蒼
とりあえず読んでみたがよくわからない話だった。この青年も猫も正体がいまいちわからないし、結局は消えた?しかもこの本ここに置いたの誰だよ。しかも魔法てなんだよ。このが異世界だろうってのは分かったがそんな非科学的なものが本当にあるのか?考えなければならないことが多すぎてベッドに入ってもぐっすり眠ることができなかった。
コンコン
ドアをノックする音で目が覚める。
「ソーマ、朝ごはんどうする?」
「ん。準備できたら食堂で食べる」
ベッドから起き上がり、顔を洗おうと洗面台のところへ行き驚愕する。顔やそのパーツ自体はそのままだ。
「なんだこの眼と髪は。」
眼も髪もきれいな蒼になっていたのだ。いや、確かにここで黒髪黒目の奴は見なかったけどさすがにこれは派手だろう。確かにバスは茶髪に碧眼だが・・・。
そしてこの服装も何なんだ。昨日は本当にそれどころじゃなくて気にも留めなかったが大分恥ずかしい格好をしている。真っ黒のローブの下によくわからないセーターもどきと柔らかい生地のズボン、何も考えずに昨日脱いだ靴も見覚えのないものだった。そして首元を見て驚く。そこには、去年から首に掛けっぱなしにしていた紐に連なった4つの石だった。元の世界にいたころと変わっていないのはその石だけだ。そして腰にも違和感があり、見てみると小さな茶色のウエストポーチのようなものを身に着けていた。こんなものをつけたまま寝ていたとは我ながら驚きだ。そのポーチの中身も気になったが、朝食に呼ばれていたことを思い出し、先に食べに行くことにする。
食堂には人がいなかった。これなら部屋で食べても変わらなかったと思いながら席に着く。朝食を持ってきたバスにお礼を言ってから食べる。やはりおいしくて夢中で食べていると、飲み物を持ってきたバスが笑っていた。
「ソーマは本当においしそうに食べてくれるね」
「だっておいしいから。なんか食べたことないものばっかりだし。」
「本当に変なこと言うのね。ここで出してる料理はどこにでもあるものなのに」
笑って流してから、昨日の本ことを聞いてみる。
「バス、《蒼の冒険》っていう本知ってる?」
「え、知らない人がいるの?まあアポルが分からないあなたが知らないのは分からなくもないけど」
「そんなに有名な話なのか?」
「ええ。ほとんどの子供は寝る前とかに母親から読み聞かせられるわよ。」
俺たちの世界の桃太郎みたいなものか。
「この話って青年が消えて終わりとかしっくりこないんだけど。」
「そうなのよね。この話って本当に謎が多くて、みんな知ってる話なのに作者がだれなのかを知ってる人はいないのよ。これはただの噂なんだけど、実話って話もあるし。」
「これが実話?しかも作者不明って」
「本当にわからないのよ。ただ500年くらい前に確かに種族間で戦争は起こっているわ。ただこんな青年がいたなんて話は聞いたことない。でも確かに実話かもしれないって噂はある。」
「わかんないことだらけだな。」