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転生(仮)  作者: 成宮レイ
ポエル
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蒼の冒険

青年は気が付いたら街にいました。そこでは、今までの青年の常識は何も通用しませんでした。周りにいる人々は言語も考え方も違い、本当の意味で住む世界が違うんだなあと青年は思いました。

青年は何も持っていませんでした。お金も、知識も、常識も。青年は絶望しました。こんな場所で生きていけるわけがない、と。

絶望した青年は、ただ、街の片隅に座り込んで何もしませんでした。そんな青年に1匹の猫が近づきました。その猫はあまりにもその青年が憐れに思えたのです。猫は街の片隅で拾った小さな宝石を青年にあげました。とてもきれいな蒼い石でした。

青年は突然現れた猫から宝石をもらい、しばらく迷った結果換金しました。少しのお金を得た青年は少しの食べ物を得、その美味しさに感動しました。そして、必死に生きていくことを決意しました。宝石をくれた猫にお礼を言いたいと思いましたが、その姿はもう何処にもありませんでした。

青年は、努力しました。とにかく学べることは全て学ぼうと思い図書館に通い、言語を学び、常識を知り、知識を得ました。そして、魔法の存在を知りました。

このアポルでは個人差はあるものの使えない者はいないとされる魔法のことでさえ青年は知らなかったのです。

青年は、冒険者という職業があることもその時初めて知りました。魔獣や魔物を倒したり、特定のものを手に入れると高く売れるというこの職業に青年は大変興味を持ちました。

さっそく冒険者になった青年は魔法の使い方を学びました。青年は魔法の才能がとても優れていて、練習も怠らず、努力したためどんどん強くなりました。

強くなった青年はもっとこの世界のことを知りたくなり、旅に出ました。旅の先々でたくさん戦い、傷つき、それでも進むことをやめませんでした。

青年は空が大好きでした。どこまでも蒼い空は、自分を守ってくれるような気がしました。

その旅の途中、友と呼べる存在もたくさんできました。青年の友に、種族は関係ありませんでした。人間の友はもちろん、魔人や精霊、エルフとさえ仲良くなってしまったのです。精霊の中には青年とともに進むことを望み、仲間になるものもいました。

青年はアポル中を旅することで多くの悲しみや苦しみ、希望や喜びを見つけ、アポルがますます好きになりました。


しかし、楽しい日々は続きませんでした。アポルに異常が起きたのです。アポルが、外に広く広がる闇に浸食され始めたのです。青年の好きだった空も暗い色に変わりはじめました。アポルの外側のことは、誰も何も知りませんでした。しかし、闇にのみこまれた部分から戻ってきた人はいませんでした。人々は闇を恐れ、アポルの中心へ逃げようとしました。しかし、それを考えたのは人間だけではありません。魔人や魔獣たちもアポルの中心を目指したのです。今まで種族同士で住む区域も違ったのであまり交わることのなかった者たちが、一斉に中央を奪い合いました。戦争が始まったのです。

青年はこの光景をとても悲しみました。そして、自分がこの戦争を止めることを決意したのです。争いを好まない青年はこの異常の原因を突き止めて、元に戻そうと思いました。

友や仲間の精霊たちと協力して、気づいたらアポル屈指の立派な魔術師となった青年はこの異常を食い止めることに成功しました。青年の立会いの下、種族同士で和解しあい、誰もが青年に感謝しました。人々は青年を勇者、大魔導士など、様々な呼称で呼びました。

アポルが元に戻って1週間がたったころ青年は忽然と消えました。誰にも何も告げずに消えた青年を皆が探しました。それこそ種族の溝なくアポル中をくまなく探したにもかかわらず見つかることはありませんでした。

青年を慕っていた者たちはあるものは探し続け、あるものは自らを封印し、あるものは青年の好きだったアポルを守り続けました。

青年が消えたアポルは、いつしか青年のことを忘れ去りました。

それでもアポルは青年が願った平和を壊すことはありませんでした。

青年の好きだった空は蒼いままでした。

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