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Ancient Alchemist Online  作者: はむだんご
一章
13/39

1-13




「皆、準備はいいか?」

「こっちはOKですよ」

「ゼッタイブッコロゼッタイブッコロゼッタイブッコロ……(ブツブツ)」


 翌日の朝、俺達は東門方面のエリアII(フォレストベアーのいた森)の奥、アングリーベアーの住みかに来ていた。こいつを倒すと次の町に進めるようになるのだ。ちなみに東以外はエリアVII以上で囲まれていて、現時点での攻略は絶望的だ。


 一人だけ恐ろしいことを呟いているが、全員準備出来たようだ。うん、好きなだけ暴れさせよう。これ以上放っておいたら俺にとばっちりが来そうだ。


「よし、いくぞ~」

「「「おお~!」」」

「……(ブツブツ)」


 ああ、これはヤバい……アングリーベアーさん南無。






~ ???(森林) ~


『ギャオオォォォォォォ!!!』

「……うるせぇよ熊公、私は今機嫌が悪いんだ」

『ギャオッ!?』


 ……あれ、おかしいな。なんかアングリーベアーから「おこ?おこなの!?俺よりおこなの!!?」っていう幻聴が聞こえてきた。……疲れてるのかな?


「よし、あいつは姉さんに任せちゃって取り巻きを押さえるぞ!」

「「「了解!」」」


 取り巻きは一体で、フォレストベアーだ。おそらくアングリーベアーの番なのだろう。


――――――――――――――――――


フォレストベアー Lv.30


森に住む好戦的な大熊。怒りが頂点に達するとアングリーベアーとなり、攻撃力が増す。


  HP : 500/500

  MP : 10/10

  STR : 82

  VIT : 53

  INT : 21

  MND : 33


――――――――――――――――――


 エリアボスのフォレストベアーとは比べ物にならないくらい強くなっている。まあ――――


「俺達の敵じゃねぇけどな」

「じゃな」

「なのです!」

「ですね」






ピコンッ



――――――――――――――――――


解放イベント : 怒森熊の討伐 をクリアしました


ワールドアナウンスを実行しますか? Yes/No

※ No を選択した場合、初討伐報酬を受けとることが出来ません。また、本解放イベントの適正レベル低下も行われません。


――――――――――――――――――



「ふうぅ~、いいサンドバックだったわ!」

「……そりゃあよかったな」


 どうやらご満悦いただけたようで、さっきまでの殺伐とした感じはなくなり、いつもの姉に戻ったようだ。ちなみにアングリーベアーはなすすべなくフルボッコにされてました。まる。


「そうそう、ワールドアナウンスするけど、いいか?」

「ヨシノちゃんヨシノちゃん」


 姉が口をニコニコさせながらこちらを見ている。……い・や・な・よ・か・ん・が・す・る!


「ワールドアナウンスはしない方向でよろしく!」

「……一応聞くけど、なんでだ?」

「無名で、正体の分からないフードを被った謎のパーティーが運営イベントで一位取るの、カッコよくない!?」


……そんなことだと思った


「却下で」

「えぇ!?なんでよ!」

「それって今やっても対して変わらないだろ?しかもユニーク装備が貰えるんだから」

「……いや、それは止めておいた方がいいかもしれんのぅ」

「えっ!?」

「未だにリアルスキルをチート扱いしている連中がおるからのぅ。今の最大レベルが23の中、レベル30にならないと倒せないと言われていたアングリーベアーを倒したとなると……高レベルのリアルスキル持ちだと断定されるじゃろうな。その上でユニーク装備をかっさらっていったとなると、糾弾は免れん」

「な、なるほど」

「まぁ、ワールドアナウンスと違って運営イベントのランキングはパーティー名もアバター名も匿名に出きるからの、思う存分やれるのじゃ」


 ううむ……ここでアナウンスを流してしまうと、パーティー名とパーティーメンバーの名前がさらされてしまう。このゲームではプレイヤーを鑑定出来ないため、自分から言わない限りばれることは無いのだが、問題は姉だ。こいつはβでやらかしてしまっているようで、かなり有名らしい。


「まあそんな建前は置いといて、謎の最強パーティーやりたいのじゃ!」

「建前かよ!?」

「わ、私もやりたいのです!」

「リーゼまで!?」


 っく!こうなったら頼みの綱はサーヤしかいない……!


 サーヤが慈愛に満ちたような笑みを浮かべながらこちらを見ている。嗚呼、あなたが女神様でしたか!!


「諦めましょう?(ニッコリ)」

「はい♪(ニッコリ)」


ちっくしょぉぉぉぉい!!






~ 王都ルブルム ~


「「おお~……」」

「すごいでしょう!」

「いや、なんで姉さんが自慢気なんだよ……」


 王都は赤レンガで出来た家が建ち並ぶヨーロッパ風の街並みだが、どこか幻想的でとてもきれいな場所だった。


「よし、取り敢えず転移ポータルの更新しに行こうか」

「そうですね」


 転移ポータルの更新をしておけば別の町からでも、通行料さえ払えば一瞬でワープ出来てとても便利だ。


「そのあとはどうしますか?」

「はいはいは~い!魔法作りにいきましょう。今のままじゃ火力が足りないわ!」

「あ~、ここで魔法が作れるんでしたっけ?」

「ええ、スキルレベルが15になってランス系の魔法も覚えたけど、素の状態じゃ威力低いのよねぇ」

「うむ、ここ王都の敵はオリジナル魔法、アーツを作っていなければ厳しいのじゃ」

「なのです!」

「へ~、それならそうしましょう」






「いらっしゃいませ、マジック&アーツ制作場へようこそ!こちらではパーツの購入、魔法とアーツの制作が出来ますよ」

「おねぇさん、とてもステキですね。まるで女神様のようだ!是非、俺とこの後ランチでも」

「え、えぇと……」

「はいはい、ナンパしてないでしてないでさっさと魔法作るわよ!」


 転移ポータルの更新を終え、俺達はオリジナル魔法を作るために制作場に来ていた。


 ここは、王都でもかなり重要な場所らしく、とても大きかった。そしてその大きさに見合うくらいの(?)とてつもない美人エルフさんがとてつもなく美人さんだったので(語彙難)、つい勢いで告白してしまった。なので姉さん、耳引っ張るの止めてもらえます?


「の、のぅサーヤや、ヨシノってまさか……」

「いえ、メノウたちが心配していることとは全然違いますよ」

「そ、そうなのです?」

「ええ」


 だってヨシノちゃんは男ですから、なんて言われ、訳がわからず余計に混乱するメノウとリーゼだった。






 俺達はそれぞれ一時間3000Gの個室を3時間とることにした。


「よし、早速作っていくか」


 オリジナルの魔法、アーツを作る工程として重要なのは3つだ。


 1つ目は始点だ。どこを発動元にするかを決めなければならない。例えば杖の先だったり、5m先の上空からだったりだ。ただし、杖の先から離れれば離れるほど消費MPが上昇するので注意が必要だ。通常は半径10mが上限だが、解放パーツを使えばさらに遠くから放てるようになる。もちろん消費MPはお察しだが……。あと、始点さえ決めておけば、そこから時間差で別の魔法を撃つことも可能だ。通常は発動から3秒後までしか設定出来ないが、これも解放パーツが使える。


 2つ目は威力、大きさ、速度だ。威力を上げればダメージが大きくなるし、大きさを変えて大きくすれば敵に当たりやすくなり、速度を上げればより命中しやすくなる。これも上げれば上げるほど消費MPは上昇する。そして始点と違い、下げて消費MPを少なくすることも可能だ。俺は威力上限解放のパーツを使用しているので、他のプレイヤーより一段階高く威力を設定出来る。


 最後に詠唱だ。威力などと同じように、短くすれば消費MPが増え、長くすれば消費MPが減る。


 そして、今手元にあるのは全属性のボール系、ランス系のパーツと、エフェクトのみだ。心もとないがパーツ一つ最低50万Gするため、拠点を購入するまで無駄遣いしないように決めている。


「やっぱり欲しいのは範囲系だよなぁ……そういえば、前衛魔術師は半径5m以内の威力ボーナスがあるんだっけ?」


 今レベルが28なので、あと少しで転職出来る。その事も踏まえて作るべきだろう。


「まあ、ファイアーボールしかないな」


 今手持ちで範囲系はファイアーボールしかないので、これを使って作ることにする。


 始点は杖の先でいいかな。無駄なMPは使いたくないからな。あ、やっぱり地面にしよう。ファイアーボールの特性をいかすならこれがベストだろう。そして半径5m以内を全てカバー出来るように、大きさを変えて10個ほど同時発動させるよう設置する。離れた位置にも設置するため消費MPは高くなるが必要経費だ。あと、詠唱は一番長い1分にしておく。AP消費で詠唱破棄出来る魔法陣スキルがあるためだ。で、出来たのがこれ。


――――――――――――――――――


オリジナル : イグニッション

  威力 : 60

  効果範囲 : 円形(5m)

  消費MP : 45


――――――――――――――――――


 威力を最大に、大きさもそこそこにしたのでかなり消費量が上がっているが、詠唱を長くすることでなんとか実用範囲内におさめることが出来た。これで発動と同時に地面に当てて俺を中心に半径5mの爆発を起こす魔法の完成だ。あまり連発は出来ないが、集団戦ならかなり有用だろう。


 まだまだ時間も残っているし他にもいろいろ作っていこう。





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