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Ancient Alchemist Online  作者: はむだんご
二章
39/39

2-6




 初戦を勝利で飾ってから順調に勝ち続け、現在7連勝。8日目午後の部の対戦相手が決まった。


「……"風見鶏"か」

「勝率の近いギルド同士がマッチングするのでいつかは当たると思ってましたが」


 初戦を除けば、大規模ギルドとの対戦は一度も無かったのであまり苦戦しなかったが、そろそろそうも言っていられないようだ。


「の、のぅ……風見鶏のギルマスがこっちを見ている気がするのじゃが」

「……確かに見てますね、遠視スキルでも持っているんでしょうか?」


 ドレイクさんが中央のステージを挟んで向かい側からこちらを凝視しているらしい。……俺も遠視スキル欲しいな。


『大変長らくお待たせいたしましたぁぁぁ!!まもなく午後の部が開催されまぁぁぁす!!』


「始まるみたいね。……絶対勝つわよっ!」

「「「「応っ!」」」」






~ 特殊フィールド(雪原) ~


 ピコンッ


――――――――――――――――――


特殊フィールドに転送されました。


対抗戦ポイント : 10250 pt (10000 pt + 250 pt)が支給されました。


支給品が配布されました。本拠点司令室にて受け取り可能です。


メニュー機能の一部が制限されます。


――――――――――――――――――



 ピコンッ


――――――――――――――――――


傭兵の雇用が可能になりました。


        残り時間 : 3時間14分59秒


――――――――――――――――――



 ピコンッ


――――――――――――――――――


ギルド"春風"の紹介を許可しますか? Yes/No

※無回答の場合、承諾したと見なします


        回答時間残り : 4分59秒


――――――――――――――――――



「雪原かぁ……」

「寒そうじゃのぅ」


 待機時間となり、いつものようにメインモニター前の観客席から特殊フィールドの自陣本拠点司令室に転送された。窓の外を見てみると一面真っ白になっていて、パラパラと雪が降っていた。高低差はそこそこあるが、枯れ木がぽつぽつとある程度の単純なフィールドだ。


「ちょっと視界が悪そうだけど……サーヤいけるか?」

「上にのぼれば問題ないと思います」


 頼もしい限りだ。


「さて、作戦でも立てましょうか」

「なのです!……といってもいつも通りなのです」


 いつも通りというのは、俺と姉さんが足を活かして偵察して敵の動きを伝えてそれから作戦を考えるというものだ。初戦では最初から相手がこう動いてくると断定して立てた作戦だったが、その動きをしてこなかった場合の取り返しがつきにくいということがあった。そこで、「このイベントで大事なのは情報だ!」と熱く語っていたプレイヤーがいたのでそれを真似してみたというわけだ。


「傭兵はどうする?」

「一般兵を中心にするのです」


 開けた土地では個々の質よりも数が大事になってくるだろう。ただし、農民兵だとたいしたダメージを与えることが出来ないため、基本的に一般兵を雇うのが良いだろう。一般兵が俺たちの作った武器を装備すれば2人で上級ジョブ30レベルのプレイヤーと十分に戦える。


「具体的にはどれくらいにするの?」

「一般兵50人に対して上級指揮官1人と予備の一般指揮官2人を基本にして雇うのです」

「一隊580 ptだな」

「なら……十隊用意するのです」


 5800 pt使用して残りは4450 ptだ。


「さらに上級兵15人と上級指揮官1人を五隊、そのうち二隊は弓兵にして馬を与えるのです」

「馬が50 ptだから……」


 500 ptを三つ、1250 ptが二つで4000 ptなので残りは450 pt。


「で、上級兵5人にフラッグの守りを固めてもらって、一般兵30人は拠点周りの防衛なのです」


 これでちょうど使い切った。


「あとは準備をするだけね。はい、無線機」

「あ、ポーションも配っておくのです」


 無線機はどのギルドも40個しか支給されないので、指揮権持ち全員に配るとぴったりになる。ポーション類は一人3セットまでだ。


「……あっ!装備も配らないと!」

「そ、そういえばっ!早くしないと時間なくなりますよ!」


 ……8回目なんだからいい加減慣れてほしいものだ。






 試合開始の笛がフィールド全体に鳴り響く。


「じゃ、行ってくるからいつも通り適当に進軍させといてくれ!」

「お願いね~」

「了解なのです!」


 開始の合図とともに拠点を飛び出す。前へ進むたびに、雪がローブの中に入ってきて冷たさを感じる。


「思ってたより視界は悪くないみたいだな」

『そうみたいね』


 雪はさほど降っておらず、視界の邪魔になるほどではなかった。


 このまままっすぐに進んで8分ほど。フィールド中央から2km敵陣側、敵本拠点から3kmの地点にたどり着いた。ここから敵の本拠点が見えるのだが……


『……おかしいわね』

「完全に拠点防衛に徹しているな」


 そう、敵は本拠点から全く動いてなかった。――ただ一人を除いて。


『「……マジ?」』


 悠然と、堂々とした雰囲気でゆっくりとこちらに歩み寄ってくる人影が一人。


 それはギルド"風見鶏"のギルドマスター、ドレイクだった。





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