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転生(仮)  作者: 成宮レイ
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キューリィの勧誘

気がついたら腕の中のティムが眠っていた。相当疲れているのだろう。

ぐー

音のした方を見るとオリが恥ずかしそうにしていた。そういえば、昼ご飯を食べていなかったんだっけ。


「シャルム、どこかに食いに行こう。美味しい店、知ってるだろ?」

「ああ。時間も時間だし、あの辺がいいかな。」


そう言ったシャルムについていき、たどり着いたのは香ばしい匂いのする屋台だった。


「よお、ジジイ。やっぱまだ生きてやがったか。」

「おうおう、ご挨拶だな、シャル。お前もまだその辺の犬ころに食われてなかったか。そんな貧相な体、うまそうでもなんでもねぇがな。そういや今日は見ないツレがいんじゃねえか。」

「言ってろ、クソジジイ。オーリンとソーマだ。オリはあたしが引き取ったんだ。あたしが育ててる。ソーマは、なんていうか、その辺で会ったから一緒に旅してんだ。」


一通り俺たちを紹介してから、店主であろうじいさんの紹介をしてくれる。


「このジジイは、古くからの知り合いでな。まあ、悪い奴じゃねえよ。キューリィってんだ。」

「なーにが『悪い奴じゃねえよ』だ。家出して空腹で死にかけてたお前を拾ってやったのが俺だろうが。俺はお前の命の恩人だろ。」

「シャルムもそんなことやってたんだ。」


オリの言葉に一気に機嫌を悪くするシャルム。


「昔のことだ。親父が出て行って荒れてた時のことだ。そん時一週間くらい世話になって、母さんが心配してるって諭されて家に戻ったんだ。」

「その後ずっと俺んとこに通って実戦や人化のやり方を教えてやったのは、どこの誰だったかな?」


ニヤニヤしながらシャルムをからかうキューリィに本気で飛びかかるシャルム。

やっぱり速い。俺でも速いって感じるくらいだからこのじいさんはやばいんじゃ?

それは杞憂に終わった。

シャルムの突き出した左手を余裕で止めていた。しかも料理を作りながらシャルムを見もせずに。


「まだまだ爪が甘いな。パワーはともかく、スピードがな。俺の訓練メニュー、毎日ちゃんとこなしてんのか?」

「やってる。」


ムスッとして答えるシャルムに、夜の謎の筋トレや、よくわからない行動の理由がわかった。トレーニングメニューだったのか。


「まあ、シャルは置いといてだな。そこの、オーリンって言ったか?お前、親は?」

「オルマとリーンラン。2人が引き取って育ててた子供だ。あたしは二人の子供だと思ってたが、違うらしい。この子は雷だからな。まあ、生みの親が誰であれ、あたしが責任持って育てるが。」

「ほう。あの2人が引き取った子供か。それなら見込みがありそうだな。どうだ?オーリン、俺と一緒に来ないか?鍛えてやるぞ。シャルは強いだろう?あいつをあそこまで強くしたのは俺だ。まあ劫火猿(ごうかえん)っていう種もそこそこの力を持ってるがな。」


俺は聞きなれない単語に首をかしげる。それを見越したシャルムがそっと耳打ちしてくれる。


「あたしの本当の姿さ。あたしは獣ベースって言ったろ?」

「じゃあシャルムって本当は猿なんだ。」

「ああ?」


本当のことを言っただけなのに何故かキレたシャルム。

こちらの騒ぎに気づいたのかオリとキューリィがくすくす笑っている。


「シャルに猿は禁句だぞ。別にその姿を嫌ってるわけじゃないが猿って呼ばれることは許せないみたいだな。そこは腐ってても女というべきか。」


ああ、アポルでも、魔獣でも、一応そういう概念自体はあるんだ。女にブスとか猿とかカバとかは言ったらいけないみたいな。


「腐っててもってなんだ!?あたしはちゃんと女だ!!」

「その口調と態度を改めてからそういうことは口にしような、シャル坊。」

「その名前で呼ぶな!」

「「シャル坊?」」


「言ったら殺す」とか物騒なことを言いながらシャルムはキューリィを睨むが、気にも留めない様子でさらっと暴露する。


「いやー、俺がシャルと初めて会ったとき、すでにこいつこんな口調だろ?女なんて思ってなくてシャル坊ってずっと呼んでたんだ。随分経ってから女ってことを知って坊を外してシャルって呼ぶようになったんだが。」

「シャルムは否定しなかったのか?」

「あたしはその頃『坊』の意味が分かってなくてな。」


このキューリィという男はシャルムにとっては黒歴史の塊のようなもののようだ。


「で、オーリン。俺のところへ来ないか?」

「いかない。」


オリの即答に三人で唖然とする。


「普通もう少し迷ったりしないか?」


誘った張本人のキューリィが言ったがそれは俺たちも同感だった。


「強くはなりたいさ!でもオイラ、ソーマと一緒の方が面白そうだから。それにオイラはまだ自分がどんな魔獣かわかってないし。魔女が言ってた。ソーマと一緒にいたらいずれ分かるって。」

「ほー。珍しい。お前人ベースか。ますます欲しくなった。俺の手でどこまで強くできるか試してみたいもんだ。本来の姿が分かったら、もう一度俺に会いに来い。そん時にもう一度聞いてやる。俺も旅人だ。縁があれば確実に会える。」

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