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「はぁ、はぁ……ちょっと、休憩……しませんか?」
「サーヤちゃん軟弱なのです」
「うるさいです……」
翌朝、再び石版を使用し、現れた階段を進んでいた。――約二時間ほど。
「休憩するのは賛成じゃ……しかし、さすがにこの階段長すぎじゃのぅ」
「まだまだ終わりが見えないわね」
ログインしてからずっと階段を上り続け、階段の下もすでに真っ白な雲に覆われて地面が見えない状態だが、未だに階段の終わりを見ることが出来ないでいた。そして、ただただ階段を上るという単純作業なだけに、身体的は疲れていなくても精神的にはどうしようもなく、サーヤほどではないが皆顔に出ているようだった。
「うぅ~、ヨシノちゃ~ん。シチューを、シチューを私に恵んでください~……」
「またか、はぁ……仕方ねぇな、ほら」
「ありがとうもぐもぐ、ございもぐもぐ、ますもぐもぐ」
「食いながら喋るなよ……」
「……汚いのです」
つい30分前にも聞いた台詞に若干呆れながらも、ご要望の品を渡す。
「おふぁあり」
「それで最後だよ!ったく、作っておいたシチュー全部食いやがって……」
「んぐんぐ、ゴクン。そんな!ヨシノちゃんのシチューがないと……。私はこれからどうしたら!」
「串肉で我慢しろ」
「わーい」
単純なやつだ……。
「や、やっと着いたぁ……」
結局あれから一時間弱ほどして、終点と思われる浮島の入り口、大きな門の前にたどり着いた。ちなみに休憩してからここまでに三回ほど肉をねだられました。
「それにしても、綺麗なところなのです!」
「そうじゃのぅ……」
巨大な門の中には、真っ白でとても美しい神殿があった。
「早速中に入りましょ!」
「じゃな」
姉を先頭に、神殿に向かって進んで行く。すると
『止まれ』
「「「「「っ!?」」」」」
どこからか、無機質な男性の声が聞こえてきた。
『……侵入者五名、資格者五名。通ってよし』
……どうやら通っていいらしい。資格っていうのは多分石版のことなんだろう。
『これより先に待ち受けるのは神の試練である。精々奮闘するがよい』
そう言うと、声は聞こえてこなくなった。
「……神の試練ですか」
「なんか向こうの二人はすごいやる気になってるな……」
向こうの方でやる気を出しているのは、姉とメノウ。神の試練の何かが琴線に触れたらしい。
「ふふ、ふふふふ」
「くくく……」
……なんか怖いんだが。大丈夫だろうか?
「マヤちゃん、メノウさん。気持ち悪い笑み浮かべてないで、準備して行きますよ」
「「き、気持ち悪いっ!?」」
~ ???(神殿) ~
神殿の中に入ると、壁が遠すぎて見えないくらいとても広い部屋に転移した。明確な出口がないので、今までのイベント同様、全滅するか敵を倒すかしないと出られないようだ。
『……来たか、挑戦者達よ』
また、神殿前で聞いた声が聞こえてきた。
『まずは肩慣らしと行こうか』
そう聞こえてきたと同時に、周囲から敵が現れた。
「……マジで?」
「こ、これはちょっと」
「まずいのです……」
『『『『――――ッ!!!』』』』
俺たちを取り囲むように現れた四体の敵は、なんと今まで倒してきた赤、青、黄、緑の塔のボス達だった。
『フハハハハッ!なぁに、少しばかりレベルが上がっているが、数々の試練を乗り越えてきた貴様らならば、この程度余裕であろう?フハハハハッ!』
「「「「「……」」」」」
急に楽しそうに笑う天の声に対し、俺たちの心の中では「何が少しだ!」という言葉を発していることだろう。というのもコイツら全員Lv.80あり、少しどころではない強化をされていたからだ。
安っぽい挑発だが、最近姉やメノウだけで無く、俺とサーヤとリーゼも割と戦闘狂っぽくなってきている俺たちパーティの返答は決まっていた。
「「「「「……上等じゃゴルァアアア!!!」」」」」
『バ、バカな……バカなバカなバァカなぁっ!』
「なんか、たいしたことなかったな……」
「レベルに惑わされましたね」
「まあ対処法が分かっておったからのぅ」
結局出てきた敵達の行動パターンがある程度分かっていたのがよかったのか、レベル差があまり気にならない程度には簡単な戦いだった。唯一懸念していた蜘蛛の眷属召喚だったが、さすがにそこまで鬼畜な設定ではなかったらしく、使用してくることはなかった。
『っく、ま、まあいい。いい肩慣らしになっただろう?見事第一の試練を突破した貴様らには次なる試練をもってもてなしてやるとしよう!フハハハハッ!』
『ど、どういうことだぁぁぁぁぁぁっ!?』
第二の試練も突破することができた。むしろ敵の数が一体だけだったので、第一の試練よりも簡単だった。
『そ、そんなバカな……このままではっ!』
なにやら天の声さんが唸っていらっしゃる。
『フ、フハハハハッ!良いだろう!第二の試練を突破した貴様らに免じ、最終試練は我が直々に相手をしてやろう!フハハハハッ!』
そう言って、俺たちの前に姿を現したのは純白の鎧に、神々しい光を放つ翼、3mはあろうかという大剣をもった聖騎士を連想させるような人物だった。
「フハハハハッ!貴様らはここで朽ち果てるのだ!我、神殿守護天使ガロア様の手によってなぁ!フハハハハッ!」
「なんかヤバそうな相手ね」
「うむ、気を引き締めた方が良いじゃろう」
天の声――ガロアが言うには、試練はこれで最後らしい。今までのようには行かないだろう。
「鑑定っ!」
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神殿守護天使ガロア様(自称) Lv.1
女神メルリスの側にいたいがため、本物の神殿守護天使の不在をいいことになりすましをしている一般階級の天使。ちなみにメル様ファンクラブの副会長。
HP : 10/10
MP : 10/10
STR : 1
VIT : 1
INT : 1
MND : 1
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「「「「「は?」」」」」
「フハハハハッ!どうした!?我の神々しさに恐れを――」
「えい」
――ぺちんっ
「ぎゃぁっ!?」
自称なんとかさんは姉のデコピンを食らって、灰になりましたとさ。めでたしめでたし。
……解せぬ。
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イベント : 神の(なんちゃって)試練 をクリアしました
称号 : 神の(なんちゃって)試練達成者 を獲得しました▼
期間限定ダンジョン 天界の神殿 を踏破した者達に与えられる称号。
一部NPCの好感度上昇(効果大)
アイテム : 天使の極意書(☆☆☆☆☆☆)を獲得しました▼
使用すると ジョブ : 天使 を解放する。
使用条件 : なし
貢献ポイントに踏破ボーナスポイントが付与されました。
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「「「「「……」」」」」
……どこから突っ込んだら良いんですかね?




