絶対精霊
俺はティムの言ったことをまた2人に伝える。俺は通訳かよ!?
「別にわざわざ教えなくてもいいじゃない。情報はアポルでは何よりも重要よ。まだ実感わかないかもしれないけどね。情報は渡すにも受け取るにも必ず対価を要求しなさい。受け取るときもよ。代わりのものを何か与えなさい。でないと情報を軽く見ていると思われる。」
「っていうかさ、さっきから俺の考え読んでね?俺、口に出してないよな?」
隣で聞いてるシャルムたちは意味が分からないという顔をしている。
「んーとね。絶対精霊とその主はソーマが思ってるよりずっと深いわ。私たちは主が死んだら消滅するし。私たちは主に核を渡すことで空いた穴を主の魂で埋めるのよ。」
「は?魂?じゃあ俺やばくね?しかも俺って絶対精霊4匹もいるんだろ?」
「ソーマなら大丈夫よ。私たちが死なない限りソーマの魂がなくなることはない。少し魔法が使いずらくなったりすることはあるかもしれないけれど。魔力は魂の力。私たちのために5分割しててもそれだけ魔法が使えるんだから。あと、絶対精霊と主が離れられない理由もこの辺ね。全部を要約すると、私たちとソーマは一心同体ってこと。」
「じゃあなんで核はこんな風に石なのに俺の魂は見えないんだ?」
「別にソーマだって体内に入れてもよかったのよ。っていうか入れた方がフルに力使えるからそっちの方がいいんだけどね。でも、ソーマが言ったのよ?目に見える形で持ってないと、私たちの命を握っている責任を忘れそうだって。それに私たちは望んでないけど、もしソーマの身に何かあったときに手元にあればすぐ私たちに返せるからって。」
それ、俺が言ったのか?いつ?
思い当たる節はもちろんない。そもそも契約とかいつしたんだよ。
「さっきから何の話してるんだ?オイラたちにも説明してくれよ。」
「ああ。絶対精霊とその主の関係についてとかについて教えてもらったんだ。」
「そういえばお前、記憶喪失だったな。」
シャルムの言葉にまた怒るティム。
「お前って何よ?ソーマより断然弱い癖に。それに記憶喪失って?」
いろいろと面倒だからもう心の中で話す。こうすれば俺の言ったことは聞こえないしティムの言葉は2人ともわからない。別に秘密にしたいわけじゃないが説明とかいちいちしたくない。
『俺、アポルに3か月前に来る前のことは何も覚えてないんだよ。だから、記憶喪失ってこと。』
『ソーマがそうするなら私もわざわざ口に出す必要ないわね。』
『え、ティムもできるのか?』
ティムの思考が俺の中に流れ込んでくる。全部来ると面倒だからとりあえず今のティムの思考だけを抜き取って頭に入れる。たぶんティムもそうしてるんだろう。
『当たり前じゃない。因みにここだから言うけど普通に人の言葉も話せるわよ。あと、ソーマの言葉には多少語弊があるわね。あなたが失った記憶はそこじゃないでしょう。アポルに来る前の別世界の記憶はちゃんとあるはずよ。その内容は知らないけど。』
は?俺はここに来てから異世界の人間だということを誰にも言っていない。何故知ってる?
「ソーマ、キモイ。さっきから猫と見つめあって何してんだよ。」
「そういえば親父から聞いたな。絶対精霊と主は大切なものを交換してるからテレパシー的なものが使えるらしいって。親父は精霊と契約してたわけじゃないから詳しくは知らないけどな。」
「シャルムの親父ってなんかいろいろ知ってるよな。」
「ああ。あたしの知識はほとんど親父から教えられたものだ。ずっとどっか旅してたらしい。その旅で母さんと会ったらしいけど。旅の仲間が面白いやつばっかだったって母さんも言ってたし。母さんの出身地、カルムで二人は会って母さんはあたしを身ごもった。でも父さんは旅を選んだ。母さんもそれを応援したらしいんだがな。で、2年くらいしたとき突然帰ってきたんだって。意気消沈して。事情を聴いても何も答えてくれなかったらしくて。そん時あたしは1歳だったから何もわからなかったんだが。暫くしたら何もなかったかのように普通に生活してあたしにとってはただの子煩悩な父親だったんだが。数十年してあたしがある程度の強さを得た時くらいかな。突然姿を消したんだ。あたしにも母さんににも何も言わず。母さんは笑って、いつか帰ってきてくれるからって言ってたけど納得できなかったあたしに、親父が昔旅してたこととかを教えられた。」
「今までシャルム、親父のコト話すの嫌がってなかったか?」
「ああ。あたしはずっと親父に捨てられたって思ってたからな。だがあの魔女と親父について少し話したから。」




