冬が来る
冷たい雲が空を覆う
冷たい雨が土を濡らす
冬支度を始めて
ストーブを燃やす
ストーブの前は寒がりのあなたの指定席
黄色い座布団が
ぽっかりと置かれている
クローゼットにはあなたの紺色のコートが掛けられたまま
下駄箱にはあなたのブーツが置いてある
冬の制服は救急隊員の人に切り刻まれてもうないけれど
あなたのセーターもカーディガンもそこにある
あなたの手袋はリビングの引き出しの中
あなたの冬のパジャマも出してきた
みんな
みんな
変わりない
違うのは
あなたがいないこと
どんなに
あなたのなまえを呼んでも
白い箱に入った
あなたが答えることはない
暗い冬の雲の下
外をじっと見つめている
どこかにあなたの姿がないか
あなたがいないことは
間違いだったと
あなたが帰って来はしないか
じっとじっとみつめている
風の音がする
冬の風の音
あなたのいた春は遠くなってしまったのに
冬の景色の中
あなたを探して
外を見ている
聞こえてくるのは
風の音に似た
私の嗚咽