シェルリー
聞きなれない単語を聞き返すと逆に驚かれた。
「お兄さん僕たちを知らないの?」
「君達ってそんなに有名なの?」
「少なくともシェルリーを知らない人はめったにいないよ。でもお兄さん面白そうだから教えてあげる。」
「シェルリーっていうのはポアルの王直属の精鋭部隊の1つで、8歳から15歳までの子供で構成されてるんだ。」
「入れるのは全ポアルの国民から選び抜かれたエリートだけなんだよ。」
「ポアルは人間の国では最大だから、人間の中ではトップの人が集められてるよ。」
「シェルリーは年齢層が一番低いから立場も部隊全体の中だと低いけど実力なら今期のシェルリーは歴代最強で、今の部隊でもトップ争いに加わってるよ」
口々にシェルリーのことを教えてくれる子供たちに少し驚きながらもちょっとした疑問を口にする。
「君達ってそんなにすごかったんだ。でもそんな君たちがなんでこんなところにいるの?」
すると、最初の少女が驚くべきことを口にする。
「お兄さんこそ何でここにいるの?ここはシェルリー専用の練習場だよ。部外者は入れないはずなんだけど。」
「え、それ本当?」
「こんなことで嘘ついてどうするのよ。」
「それもそうだね。っていうか君達精鋭部隊の割にはさっきの男の子とか簡単に負けてたよね。」
その言葉にプライドを傷つけられたのか負けた方の少年が口を開く。
「僕たちの実力がこんなものなわけないじゃん。使えるのは属性魔法1種類だけ、しかも枷付き。相手がリリスってのも相性悪かったし。」
「属性魔法?枷?魔法にそんなのあるの?」
「お兄さん、何言ってるの?そんなの5歳児だって知ってるよ」
「いや、俺にもいろいろあってさ。多分俺は君たちが当たり前に知ってること殆ど知らないと思うよ。」
とりあえず本当のことを言ってみる。
「ふーん。僕はケイル。ケイルでいいよ。12歳。お兄さんは?」
「俺は蒼真。」
俺が言ったことを全部信用しているわけではなさそうだが、仲良くはしてくれるようだ。ケイルが自己紹介したことで、他の子供たちも集まってきて口々に名前を言い始める。
「私はリリス。14歳。一応シェルリーの副長やってるわ。」
「私はミア。10歳!」
「僕はアーリック。アールでいいよ。」
「・・・」
リリスという子がさっきケイルに勝った子みたいだ。副長というからには相当強いのだろう。そしてリリスの陰に小さい子が1人隠れていることに気が付く。屈んで視線を合わせてからゆっくり問いかけてみる。
「君は、なんて言うの?」
最初は怯えているようだったが、少しの間そのままでいると突然抱き付かれた。
「うわあっ」
いきなりのことだったので、そのまま後ろに倒れてしまう。
ローブの胸の部分をつかんで離れようとしない子の頭をそっと撫でてからもう一度聞く。
「俺は蒼真。君は?」
「クリス。7歳。」
あれ?シェルリーって8歳からって言ってなかったけ?そう思ってケイルに聞こうとしたら呆然としていた。
「クーが、懐いた」
「え?」
「いや、クーは年齢的には入れないんだけどあまりの魔力の高さに親が怯えちゃって。部隊に押し付けられたみたいな形で入ったんだ。シェルリーだったら年の近い子も多いから何とかなるかなって判断で入れられたんだけど、親に捨てられたっていう意識が強くてなかなか誰にも打ち解けられなかったんだよ。今一番懐いてるリリスだって2,3か月かかったんだよ。」
ひっついてるクリスを見るととてもそんな風には見えないが他のみんなの顔を見てもおどろいてるところを見るとケイルの言ってることは本当なんだろう。
「よろしくな、クリス。」
「クーでいいよ。」
顔を上げたクリスは笑顔でとてもかわいかった。