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~ ダンジョン・魔導王の墓(B6F) ~
『ギャァァァ――ァ――……』
「う~ん、あっけないわねぇ」
「……いや、我らが強くなりすぎただけなのじゃ」
夕食を食べ終えログインした俺たちは、生産活動に一区切りついたため予定を変更して攻略途中だったダンジョンに来ていた。だが、ボーナスステージ(ユニークイベント)を終え、装備を調えた俺たちの敵ではなかった。ちなみに今倒したレッサーデーモンのステータスはこんな感じ。
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レッサーデーモン Lv.19
デーモンの下級種。闇魔法が得意。
HP : 100/100
MP : 50/50
STR : 39
VIT : 20
INT : 46
MND : 63
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見てわかるとおり、VITが20と低い。レベルが10辺りの時に姉との競争で狩っていたロックラットですらVIT25あるのだ。レベルが26の今、HPが100あろうとも俺と姉の杖(物理)の前には無力である。
「まあまあ、いろいろとランクの高い物が採取出来るんですから、いいじゃないですか」
「上薬草と上魔力草がいっぱいなのです!」
「たまに黒鉄石もでるしの」
「それもそうだけど~……ずっと鍛冶してたせいか、なんか消化不良なのよねぇ」
「それを明日のボス戦にぶつければいいんですよ」
「それはもちろんなんだけど、その前に一暴れしたいわ!」
「降りていけばいずれ強敵に出会えるじゃろう……このダンジョンが浅くなければじゃが」
「まあ、ダンジョンマスターに期待だな」
「そうね!そうと決まればさっさと降りるわよ!」
「姉さん、時間あるんだから出来るだけ採取するって決めただろ?」
「むぅぅ~……」
むくれられても困る。生産最前線が生産しないとかダメだろう。まあしばらくは絶対売らないけどね。
~ ダンジョン・魔導王の墓(B10F) ~
『ギャァァァァァァァ――…ァァ……――』
「弱すぎぃぃぃぃぃぃ!!!」
「だから我らが強くなりすぎただけじゃと」
「い、一応レアボスのはずなのです……」
「マヤちゃんがレアボス程度で止まるわけないです」
「はいはい、いいから採取するぞ~」
10階に来たはいいものの、ボスのアークデーモン(通常はデーモン)3体は、今まで同様紙防御だったため姉が速攻で終わらせてしまった。どうやらこのダンジョンは10階で終わりのようで、次の階層に続く階段かなかった。
5階と同様に部屋の至るところに採取ポイントがあるようなので、それらを採取することにした。
「とうっ!」
カァンッ!と、ピッケルと壁がぶつかる音が部屋中に響き渡る。
「あれ?」
おかしいな。ちゃんと採取ポイントをピッケルで掘ったのにアイテムがドロップしない。
―――――ピシッ
「へ?」
―――ピシピシピシッ!!
あ、これってあれか……?
ガラガラガラガラッ!!!
「きゃぁっ!」
「なんじゃぁ!?」
「び、びっくりしたのです……」
「おお!ヨシノちゃんナイス!」
……早速隠し通路を見つけてしまったようだ。あと姉さん、「裏ボス裏ボス……フヘヘ」とか言うの止めてくれそれフラグだから!
「と、取り敢えずなかにはいるのは後にして採取続けようか……」
~ ??? ~
「隠し通路を進んだ奥にあったものは超巨大な扉であった。まる。」
「誰に言っておるのじゃ」
説明通り、通路を進んだ先にはこれでもかというほど巨大で豪華な扉があった。どうやら本当にフラグが立っていたらしい。
「うっひょぉぉ~!これは裏ボス確定ね!さぁ皆行くわよ!!」
「まてまて」
「ぴぐぅっ!な、なにするのよ!」
一人突っ走りそうになった姉のローブを掴んで待ったをかける。
「腹が減っては戦は出来ぬ、だろ?」
「別にお腹は空かないわよ?」
「まじレスは受け付けておりません。バフかかるんだから食っとけ」
「モグモグモグ」
「はやっ!?」
手に持っていた5本の熊さん肉の串焼きはすでにサーヤの胃袋の中に入ってしまった。
「……おかわり」
「おかわり、じゃねぇよ!熊肉貴重なんだから大事に食え!」
「また取りに行けば大丈夫です(キリッ)」
「あのなぁ……」
残りの3人に熊肉の串焼きを渡して、サーヤには沢山あるロックラット肉の串焼きで我慢してもらう。
「モグモグ……おかわり」
「……明日から1日10本までな」
「そ、それは私に飢え死にしろと言っているのですか!?」
「このゲームはまだ飢えないだろ……」
「そんなのあんまりですぅ!」
元々サーヤは同年代の男子からしてもよく食べるなぁと思うくらいには食いしん坊だったが、ゲームの中だからなのか、最早見栄えなくいつでもなにかを口にしている気がする。
「そんなに食いたかったら肉持ってこい」
「わかりました!」
あ、あれ?この選択ははやまってしまったか……?
「よし、食べ終わったし今度こそ行くわよ!」
「お~!、なのです!」
―――ギギィィィ――ィ――――
軋むような音を立てて開いた扉の先には、壁にある蝋燭の灯りが照らし、床には豪華で真っ赤な絨毯が敷いてある、いわゆる謁見の間のような部屋だった。その部屋の奥、この部屋を見渡せる高さにある玉座には、大きな王冠を被った一体のアンデットがたたずんでいた。
「鑑て―――――」
『ギュアアアァァァァァ!!!』
その咆哮を聞いた瞬間、俺達は目の前が真っ暗になった。
~ オウカの町 ~
「っは!?」
「……死に戻ったようじゃのう」
「な、なによそれぇ~!!」
「姉さん、あいつ鑑定したか?」
「……してないけど」
「ほれ」
死ぬ前になんとか鑑定できたので、その結果を見せる。
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魔導王ザハーテ・カイザーム Lv.???
魔導王と謳われていた者のなれはて。何らかの執念に捕らわれ、現世に残っているようだが……
HP : ???/???
MP : ???/???
STR : ???
VIT : ???
INT : ???
MND : ???
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「大事なところが見えないじゃない!」
「そりゃ、それだけレベルが離れてるってことだろ」
「うーむ……今のレベルのままだと話にならんのぅ」
「咆哮だけでやられてますからねぇ」
「ぐぬぬ、ぜぇぇったいいつか倒してやるんだからぁぁぁぁ!!!」
回りの人に見られているからやめなさい。いや、いいか。姉のローブのお陰で口元以外見えてないし。服も見られる心配はない。
「おーい、目立ってるから宿に移動しようぜ」
「ほ、本日の成果確認タ~イム、なのです!」
「「「わぁ~!」」」
「……わー」
姉のテンションが酷いことになっているがそっとしておいた方がいいだろう。刺激したら……うん想像するのは止めておこう。
「という訳で代打のリーゼさん司会をお願いします!」
「こ、こういうのは苦手なのですぅ!というか、敬語はやめるのです!」
「じゃぁリーゼ、お・ね・が・い」
こてんっと首を傾け、甘えるような声で目を潤ませて上目遣い!これで落ちないやつはいない……!
「「……」」
「ぐはぁっ……はぁはぁ……」
うん、ですよね!だからそんな白い目で見ないでくださいまし!あとサーヤは鼻血拭け?
「よ、よし!まずは俺からな!」
この冷たい空気を何とかするため、最初に確認することにした。流れで誤魔化せばなんとかなるはず!
という訳で、本日の俺の成果はこんな感じ。
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・(角兎の角×99)×7
・角兎の角×28
・(角兎の尻尾×99)×5
・角兎の尻尾×75
・下級悪魔の爪×38
・下級悪魔の角×17
・下級悪魔の目×3
・悪魔の爪×6
・悪魔の角×5
・悪魔の目×1
・上級悪魔の爪×11
・上級悪魔の角×5
・上級悪魔の目×2
・宝箱(上級悪魔)×1
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ユニークイベントの宝箱はもう開けてしまったのでない。
「うわぁ……これは酷いですね」
「兎さんがかわいそうなのです……」
「いやいや、そこもすごいがのぅ……上級悪魔の目って……」
うん、兎のことは反省してます。もうしません。だって貢ぎ物くれるからね!
「宝箱開けるぞー」
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マジックパーツ : [エフェクト]桜吹雪 を獲得しました。
使用しますか? Yes/No
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「ん?被ったか?」
「またマジックパーツ当てよったのぅ」
「まぁエフェクトはマジックパーツのなかではハズレなのです」
「あれ、そうなのか?」
「ただカッコいいだけなのです」
「売れるっちゃあ売れるのじゃが……」
「これって使ったらどうなるんだ?」
「さぁの、エフェクトはパーツの中で熟練度レベルがないタイプじゃからのぅ。レベルのあるパーツであれば昇格するらしいのじゃ。そもそもパーツ2つ揃えるのに金かかるからのぅ。試すくらいなら他のパーツ揃えた方が効率いいから誰もやらんかったぞ、多分」
ふーむ……。まぁそんなこと言われてしまったら試すしかないよな!迷わずYesを押す。
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[エフェクト]桜吹雪 が昇格しました。
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「……昇格はしたみたいだな。詳しい効果はよくわからんが」
「おお、そりゃあいいことを聞いたのぅ」
「まあ、王都に行ったら調べてみるよ。よし、次サーヤな!」
そのまま特にめぼしい物もなく、全員確認し終わった。
あれ、いつの間にか俺が司会やっちゃってるじゃん!?




