プロローグ
初めまして。青奇運命と書きましてブルーデスティニーと読みます。初投稿になりますがこれが勢いだけでかいたトンデモ作品なので完結できるかどうか…加えてつたない文章力なのでわけのわからない言い回しとかが多々あると思われます。
それでも、読んでいただけるのであれば、作者として光栄の限りです。
走る。走る。走る。
走らなければ死んでしまう。後ろから撃たれて骸になるからだ。
既にいっしょに付いてきた仲間はいない。皆油断して、捕まってまとめて蜂の巣にされて殺された。
何か感じるところはないかと言われればあるのだが…もとより友情も何もない連中だった。ただ、脱走する自分についてきただけの便乗野郎である。
だから気にしないことにした。今は逃げきるのが先決だ。
隅っこの物陰に駆け込み、束の間息を整える。今だ施設の中にいるがひとまずは追っ手の目を抜けられたようだった。
四肢を伸ばして寝転がりたい気分だったがそんな悠長なことをしているとすぐにでも見つかってしまうだろう。
荒い息をつく体を丸めてわずかな休憩時間を過ごす。次いで体の点検をすることにした。手は正常に動く。骨格に異常なし。ただ、連続で使用し続けた脚部筋肉及び、大腿部、股関節部に熱がこもっており、翌日には筋肉痛になると予測される。
かれこれ戦闘をしつつ、逃走をするというイレギュラーな事態に体が根をあげるのはもはや時間の問題だった。
その時、通路の奥から軍靴の音が聞こえた。一分にも満たない休憩時間に別れを告げ、急いで走り出す。
自分の脚力ならば十分に距離を引き離せるだろうがいかんせん、相手は殺傷能力の高い飛び道具を持っている。後ろを向いていれば一発二発は確実に被弾するだろう。
目指すは通路の先のエレベーター。中に入りさえすればあとは地上へとまっしぐらだ。
「いたぞ!」
「あそこだ!撃て!!」
背後から銃声が聞こえる。だがもうすでエレベーターの中に駆け込んだあとだった。
しかし、駆け込んだエレベーターの中には武装した兵士が四人ばかり入っていた。とっさに左右の兵士がアサルトライフルを向けてくるが、狭い室内での味方への誤射を考えたのだろう、トリガーを引くまでにわずかな時間があった。
その瞬間に左右の掌底でアサルトライフルを跳ね上げ、服の裾を掴んで正面で激突させる。直後、後方にいた二人の兵士が放った弾丸は一発も私には命中せずに、同僚を撃つこととなった。
驚きに唖然とする兵士二名に、死体を投げつけ、手刀でまずは一人の喉を打って気絶させる。
「ぐえあっ!?」
次いで、アサルトライフルを撃とうとした最後の一人に足払いを仕掛け、思いっきり背中を打ったところに握りこぶしで顔面を殴って無力化。
「はぁ…はぁ…」
なんとか全員怪我をすることもなく倒した。良くも悪くも施設内での訓練が生きていたということだろう。
地上までは数分かかる。グロテスクな空間だが、身を休められる場所があるだけでも十分だろう。
「……」
思えばなぜこの施設からの脱走を試みたのだろう。明確な理由は判明しない。いくら思考を重ねても常に同じ結果として不明、と返ってくる。
だが私はたしかにここから抜け出すことを強く願望していた。こうして元は自分たちの上の存在だったものを力でねじ伏せる程に。
強いて理由を言うなれば…施設を移る際に見た空からの景色だろう。窓に広がる緑の大地。青々と広大に存在する海。
こんなにも世界は広い。
だからなのだろう。気が付けば、護衛のものをひとり残らず気絶させて逃げ出していた。
私は自由を欲しているのだ。もっと知りたい。こんな施設で研究され、兵器として使われるよりも、世界を巡り、旅をして…世界を知りたい。
「…ん」
チーンという音がしてエレベーターが開く。素早く起き上がって、走り出す。幸いほかの兵士たちは皆動員されたらしく門を守るべき守衛すらいない。
後は適当に乗り物を奪って逃走するだけだ。願わくば、INTを回収して行きたかったが…おそらくそこは最も守りが堅いだろう。ホバートラック程度で我慢するしかない。空気を放出しているために熱源探査にも引っ掛かりにくいだろうし、移動速度も早い。移動手段としてはまあまあだ。
…ちょうどロビーに差し掛かった時。
不意に頭上より殺気を感じ、私はとっさに横に跳んだ。
ガスン、と重量感のあるコンクリートつきの鉄筋がさっきまで私のいた場所に突き刺さる。さらに、コンクリートつき鉄筋はぶん回され、再び私に襲いかかった。
今度は伏せて躱し、襲撃者に向かって反撃を試みる。
私の掌底が襲撃者の掲げたコンクリートつき鉄筋に命中し、コンクリートが粉みじんに砕けた。
残った鉄筋で腹を狙った攻撃を私は左腕で押さえ込み、右手で相手の拳を止める。
「…抵抗するな、IC03」
「その名前で私を呼ぶなっ!!」
もうひとつの理由はこれかも知れない。人間としての名前すら与えられず、ただ、神の模倣の兵器として扱われ、実験体番号で呼ばれる日々。それがどうしようもなく苦痛で耐え難かった。
「っ!」
至近距離で繰り出されたお互いの蹴りが同時に命中し、超人的な脚力によって二人共吹っ飛ばされる。
…が、相手も私も兵器としての力を備えた故に、壁に着地し、空中にて激突を繰り返す。
激しい、打撃、技の応酬が繰り広げられる。弾かれ、叩きつけられた地面はクモの巣状にひび割れ、体がぶつかり合うたびに空間は軋んで九名を漏らす。ガラスなどとっくのとうに砕け散ってしまっている。
すでに十数度目になる接近戦にて、ついに私の体の限界が来た。踏み出した足がかくん、と折れ曲がって膝をついてしまったのだ。
やはり先の逃走劇による負担が多かったらしい。同類と戦うには無理があったようだ。
殺す気で繰り出された襲撃者の蹴りを交差させた腕で受ける。
が、体重の軽い私は軽々と宙を舞い、オブジェクトの一つを真ん中からぶち抜いて壁に激突し止まる。
…そんな風に認識できたのはこの施設のシンボルであるオブジェクトがいつもと形が違っていたからである。
体は最早動くのすら困難なレベルに達していた。戦闘の継続は困難などころか生命の維持にまで影響が出てしまっている。
霞む視界の中、襲撃者はゆっくりと私に近づいていく。
奴は確実に止めを差しに来るだろう。
…だが、甘い。
「…?」
なぜか、不敵な笑みを浮かべる私に、襲撃者は怪訝な表情を浮かべる。それはそうだろう。なぜなら、背後のオブジェクトが倒れてきているのは私にしか見えないのだから。
「!!?」
派手な音を立ててオブジェクトが襲撃者を押しつぶし、ミンチへと加工する。幸い、長さは私のところにまでは届かなかった。
「…うっ…くっ…」
体の状態分析をするまでもなくわかる。これは重傷だ。体が吹っ飛ぶほどの蹴りを食らった結果として両腕の骨にはヒビが入り、さらにオブジェクトを破壊し、壁機激突したせいで内蔵の一部が傷ついている。間違っても動いて良いような状態ではなかった。
それでも、私は諦めきれなかった。
落ちていた鉄筋を杖がわりにして、ゆっくりと、老婆のように進んでいく。
目指すは屋外のホバートラック駐屯地。大体が軍用のため、エンジンを指導するのに必要なキーが必要ないので簡単に奪えるのだ。
「……はぁ…はぁ…」
短い時間なのだろうが、随分と長く感じる。きっと限界を超えて体を酷使し続けているからだろう。やっとの思いでたどり着いたホバートラックのドアを強引にあけ、ナメクジか何かのようにもそもそと運転席に座る。
ハンドル付近の赤のボタンを押し、エンジンを起動させると速やかに施設とは真逆の方向に向かって操舵する。
幸いなのはまだ兵士たちが地上に到達していないことだろう。いま銃撃戦にもちこまれたら確実に死ぬ。一切合切の抵抗もできずに死ぬ。そんなのは嫌だ。
懸命に全身の苦痛をこらえながらも道なき道をなぎ倒して進んでいく。
これから、自分がどうなるかなど、考えずに。
あえて知らない単語、用語があるのは今後のためです、すみません