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転生(仮)  作者: 成宮レイ
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グリフォン

「え?」


急に起き上がったグリフォンのせいで、サボテン全体が揺れ、穴に大きく身を乗り出していた俺はバランスを崩し、グリフォンの上へ落ちてしまう。


「ソーマ!」


グリフォンは俺の名前を呼び、脊中で俺を受け止めてくれる。なんだろう、ここすごく落ち着く。


「お前、なんで俺の名前?」

「ソーマこそ、何を言っておるのだ?今までどこにいたんだ?ソーマが儂にこの場所を守るように頼んだのであろう?」


ズキッ


「クッ」


割れるような頭痛に思わず声を漏らす。

俺が、頼んだ?何を?守る?何から?


「大丈夫か?」


グリフォンの言葉に答える余裕はない。


『ソーマ!そこにいるのはあのグリフォンね。ってことはまた頭痛?オリが危ないの。あまり時間が残されてない。あと数日で目が覚めてしまうかもしれない。』


そうだ、シャルムやティムが待っているんだ。


「悪い、グリフォン。お前の話は後で聞く。でも今は俺の仲間が大変なんだ。急いでベルシャークに行く必要があるのに、ゾネムー川を渡れずにいる。シャルムって知り合いか?」

「わかった。でもソーマはここに一度残れ。取りあえず彼女を連れてここに戻って来よう。顔色が悪すぎる。その状態であそこを渡るのは危険すぎる。」

「ああ。頼む。」


そう言ったグリフォンは、俺が落ちた穴から飛び立っていった。

俺はポーチからポーグを取り出して口に入れる。暫くの間その場に座り込んでみんなが来るのを待つ。

ここはサボテンの内側とは思えないほど快適だ。床は柔らかいし、気温も少し涼しいくらいに保たれている。一応、《シャルロのセーター》で、体感温度は常に一定に保たれているが、それでも蒸し暑かったりはする。


気づいたら寝てしまっていたようだ。話し声がして目が覚める。


「一体あれから何があったというんだ!」

「だから、私にもわからないのよ。私たちだってずっと探し続けてた。」


何の話だ?しかもこの声・・・?


「お、ソーマ起きたのか。」


そう声をかけてきたのはシャルムだった。

今まで争っていたかのような声がピタリと止まる。


「ソーマ、よかった。目が覚めたのね。」

「え?」


俺に声をかけてきたのはティムだ。それは間違いない。でも、いつものニャーニャー言ってるのを何となく理解したわけでも頭に直接話しかけられたわけでもない。


「あれ、最初に言わなかったっけ?私別に人間の言葉も話せるって。」


そういえば言ってたような気もする。


「じゃあなんで今まで喋んなかったんだよ。」

「必要性を感じなかったから。」

「じゃあなんでこのタイミングで話したんだ?」

「彼、フォルドと話さなきゃいけないことがあったのにソーマが寝てたから。」


あ、俺のせいなのね。


「で、そのグリフォンの名前がフォルドって言うのか。」

「ティムの言葉は真だったのだな。儂はフォルド。見ての通り、グリフォンの魔獣だ。そしてソーマ、其方の嘗ての友。」


ズキッ

また頭痛がしたが、さっきほどひどくはない。


「悪い。本当に俺は何もわからないんだ。いろんな人と話して、自分がこの世界に来たことがあるってことはなんとなく察しがついたが、それだけだ。」


グリフォン、いや、フォルドは一瞬悲しそうな顔をしたが次の瞬間には、とても優しげな眼で俺を見つめた。


「記憶がなかろうとなんだろうと、ソーマはソーマだ。儂はソーマの友だ。ソーマの頼みとあらば何でもきこう。」

「俺たちは急いでベルシャークまで行かなくちゃいけないんだ。送ってくれないか?」


そういえば、オリが危ないってどうなったんだろ。

周りを見渡すと、部屋の隅にオリがまだ寝ていた。でも、時々息遣いが荒くなったり、瞼が動いてる。確かに間がないのかもしれないな。


「ああ。ティムとシャルムから事情は聞いた。急いでオリをシェリーのもとへ連れて行こう。」

「シェリー?」


頭の隅に引っかかるような名前。


「シャルムの母親よ。」


そういうことか。でもその口ぶりからしてティムも知り合いのようだ。


「あまり時間がないのだろう?早く背中にのれ。一気に行くぞ。」


フォルドはそう言って、乗りやすいように少し屈んでくれる。ティムはフォルドの腕を駆けのぼり、ちょこんと頭の上に座った。急いで俺もフォルドの背中によじ登る。シャルムはオリを抱えると、俺の後ろに飛び乗った。


「つかまっていないと振り落とされるわよ!ソーマは首につかまっとくといいわ。」


何でティムが言うんだ?


「では行くぞ。」


そう言って、フォルドは力強く床を蹴り、勢いよく真上に上がっていく。俺が落ちた穴はどうやら出入口だったようでそこから空へと舞い上がる。


「うわっ!」


サボテンを上るときは気づかなかったけどここの景色は上から見ると相当凄い。


「カルムって赤い国なんだな。」

「は?何言ってんだ?ここはカルムじゃないぜ。」


シャルムの言葉に驚いて、勢いよく後ろを振り向く。その瞬間手が緩んで落ちそうになったが、ちゃんと踏みとどまった。


「いや、こんなのカルムじゃねえよ。ここって大体真ん中だぜ?トルムの影響で結構過ごしやすいじゃんか。ちゃんと植物だって生えてるし。」



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