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孤独、孤独の中の孤独  作者: きづく
1/1

人の生み出すもの

「こら、いつまで寝てるんだ、早く起きろ!」

この声に起こされる時は殆どが遅刻するかもしれない時間。

一息ため息をついて、いつもの様に周りを見渡し、娘達が寝ているかの確認をする。

「何してるの。早く着替えて行きなさい!」

嫁は更にまくし立てる。

とりあえず1歳と3歳の娘達は2人とも寝ている。

チラッと時計を見るともう7時半を回っていた。

(おうおう、やっぱりこんな時間かよ。) す

交感神経が刺激され、動悸が激しくなってくる。

俺はものすごい速さで着替えをし、出発の挨拶もそこそこにそのまま車に直行する。

(少し早く起きて、嫁と会話した方がいいか?)

そう思いながらも、急いで車を発進させる。

俺は今年30歳になるしがない精神科看護師だ。

看護師を選んだくせに、人を助けたいとか、社会の役に立ちたいとかは全く無い。

就職が簡単で困らなそうといった理由で選んだ。

実際、一件の面接を行っただけで就職は決まった。

看護師になる事を決めたのが高校生の時、我ながら先見の明があったとしか言いようがない。

(今日も適当に仕事して帰って子供の世話して寝よう。)

最近はこんなことしか基本的に考えていない。

結婚する前は帰りにパチンコいったり、アニメ見たりとなかなかに忙しい日々を送っていたものだ。

病院に着き、時間を気にしながら自分の配属先の病棟へ向かう。

急ぎ足で移動しながら、かなりの違和感を感じた。

(おかしい、いくら時間ギリギリと言っても患者が歩いていたりするんだが。)

病院に、入ってから全く人に会っていない。

更衣室、階段、廊下、進めば進むほど違和感は強くなっていく。

結局、病棟の扉前まで誰にも会うことなく来てしまった。

(まさか、中にも誰もいないなんてことは、、、ないよな?)

少し恐怖心を抱えながら病棟への扉を開く。

「おはようございます。」

そこには夜勤明けの先輩や、情報収集している同期などがいつもの様に仕事をしており、声を掛けてくる。

「いつもギリギリですね。」

とニヤニヤしながら、後輩がちかよってくる。

(誰にも会わなかったのはたまたまか。)

少し安堵しながら、いつもの様に仕事に取りかかろうとした瞬間。

「こら、いつまで寝てるんだ、早く起きろ!」

急に大声が聞こえてきて、ハッと目を醒ました。

(なんだ?なんだ?朝か?)

嫌にリアルな夢を見ていた気がするが内容はおぼろげだ。

起こされたということは、遅刻しかねない時間だ。

(あー、なんか夢見てた気がするけど何だったかな?)

ついさっきまで見ていたはずなのに、すぐに忘れてしまうのが夢らしい。

二人の娘達が寝ているのを確認し、挨拶もそこそこに家を出る。

車に飛び乗り、急いで発進させる。

しばらく車を走らせていると強烈な違和感が俺を襲う。

(絶対におかしい。車もいなけりゃ、人も歩いていない。)

今は通勤のピークの時間だ。他に人がいないわけが無い。

(どうなってるんだ?何かが起こっているのか?)

不安感を覚えながら車を走らせる。

(とりあえず、遅刻の心配は無さそうだな。)

人や、車がいない為いつもよりスイスイと進んでいき、あっという間に病院に着く。

幸い、病院には他の職員の車が止まっており、いつもと変わらない様子に胸をなで下ろす。

出る時は遅刻しそうだったが、今では時間の余裕がある。

あんまり早く着くと余計な仕事をやらさせることになりそうだ。ゆっくりとナース服に着替え、病棟まですれ違う人に挨拶を交わしながら病棟に向かう。

(うーん、こんなに道がすいてたのはラッキーだったな。いつもこのくらいだと助かるなぁ。他のみんなはどうだったんだろう。聞いてみるか。)

「おはようございます。」

扉を開け、挨拶をする。

「・・・」

返事はない。

(えっ?誰もいないわけないよな?)

見える範囲に誰もいないが、奥にいるのだろうか。

今までこんなことは一回もなかったはずだが?

さっきの誰もいない道路を思い出しゾッとする。

とりあえず奥に入って確認するしか道は無さそうだ。

おそるおそる歩を進め、ホール全体が見える位置までゆっくりと移動する。

自分の心臓の音と、足音しか聞こえない。

(頼む、頼むから誰か、、、)

願い虚しく、職員はおろか、普段かるいる患者の姿までも見あたらない。

(こ、こんなバカな、、、絶対におかしい。)

必死に今の状況を把握しようと頭を働かせるが、一切まとまった答えは出てこない。

(分からない。どうすればいいのかすら分からない。)

立ちすくみ一歩も歩けないで考えているど突然

「プルルルルル。プルルルル。」

ナース室の真ん中においてある電話が鳴り響いた。

「ひぇ。」

ちょっと声が出てしまったが誰もいないので聞かれていないだろう。

取るか取らないか、迷っている間も延々と鳴り続けている電話に嫌気がさしてきてきた。

(取らないと何も分からないか。)

意を決して素早く受話器を握りしめた。

「も、もしもし?」

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