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Ancient Alchemist Online  作者: はむだんご
二章
34/39

2-1




「……今、なんと?」


 それは公式イベントの熱が完全に冷めた王都で、いつものように売り子を押しつけられたある日のこと。いつものように客をさばき、いつものように常連さんと会話したり、そしていつものように商品を完売させて店を閉めようとしたときだった。


 一人の、いかにも俺勇者だぜ、みたいな派手な格好をした男がやってきて……


「だから、うちのギルドに加入しろっつってんだよ!」


 と、言ってきた。


「え、嫌ですけど」

「あ゛ぁっ!?」


 初の公式イベントが終わってから少しずつギルドの数が増してきて、現在大中小合わせて500以上ものギルドが設立されている。そこからギルドの数が増えすぎたこともあって、有用なプレイヤーの勧誘合戦みたいなものが始まったのだ。


 とはいえ、無理に勧誘してくるような人は少ない。ヨシノの機嫌を損ねて関係を絶ちたくない、ということだ。冷静に判断できる人は、このゲームにおいて有用な生産者との関係を悪化させるのは悪手であると分かるはずだ。だがもちろん冷静に判断できない、あるいはただのバカな奴らは一定数いるわけで……


「入れっつってんのが分かんねぇのか!?」

「いや、嫌って言ってるのが分からないんですか?私、他のギルド入ってますし」


 そうそう、俺達のパーティー"春風"もギルドを設立したのだ。とは言っても、上限30人の小規模ギルドだが。まあ今のところ他に入れるメンバーがいるわけでもないので、間に合っている。


 設立した理由だが、ギルドに加入していると様々な恩恵がある。例えばギルドに加入していなければ発生しないイベントがあったり、ギルド単位での公式イベントがあったりするのでそれに参加できたりだ。


「……おい、そのおまえのギルドメンバー呼んでこい」

「……は?」

「決闘だ!俺がそいつに勝ったら、おまえは俺のギルドに加入しろ!」

「え、嫌ですけど」

「あ゛あ゛ぁっ!?」


 め、面倒くせぇ……。


 確かにこのゲームには決闘というシステムがあり、双方同意の下に戦うことが出来る。PK(プレイヤーキラー)にならないので、荒事になったときに使われることが多いが、あくまで双方の同意が必要なので、こちらにメリットがないのであれば受けなければいい話である。


「ふざけんなっ!!呼べっつってんだろっ!?」

「……話になりませんね」


 ちらちらと野次馬も集まってきたし、逃げるかな。


 赤い帽子のおじさんもびっくりな壁キックを披露し、建物の屋根へと上る。下から何かの怒声が聞こえてくるが気にせず拠点に帰った。






「ということがあったんだよ」

「ぶっ潰しましょう、そいつ」

「なのです!」

「お、落ち着くのじゃ二人とも!」


 拠点に戻って先ほどあった話を皆にしたら、サーヤとリーゼが暴走しそうになっていた。


「まあしつこいようならGMコールすれば良いのよ。ところで、皆はもうメール見た?」

「ん?何かあるのか?」


 メニュー画面を開き、メールボックスを確認する。


「え、また公式イベントがあるのか」


 メールにはこう書かれていた。



――――――――――――――――――


公式イベント : ギルド対抗戦


ギルドの設立を500以上確認したため、ギルド対抗戦を開催します。ルールは下記の通りです。


①一ギルド対一ギルドの対戦(全10試合)となります

②先に敵ギルドのフラッグを自陣に持ち帰るか、制限時間までに敵陣の数より自陣の数が多ければ勝ちです

③試合は特殊フィールド(10km四方)で行われ、どのフィールドが選ばれるかはランダムです

④対抗戦ポイントでNPC傭兵を雇うことが出来ます。対抗戦ポイントは各試合の待機時間前に支給され、ポイントの量はギルドの規模によって決まります。対抗戦ポイントは各試合終了後に失効します

⑤武具以外の消費アイテムは支給品以外使用することは出来ません。また、試合中はフレンドコール機能、メール機能、および掲示板へのアクセスが制限されます

⑥待機時間はゲーム内時間で15分、制限時間はゲーム内時間で5時間です


注1 : 参加するギルドはこのメールから登録をしてください

注2 : 勝利数に応じてランキング化(匿名可)され、順位に応じた報酬が貰えます

注3 : 本イベントへの参加条件は、ギルドに参加していることです


――――――――――――――――――



「これはまた急だな。まだ前のイベントから二週間も経ってないぞ」

「予想以上にギルドが設立されたからじゃろうな」

「しかも明日からね」

「えっ!?明日!?」


 ほ、ホントだ。明日って書いてある……。


「といっても、今回は特別準備するものもないから問題ないわ」

「……まあそうだな」


 ルールを見る限り、用意するものは装備くらいだ。


「それにしても、傭兵の質によりますが、かなり大規模ギルドが有利なルールになってますね」

「何を言ってるのよ、それをまくるのが楽しいんじゃない!」

「そうじゃぞサーヤよ」

「は、はぁ……」


 サーヤには二人のやる気があまり伝わっていないらしい。


「そういえば、傭兵の装備はこちらで用意しても良いのです?」

「「「「……あ」」」」


 詳細なルールを見る限り傭兵の装備を用意したらダメとは書いていなかった。


「姉さん、サーヤ、リーゼ」

「「「……う、嘘よね(ですよね)(なのです)?」」」


 ニッコリ笑顔で――


「ファ・イ・ト♡」

「「「うわあぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」」」


 三人は徹夜で装備の生産に追われるのだった。






 ――翌朝


「「「……」」」


 三人の目からハイライトが抜け落ちていた。




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