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Ancient Alchemist Online  作者: はむだんご
一章
26/39

1-26





――――――――――――――――――


イベント : ダンジョン・黄の塔の調査 をクリアしました


称号 : 黄の塔踏破者 を獲得しました▼

  期間限定ダンジョン 黄の塔 を踏破した者達に与えられる称号。


  一部NPCの好感度上昇


アイテム : ??? を獲得しました▼

  ???


貢献ポイントに踏破ボーナスポイントが付与されました。


――――――――――――――――――




「はぁぁぁ~……疲れたぁ」

「それにしても、あんな簡単な仕掛けに気づけないなんて……」

「だな。30分間の頑張りを返して欲しい……何体倒したんだよ」


 黄の塔のボス、マッドタランチュラを討伐を終えた俺たちは無駄に時間をかけてしまったせいで疲れ切っていた。


 今思えば、マッドスパイダーをどれだけ倒しても一向に減らなかったのは別に嫌がらせでも何でも無く、スイッチというギミックをプレイヤーに気づかせるためだったんじゃないだろうか。うん、そうとしか思えないな。


 俺はそのことを皆に話してみた。


「なるほどのぅ。確かにヨシノの言った通りじゃろうな」

「そうでなかったらただの嫌がらせですよ」

「そうなのです?私は楽しかったのです」

「「「「……」」」」


 あの床全体に蜘蛛が敷き詰められている、軽くホラーな状況を楽しめた……だと!?


「よ、よ~し!前みたいに隠し部屋みたいなのがあるかもしれないし、探してみようぜ!」


 リーゼの発言によって凍りついた場を吹き飛ばすようにそう言った。


「そ、そうですね。そうしましょう」

「そ、それは名案じゃな!」

「ちょっと、私に何か言いたいことがあるのなら聞くのです」

「「「「いえいえ!なにも」」」」


 俺たちの雰囲気に若干お冠のリーゼの発言をさらっと(?)躱しつつ、部屋の探索を開始する。


「しかし、ぱっと見なにかあるようには見えんが……」

「最初にあいつが出てきた穴もふさがってるわね」

「となると、以前のように穴の中に巣があるという線はなくなりましたね」

「壁とか怪しいのです!」


 壁ねぇ…………あっ


「なあ……この壁さ、上れるんじゃね?」

「……いやいやいや!ヨシノや、いくら何でもこんなに凹凸の少ない壁を――」

「――っよ、えいっ、っほ!」

「なっ!?」


 あ、姉さん早い。


「よし、俺たちも――」

「「「任せた(ました)!」」」


 ……さいですか






「うおっ!?高ぇ……」


 なんとなく気になり下をのぞいてみると、かなり高いところまで来ていることが分かった。


「うん、下は見ちゃダメ。……見ちゃダメだ」


 下を見ないことを固く誓い、先に行く姉を追いかける。


「ヨシノちゃ~ん!あっちに穴があるわ~!」


 先行している姉が少し危ない体勢で指を指す方向を見てみると、確かに人が一人屈んで入れるような小さな穴があった。


「了解~!すぐ向かう~!」


 そう返事をして数分後、無事に穴にたどり着くことが出来た。


「狭いわね……」

「仕方ないだろ。早く奥に行こうぜ」

「そうね。皆も呼ばないとだし」


 そういうわけなので、四つん這いになりながらせっせと奥へ進む。


 しばらく進むと、そこには大きな蜘蛛の巣のある部屋があった。そして、蜘蛛の巣の下には……


「「……卵」」


 え、これってあの蜘蛛の卵だよね?だとしたらいらないんですが……いつか孵化しそうで怖い……。


「……取りあえずみんなを呼びましょうか」

「……そうだな」


 そう言って、姉がコールの魔法でみんなを呼び出すと……


「「……」」


 サーヤとリーゼが、姉を見て微妙そうな顔をしていた。


「どうしたの、そんな変な顔して」

「「……チェンジで」」

「……良い度胸ねぇあなたたち。そんなにヨシノちゃんに呼ばれたかったのかしらぁ?」

「「すいません何でもありません(ないのです)お姉様!」」


 これって俺が呼ばないといけなかったパターン?……よし、知らんぷりしておこう。


「まあまあ落ち着くのじゃ。それよりもあれって……」

「……お察しの通りよ」

「じゃよなぁ」


 メノウとサーヤは、あの卵を見て微妙そうな顔をしていた。しかし、リーゼは違った。


「ほわぁ~……」


 め、目が輝いていらっしゃる……。


「あの、皆さんに相談があるのです」

「……い、一応聞いてあげるわ」

「私、付与師をやめてテイマーに――」

「「「「絶対ダメ(だ)(です)(じゃ)っ!!」」」」


 言うと思ったわ……。


「な、何でなのです!?」

「当たり前でしょ!パーティーの中に蜘蛛をいれるなんて。とにかくダメ!」

「わしも同意見じゃ」

「そ、そんなぁ~。ヨ、ヨシノちゃんは……」

「う~ん、それはちょっと……」

「ガーン」


 すまん、しばらく蜘蛛は見たくないんだ……。


「まあそれは置いといて、取りあえず持って帰りましょうか」

「だな」



 ピコンッ


――――――――――――――――――


アイテム : マッドタランチュラの卵(☆☆) を獲得しました▼

  食材には適さない。孵化すると大変危険なため、見つけ次第燃やし、駆除することを推奨されている。


――――――――――――――――――



「「「「……」」」」


 捨てていってもいいですかね?これ。






「ありがとうございました~」


 翌日、姉から「作ったやつ売ってきて」とのお達しをいただき、仕方なくまた売り子をすることになった。その間前回同様、他の皆は青の塔の攻略をしてくるらしい。一応ボスは倒すなよ、と念を押しておいたが……ヤバい心配になってきた。早く売り切ろう……。


「よぅ、ヨシノ!来たぜぇ」

「あ、ど、ドレイクさん……」


 うわぁぁぁぁ!会いたくない人来たぁぁぁぁ!いや、約束してたから来るのは分かってたけども!き、聞かれる……絶対この前のこと聞かれるぅぅぅぅ!なんて答えればいいんだぁぁぁぁ!


「ん?どうした、急にうなりだして」

「い、いえ何でもありましぇんっ!」


 あぁぁぁぁ噛んだぁぁぁぁ、はずかしいぃぃぃぃ!


「そ、そうか?それじゃあこの前――」

「この前っ!?」

「うおっ!?ど、どうしたんだ?なんか変だぞ?」

「はっ!?い、いえ、大丈夫なので続きをどうぞ……」


 い、いかん……テンパり過ぎだ。


「お、おう。この前約束したやつを買い取りに来たんだ」

「あ、あぁ~。そ、それならちゃんと取っておいてありますんで……」

「お、助かるぜ」


 約束通り、売らずにとっておいた商品をドレイクさんに渡す。


「いやぁ本当に助かったぜ!これで十三階の――」

「じゅうさんかいっ!?」

「うおぉっ!?……ほ、本当に大丈夫なのか?」

「はっ!?し、失礼……」


 か、完全に変な人状態じゃないかぁぁぁぁ!


「ま、まあいいか。とにかくありがとうな!お互い頑張ろうぜ!」

「は、はいっ!」


 そう言って満足そうに立ち去っていった。


 ……あれ?この前のこと聞かれなかったぞ?


「……どういうことだ?」


 ――クイッ


「気を遣ってわざと聞かなかったとか……?」


 ――クイッ、クイッ


「いやいや、そんなわけ……」


 ――クイッ、クイッ、クイッ


「でもそれじゃあ……ん?さっきから袖が――」

「……ばあ」

「……」

「……そこは、驚く、ところ」

「ごめん、さすがに慣れた」


 ……本当は驚きすぎて声も出なかっただけですはい。強がりましたすいません。


「……むぅ、つまら、ない」

「い、いやぁ。そう言われましても……」

「……さっきは、面白かった、のに」

「み、見てたのっ!?」

「……もち」


 ま、マジか。恥ずかしい……。


「……大丈夫、安心、すると、いい。……この前の、こと、誰にも、言ってない」

「……えっ、そうなの!?」


 な、なんだそうだったのか……。だからドレイクさんは何も聞かなかったのか。


「でも、何で……?」

「……そんなの、決まってる。ヨシノを脅すため」

「っへ?」

「げっへっへ、言いふらされたくなかったら私の言うことを聞いてもらおうか」

「き、汚い!めっちゃ汚い!!」


 お、俺脅されてる!?しかもなんか饒舌になってるし!?


「ふふふ、観念しろー」


 抑揚のない声でそう言いながら手をわきわきさせてこちらに迫ってくる。


「さあまずはその耳をモフ――」

「の~え~る~!あなた何してるの!」


 今まさに手がこちらに伸びてこようとした瞬間、ノエルのパーティーメンバーのリリアによって阻まれた。


「……リリア、今、いいところ」

「ヨシノを困らせちゃダメでしょ!ごめんね、なんかよく分からないけど困らせちゃったみたいで」

「あ、い、いえ」

「……命拾い、したな、ヨシノ」

「はいはい、訳分からないこと言ってないで行くわよ!」

「……あーれー」


 ノエルは、よく聞く捨て台詞を言ってリリアに引っ張られて去って行った。
































































 ……ちょっとだけモフられたかったかも




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