメノマエガマックラニナッタ!
「てへぺろっ」
「「てへぺろっ」じゃねぇぇよ!貴重なデスペナ無効カード消費しちまったじゃねぇか!!」
「そんなのまた買えばいいのよ!」
デスペナルティ無効カードは現実時間で月に三回まで購入できる課金アイテムで、デスペナルティである死んだときのアイテム1個、所持金半分の損失と、一定時間のステータス半減効果を無効に出来る。PK対策になるため購入制限がついていて値段も一枚5000円とバカにならない。ちなみに今回消費したのは初回ログインボーナスの得点だ。
「あんな高いやつほいほい買ってたまるか!」
「え、もう買っちゃったわよ?」
「……」
こ、こいつ……!
「はぁ……とにかく、今後はこんなことするなよ?パーティー組んでたからFF扱いになったからよかったものの……」
「わかってるわよ!」
ホントにわかってるんだろうか?パーティー組んでなかったらPK扱いされて今頃オレンジネームの仲間入りだっただろう。
パーティーメンバーでない一般プレイヤーやNPCを殺してしまうと現実時間で一週間オレンジネームになってしまう。また、その一週間の内にもう一人殺してしまうと一ヶ月間レッドネームとなり町に入れなくなる。このレッドネームは一人殺すごとに期間を一週間延長されてしまい、さらにレッドネームの状態で倒されてしまうと三日間ログインできなくなる。
それでもPKがいるのは、モンスターを相手にするより圧倒的に経験値がいいこと、そしてあわよくばアイテム1個と所持金の半分がもらえることだろう。ただし、同じ人物を一ヶ月間PK出来ず、14才以下はPK出来ないという縛りもあるが……。
「ほらもうすぐ約束の時間だし、みんなのところに行きましょ!もうみんな集まってるみたいよ」
「へいへい……」
ああ、心配だ。すごく心配だ。本当の意味で"狂戦士"にならないことを祈ろう。
「遅いですよ二人とも」
「ごめんごめん、時間があったから早めにログインしてちょっと勝負してたんだよ」
「へ~……あれ?」
サーヤは俺と姉を交互に見た。……?なんだ??
「意外ですね、ヨシノちゃんが勝ったんですか」
「へ?なんでわかったんだ?」
不思議に思っていると、サーヤは俺の隣を指をさした。たどってみると、姉が先ほど見せた悔しそうな顔をしていた。……なるほどわかりやすい。そもそも勝ち気な姉がこんな顔をするのは、小学生の時に料理で失敗した時以来だろう。
「だあぁぁぁ!そのことはもういいのよ!ほら、ダンジョン行くんでしょ。さっさと行くわよ!!」
「はいはい」
「楽しみなのです!」
「うむ」
「そうですね」
北のエリアⅡの奥の方に遺跡型の地下ダンジョンがあった、という情報をメノウが知り合いの情報屋から買ったようだ。なんでも、βテストではなかったところらしいのでほとんど見つけている人はいないだろうとのことだ。そのためかなり高値だったらしい。まあ、まだ初日だしな。メノウには感謝だ。
~ エリアⅡ(枯れ木の森・奥) ~
「ここじゃ」
歩くこと1時間ほど。そこには人工的な岩で形を整えられた作られた小さな入り口があり、地下に続く階段があった。
「この岩に絡みついているツタとか無駄にリアルですね……」
「このゲームはそういうところもかなり作り込まれておるからのぅ……」
「味覚もかなり再現されてるわよね。ああ、思い出したらあの屋台の串焼き食べたくなってきた……ジュルリ」
何それおいしそう。謎肉の串焼きとか、心躍るんだが!今度買おう。
「ちょっとだけステータスいじってもいいか?」
「あ、私も!」
「じゃあ、休憩にしましょうか」
「「了解なのです(なのじゃ)!」」
さて、了承も得たのでさっさとやってしまおう。
現在、俺のレベルは12で、SPは7残っている。あれ、<発見>が追加されてる……。前はなかったはずだ。取りあえず他に取りたいものもないので<発見>を取得し、残りの4ポイントは温存することにした。
「終わったぞ~」
「こっちも終わったわ!」
「それでは行きましょうか」
~ ダンジョン・魔導王の墓 (B1F) ~
「魔導王の墓ねぇ……」
「ああ。ちなみに出てくる敵は一階から5階までスケルトンメイジのみのようじゃ。6階からはレッサーデーモンが出るらしいぞ。発見したやつはそれだけ見て帰ったようじゃな」
「レッサーデーモンってどのくらい強いんだ?」
「う~ん……体力を三分の一にしたフォレストベアーかしら?」
「フォレストベアーの攻撃受けなかったからわからん」
「当たらなければどうと言うことはないのよ!」
「「あの~、私たちの存在意義は……?」」
「光魔法があるじゃない!ここにはうってつけのようだしちょうどいいんじゃない?」
確かに出てくるモンスターが闇属性がほとんどのようなので、光魔法は効果的だろう。
『『『カタカタカタッ』』』
「出たわねスケルトンメイジ!」
骨の杖を持った骨のモンスターがこちらを見てアゴをカタカタ言わせながら笑っていた。
今回俺と姉の出番はない。俺たちはレベルは十分上げたので他の三人だけで戦い、スキルレベルを上げるのだ。
「「ライトボール!」」
「アースボール!アースボール!」
三体それぞれに魔法が飛び、バラバラになって崩れ、塵になる。まだ一階ということもあって敵のレベルも低く簡単に倒せるようだ。
「このあたりは楽勝のようね。この調子でいきましょ!」
「「「おお~!」」」
難なく5階までたどり着いた俺たちは今、ボス部屋の扉の前にいる。
「ボスは確か、スケルトンウィザード3体だったっけ?」
「うむ」
「それなら楽勝ね!じゃあ左右は私とヨシノちゃんで、真ん中は残りの皆に任せたわ!」
「「「「了解!」」」」
姉が扉に触れると、ギギィと音を立ててゆっくりと開いた。部屋の中には聞いていたとおり、3体のスケルトンウィザードがいた。……ただし、骨は赤かった。鑑定すると、レッドスケルトンウィザードと出た。
「ま、またレアモンスターなのです!?」
「どうなっておるんじゃ……」
「「じ~……」」
俺のせいじゃない。道中で2回もレアモンスターに会ったのも俺のせいじゃない。だからこっちを見るな。
「まあいいわ、取りあえず予定通りに行きましょ」
その言葉に皆無言で頷き、俺は左の敵へ向かっていった。
『カロカロカロ!』
「ファイアーボール!」
敵がカロカロ言いながら詠唱していたので、ファイアーボールで邪魔をして詠唱を止めさせた。その隙に一気に接近し、<強打>を発動する。
「はぁぁ!!」
『カロカロ!』
ガキンッと音を立てて俺の杖と敵の骨杖が接触し、拮抗する。何秒かして押し込めないと判断すると、力を入れるのを止めてしゃがみ込む。そして敵が前のめりになり、体重のかかった片足に<強蹴>で蹴って敵を転がす。さらに頭を踏みつけ、起き上がれなくする。やっぱり人型のモンスターはやりやすくていいなぁ……。
『カロッ!?』
さてさてやって参りました、フルボッコのお時間です!!まずは詠唱出来ないようにあごを<強打>で壊します!次に足をのけようとする腕を、これまた<強打>で壊します!後がなくなった敵はブリッジして踏みつけから逃れようとしています!もうっ、そんなにおなかを殴ってほしいんですね、このドMさん!え?違うって?聞こえませんね!
よくわからないテンションでおなかをボコスカ殴っていたらいつの間にか塵になっていた。周りを見ているとどうやら皆すでに終わっていたらしくドン引きするような目でこちらを見ていた。
……どうやら遊びすぎたらしい。
戦闘?なにそれおいしいの?(´・ω・`)