異世界!?
「ちょっとまっててね」
そう言ったおばさんは、しばらくすると片手に大きめの紙をもってやってきた。
「そういえば、自己紹介がまだだったわね。私はバス。この宿屋、バスティートの女主人よ。あなたは?」
手を差し出しながら言うバスに
「俺は蒼真です。」
と、名乗って手を出す。
名前を言った瞬間バスの表情が変わったと思ったが一瞬のことで、また最初と同じ笑顔で握手する。気のせいだったのだろう。
「よろしくね、ソーマ。ところで、これ、アポル全域の地図名なの。あなたはどうみても人間だから人間が暮らしている地域の分だけでいいかとも思ったけど、何せ聞いたこともない土地だったから、もしかしたらってこともあるかもしれないし。」
そう言いながら机の上に地図を広げるバスを、奇妙な気持ちで見つめた。東京って言ったら経済大国日本の首都だぞ?知らないやつとかいないと思ってたんだけど。
そんなことを考えていると、地図を広げ終わったらしいバスが声をかけてくる。
「ねえ。わたしやっぱりトーキョーなんて街、聞いたことないのよ。この地図見て、大体どの辺にある街か、教えてくれない?」
その言葉に地図を見て絶句する。なんだここは。どう見たってこんな地形知らない。俺は日本地図だけでなくもちろん世界地図だって丸暗記している。
「なんだここ。地球じゃないみたいじゃんか。」
ボソッとつぶやいた声が聞こえていたようで、またバスが首をかしげる。
「チキュー?それも聞いたことない名前ね。」
俺は耳を疑った。地球を知らない?何を言っているんだこいつは。今俺たちがいる星の名前もわからないのか?
「地球って、ここだろ?あんた何言ってんだ?まさかここが火星なんて馬鹿なこと言うわけじゃないだろ。」
「チキュー?カセー?あなたこそ何を言ってるのよ。このアポルに本当にそんな場所あるの?」
「アポル?なんだよそれ。」
そういった瞬間バスの顔がこわばる。
「アポルが何かわからない?まさか本当に・・・」
最後のほうが何と言ったのかうまく聞き取れなかったが本当に俺がアポルというものが分からないことに驚いているようだ。
「いったい何なんだ。そのアポルってやつは」
バスは意を決したようにして口を開く。
「いい?アポルって言うのはこの世界の総称、まあこの世界の名前みたいなもの。で、人間と魔人と魔獣が共存してる。本当は精霊とかエルフとかいろいろいるけどその辺はめったに私たちの前に姿を現さないし気にしなくていいわ。で、ここが人間の住む国のうち最大の都市ポアル。」
バスの言葉に俺は驚愕を隠せない。本当にここがアポルなんて言う世界だとしたらまさか俺は異世界に飛ばされた?やっぱあの事故で死んでしまってアニメ、マンガあるあるの転生しちゃいましたパターン?まああの事故で生きてるってほうがちょっと、いやかなりびっくりだけど本気で異世界?
「ソーマ?あなた本当に大丈夫?とりあえず今日はもう休んだら?」
バスの言葉に、今日はもう寝ようと思う。1日に多くのことが起こりすぎた。一晩寝てまた明日考えよう。
自室に戻るとベッドの上に青い表紙の本が置いてあることに気が付く。夕食の前に部屋を出てきたときにはなかったはずだ。誰が置いたのだろうと思いながらもその本に手を伸ばす。1ページめくるとやはりそこには見知らぬ文字。それなのに自然と読めている自分に戸惑う。
「《蒼の冒険》か」