23層の面倒なところ
ティムの言葉にハッとする。
「確かに俺は使い方が分からない。でもどうすればいいんだ?」
「方法は2つ。昔の記憶を取り戻すか、自分で訓練して少しずつ使い方を学ぶかのどちらかしかないわ。無属性魔法は人によって違うから教えてもらったりすることなんてできないわ。」
まあそれもそうか。
「今できないことを言っても仕方がないわ。闘い続けたらコツがつかめるかもしれないし。キースのところまであと7層よ。とにかく頑張りましょう。」
少し休憩したおかげで俺のMPとHPはある程度回復した。あれだけ使ったのにこんな短時間で回復できてしまうのはやはりレベルの恩恵とホーリーリングのおかげだろう。
各階にいるボスを倒すのは相当困難になってきている。たくさんいる亜獣たちもどんどん強くなってきているせいでなかなか倒せない。俺たちは方針を変え、ボスの前に行くまでになるべく無駄な力を使わなくて済むように、最初は片っ端から倒していたものをできるだけ飛び越えて先に進むことにした。ボスと闘うときに横やりを入れられたり動きにくかったりするけど、いちいち倒すよりも効率がいい気がした。
「ソーマ!上!!」
目の前の敵に集中しすぎると別の方向からの攻撃に対応できない。でも周りに気を付け過ぎると目の前の奴に対応できない。微妙な視野の調節とティムたちの注意でなんとか敵を倒していく。
「こっれでラストォ!!!!」
氷の無駄にデカい牙を振りかざすセイウチの頭に雷槍を5本ほどぶち込んで仕留める。
「やっと片付いたようだな」
呆れたような声で言うフォルドにゴメンと謝る。
現在俺たちがいるのは22層。やっとここまで降りてこれた。時計なんてないし山の中だから陽も見えないため、時間を確認することはできないが、相当長い間闘い続けているのは確かだ。それもこれもほとんど俺のせいだったりする。
はっきり言うと俺はまだ魔法の扱いが下手だ。っていうか俺がアポルに来てまだそんなに時間がたってないのに強大な力だけを持たされてさあ闘えと言われたってどうしようもないんだ。
単に目の前の敵を倒せと言われたらそれはまあどうにでもなる。ただ、平和な平和な経済大国日本で生まれ育った俺に戦闘経験なんてない。戦いが長引けば長引くほど、その経験の無さが足を引っ張る。多分どのタイミングでどんな魔法を使うのが有効的ってのがあると思う。どこを狙えば効率的とか。それが分からずにただ力押しでやってるから時間がかかるし無駄な体力を消耗するんだ。
「まあいいじゃない。最初よりは大分マシになったわ。たとえ今が酷くてもそのうちもっと上手くなるわよ。」
それ、暗に今の俺が酷いって言ってるよな?
「で?キースがいるのは23層なのよね?23層のどの辺?」
「儂が案内しよう。次は儂が先頭で行く。ティムが最後でもよいか?」
今まではティム、俺、フォルドの順番で進んでいたから逆転することになる。
「別にいいんじゃない?大して何も変わらないでしょうし。」
22層の奥の階段をフォルドを先頭に降りていく。
目の前のフォルドがピタッと動きを止め、俺もそれに従い進むのを止める。
「この層は多少面倒でな。まあソーマなら問題ないだろうが毒系の亜獣が多い。その毒の種類は様々だが下手に攻撃して体液を振り撒かれると困る。個体によっては血液そのものが周囲のものを溶かすようなモノだったりするのでな。」
え、そんなのどうしろってんだよ。
「そういえばそんなのもいたわね。確か昔来たときは初っ端からムーイがバラバラにして麻痺毒撒き散らしたんじゃなかったかしら。」
「つまり、完全に消し飛ばさないといけないってことか?」
「まあそうなるな。炎で焼くか闇で消すかしかない。風で塵にすることもできなくはないが手間がかかるし加減を間違えたらかなりの参事になるからな。」
「お、おう。」
何でそんな面倒なところに封じたんだよ!?
そんな俺の心の声もむなしくフォルドは23層に足を踏み入れる。
「キモイッッッッッッッッ!!!!!」
なんていうか、細長いものがたくさんいる。蛇みたいなのとかムカデみたいなものとか。トカゲとかサソリとか。なんかとりあえず毒もってそうな生き物集めました!みたいな場所。
「で?キースはどの辺にいるのよ。」
「少し進んだところにある通路を左に行ったところだ。そこに大量にある氷柱の1つに封じた。下手な衝撃を加えれば封印を解くことができなくなる場合もあるから気を付けてくれ。」
その前にここをどうやって通るか考えようよ!!
「炎と闇が使えるのは今はソーマだけよ。別にキースと合流したらどうにでもなるから。早くこのムシケラどもをどうにかして頂戴。」
どうやら蛇やらサソリやらに生理的嫌悪を感じるのは俺だけらしい。
ってかどうやってこんなの倒せって言うんだよ。
「別に全部倒す必要ないわよ。この層はキースさえ大丈夫ならボスと闘う必要もないわけだし。」
そっか。んじゃあ俺たちが通る道さえ作ればいいのか。
だったら話はもう少し簡単。
《フローズンロード》
幅約3メートルで、まるで道のように氷を広げる。
既に氷山ではあるが、炎で地面の氷が融けちゃいましたなんてことになったら困るからだ。俺の炎では融けないように一応固めておく。
ちなみに最近魔法の名前は自分で適当につけている。正式名称とかわからないんだからそれっぽい名前を付けておけば使うときに何となく楽な気がする。まあ無詠唱だったらあんまり関係ないけど口に出した方がしっくりくる。
《ダブルフレイム》
2つの炎が絡まりあいながら進んでいく。おかげで幅2メートルほどの炎の軌跡には燃えカスがいくらか残ってるだけでとても通りやすい道が出来上がっている。
「周りの奴らがたかってくるまでにできるだけ進もう」




