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「どうして全く売れてないのよ!!」
緑の塔の攻略を終えた翌日、イベント二日目となったがここである問題が浮上してきた。そう、俺たちの用意した生産品が全く売れていないのである。まあ、予想はしていたが……。
理由は二つ、まずの一つとして立地が最悪であるということだ。主要な出店場所はイベント初日にすべて押さえられ、俺たちは裏路地の「え、これってホントに露店?」と確実に言われるようなところに出店せざるを得なかった。しかも狭いせいか、商品のサンプルを置くことが出来ない仕様になっているらしい。店であるとわからなければ客がよってこないのは当たり前のことである。
二つ目の理由としては、店員がNPCだったということだ。NPCには接客は出来るが、呼び込みなんて高度な真似は出来ない。つまり、「これをください」と話しかけなければ対応をしてくれないのだ。商品の見本すらなく、ここが店だとわからないのに商品を買うことなんて出来ないだろう。
「ぐぬぬ……こんなハズではっ!」
「いや、無理だっただろどう考えても」
NPC置くだけでこんな場所に客が来るわけないだろ……。
「どうするんですか?他の出店場所は多分最終日まで空きませんよ?」
「そうねぇ……」
「……いっそのこと、自分たちで売るのはどうなのです?」
「ダメじゃダメじゃ!そんなことをしてしまえば奴らに尻尾を掴まれるのじゃ!」
まるでなにか犯罪を犯して証拠を出したくない犯人みたいな言い方はやめなさい?
「……それだわっ!!」
「え?……姉さん?」
それだわって、自分たちで売るってことか?
「早まるでないマヤよ!」
「まあまあ、まずは話を聞きなさい」
「……我は納得できるまで首を縦には振らんぞ」
「大丈夫よ、今度こそは自信があるわ!」
絶対大丈夫じゃない予感しかしないのは俺だけなのか……?
「いい?まず、自分たちで売るんじゃなくて、誰か一人に売り子を任せるの。まあ、ヨシノちゃんかサーヤちゃんのどっちかね。私たちはβテストの時に顔が割れてるから」
「ふむ……それで?」
「……それだけよ?」
「……聞いた我がバカじゃった」
それだけかよっ!?
「まあ待ちなさい、秘策はあるわ!」
「……一応聞いてやるのじゃ」
「売り子をしてもらう人にはローブを脱いでもらうわ!」
「……それで?」
「それだけよ!」
「それのどこが秘策じゃっ!根本的に解決しとらんわ!」
「大丈夫よ~、私たちは常にローブを着てるんだから一人くらい脱いでもばれないわよ!」
「確かにそうじゃが……」
「大体、インパクトがないと物なんて売れないわよ!かわいさというインパクトがっ!」
昨日までの作戦にインパクトのかけらもなかったくせによく言うわっ!
「それに、もしランキングに載っても、パーティ名もポイントの合計も隠せるから変に特定されることはないわ!」
「はぁ……確かにあれだけ頑張って作った商品が一つも売れないのは本意では無いのじゃが……」
「ヨシノちゃんなら大丈夫だと思いますよ」
「まあ、ヨシノならうまくやるじゃろう」
「そういうわけでヨシノちゃん、よろしく!」
「え、俺がやる流れなの!?つかサーヤ、なに俺に押しつけようとしてるんだよ!?」
「う、売り子とか無理、絶対無理ですっ!」
確かにサーヤはこういうの苦手そうだけど……。
「最初からサーヤちゃんには期待してないわよ」
「マヤちゃん、私だって泣きますよっ!?」
まあぶっちゃけ俺もあんまり期待してなかったり……。
「はぁ……俺が売り子をやるのはいいとして、その間皆はどうするんだ?」
「え?他の塔の攻略をするに決まってるじゃない」
「……俺を差し置いて?」
「……(ニッコリ)」
「……(ニッコリ)」
ワァ、イイエガオダナァ。
「じゃあ任せたわよヨシノちゃん!ほらみんな、行くわよ!」
「「「いえすまむ!」」」
「ちょっ、おい待て!ふざけんなぁぁぁぁ~~~っ!!!」
……マジかよ!?
「客どころか人すら通らないんですが……」
強制的にダンジョン攻略から外された俺は、狭い路地裏の店(?)で客を待っているわけだが、人の気配すらなかった。
「はぁ……どうしたもんかねぇ……」
――クイッ
「表通りまで行って宣伝した方が良いのかなぁ……」
――クイッ、クイッ
「でも面倒くさいしなぁ……」
――クイッ、クイッ、クイッ
「でも、宣伝しないと客が……って、さっきから袖が――」
「……おみせ?」
「どうわぁぁぁぁぁぁぁっ!?!?」
ひ、人!?隣に人がいた!?
「……おみせ、やってる?」
「あ、えっと、うん」
き、客か。びっくりしたぁ……心臓に悪い。あれ、この子どこかで見たことあるような……。
「……じゃあ、このリストに、あるやつ、全部、あるだけ」
「えっと……」
なになに……HPポーション、上級HPポーション、MPポーション、……。
うん、全部在庫にあったかな?
「一応全部取り扱ってるけ――」
「売って、全部」
食い気味だな!?そんなに切羽詰まってるのか……?
「……えっと、ホントに全部?」
「……ん、ギルマス、からの、お達し」
「ギルマス……あっ」
ああ、どこかで見たことあると思ったら、確か風見鶏のメンバーのひとりだったっけ?
まあそれは置いといて、全部売って欲しいという要望は正直うれしい。こんなところで油売ってないでダンジョン攻略したいし。だが、俺たちがこのイベントで売るために準備した生産品の数はかなり多い。このリストに載ってある物だけでも全部で十万個くらいある。つまり、それを全部購入するとなると金額がすごいことになるわけで……。
「……大丈夫、お金、ある」
「……」
まあ、言うだけ言ってみるか……。
「えっと、全部で8億Gになります」
「…………ぼったくり?」
ですよねぇ!
「ちゃんと適正価格だよ、量が多いだけ、ほら」
「……っ!?」
悪徳商売をするつもりはないので、ちゃんとトレード画面を見せてあげる。
「……すごい、量。しかも、品質も、トップクラス」
ふっふっふ、そうだろうそうだろう。まあもっと品質の良い物作れるけどね!さすがにみんな自重しました、はい。
「……ちょっと、待ってて」
「え、わかった」
どうしたんだろう?
「頼む!1000……いや、500でいい!絶対買うから、三日後まで残しといてくんねぇかっ!?」
「え、ええっと……」
なんかギルマス来たぁぁぁぁ!?
「ちょっとドレイク!そんな顔で迫ったらその子怖がるでしょ!」
「そんな顔っ!?」
「……怖い」
「然り然り」
いや、まあ確かに強面っぽい顔だけど……。
「……ああ、そこの美しいお嬢さん、この後僕と一緒にお茶でぼごぅっ!?」
「なにナンパしようとしてんのよこの変態王子!(ゲシゲシ)」
「……死ね(ゲシッゲシッ)」
「げほっ、ちょ、痛いっ!ノエル、それ本気だよね!?」
ああ、痛そうだなぁ……。
「ああ……すまん、あいつらのことは放っておいてくれて構わん」
「はあ……。えっとさっきの話ですが、イベント期間中に全部買ってくれるなら構いませんよ」
「本当か!?」
「ええ。でも一つだけ条件があります」
「……なんだ?」
「いえ、簡単ですよ。この店を宣伝して欲しいってだけです」
「なるほど、そういうことならお安いご用だ」
こうして、風見鶏と取引することになった。
ああ、早く全部売れてくれないかなぁ……。
「ありがとうございました~!」
まさか一日で売り切れるとは思わなかった。風見鶏の宣伝効果スゲェ……。まあ購入制限も付けなかったからたまに千個単位で買っていってくれたし、無理もないか。
「はぁ、疲れたぁ……」
今度頼まれても絶対やらん……。
「……はぁ……おや?」
「ああ、さっきの……」
仕事を終えて行く当てもなくブラブラといているところに、風見鶏のメンバー、ロミオとばったり会った。
「……お店の売れ行きはどうだい?」
「おかげさまで、キープしている物以外はすべて完売しましたよ」
「それはよかった。ところで、これからお茶でもどうだい?」
「あ~っと……今日は疲れてるので」
「そうかい?だったら別の日にでも……」
め、めんどくせぇぇぇぇぇ!嫌がってることも分からないのかこの頭お花畑野郎め!ああ、なんか慎二にしつこくナンパされる女の人の気持ちがよく分かったわ……。あ、そうだ
「そうですね……、今度面白い物でもくれたら、お茶に付き合ってあげてもいいですよ?」
「本当かい!?それなら必ずすごい物を用意するから、待ってておくれ!」
「はい、待ってますね」
そう言ってロミオはどこかへ去って行った。
――二ヤァ




