精霊
「あら、そこのあなたは多少は察しがいいみたいね。」
「お?なんか機嫌がよくなったぞ?」
やはり、ティムの言っていることはわからないのか不思議そうな顔をして言う。
「シャルムが、ティムのことを精霊って言ったことに気分を良くしたみたいだぞ?」
「ソーマ、こいつの言ってることが分かるのか?」
あ、まずい。
「な、なんとなくだけどな。」
「ふーん。で、この猫何なんだ?」
それは俺も知らない。説明しろという意味を込めてティムを見る。
「仕方ないわね。私もまだすべてを教えることはできないけど、取りあえず私はそこの女の言う通り精霊よ。そして、ソーマの恋人。」
「ちょっとまてよ。なんで俺があったばかりの猫が恋人なんだ?」
「ふふふ。まあいいじゃない。」
語尾に音符が付きそうな言い方だ。
そして先を促す。
「取りあえず、私は精霊。ソーマ、私の核持ってるでしょ?首にかけてる奴かな?」
まさか、ステータスに書かれてた《精霊の核》ってこいつのことか?今までずっと下げていたから軽く存在を忘れていた。石を取り出してみると、その中の一つが鈍く光っている。
「それそれ。その光ってるやつが私のよ。精霊って、ある程度力のある人と契約を結ぶことができるのよね。でも私たちはただの契約精霊じゃない。精霊は1匹に1つずつ核を持ってるの。私たちはその核をあなたに渡した。そして絶対精霊になった。」
「ちょっとまて。核ってそんな簡単に渡せるものなのか?しかも私たちって?」
「核を簡単に渡せるかですって?そんなの無理に決まってるじゃない。まず核と身体を分けることができる精霊が希少なの。並の精霊には無理。それに分けるには激しい苦痛が伴うの。人間が心臓を取り出すようなものよ。」
「なんでそんなものを俺が持ってるんだよ?」
「ソーマが分からないなら私から言うことはできないわ。渡した理由はただ一つ。私たちにとってあなたはとても大切な存在だったからよ。核を持った人は私たちの能力の一部が使えるようになる。それにお互いの状況を逐一把握できる。その代わり私たちは核から長時間離れることができない。力の容量やタイプにもよるけど。私たちは核を通じて主から力を得るから。一緒にいるだけである程度回復できるのよ。だから力の供給ができない今までは悲惨だったわ。で、私たちって言うのはなんとなく予想はつくと思うけど核、4つ持ってるでしょ?私のはそのうちの1つ。つまり、あなたに核を渡した精霊があと3匹いるのよ。普通4匹も絶対精霊扱うなんて無理なんだけどね。契約精霊も何匹かいたはずよ。」
ティムの言いたいことはわかったが話のスケールがデカすぎて戸惑う。って言うか精霊ってそんなホイホイいるものなのか?
「精霊って、どこにでもいるわよ?ただ見えないだけ。普段は隠れてるし、いろんな姿かたちだから気づかないの。人間も魔獣も魔人も私たちのコト伝説みたいに思ってるらしいけど。あ、でも種族共通で幻想種って呼んでる精霊がいるのよね。私もそれなの。」
俺が1人で納得していると、隣からいい加減にしろという2つの視線。あ、完璧忘れてたわ。
「ソーマ、オイラたちのこと完璧忘れてただろ。」
「っていうか猫と喋ってるように見えてキモイ。」
うん。忘れてたのは否定しない。でも、喋ってるように見えてっていうより実際会話してるし。
一応忘れていたお詫びとして話してよさそうな部分をかいつまんで話す。
「つまり話をまとめると、その猫は精霊で、ソーマと契約をしてるってことだな。」
「猫猫言わないでよ。今は一番都合がいいこの姿だけど別に人間の姿だってとれるわよ。それに、私は絶対精霊。」
俺はティムの言葉をそのまま伝える。
「絶対精霊って、あの?伝説じゃなかったのか?」
「そういえば人はみんな精霊のこと自体伝説って思ってるってティムが言ってたな。」
「ああ。だって誰も見たことないんだぜ?そんなのいるって思わねえだろ」
「フンッ。力が足りないから見えないだけよ。自分たちの力不足を私たちのせいにしないでほしいものね。」
ティムの言葉が分かるのが俺だけでよかった。
「シャルム、精霊に幻想種ってのがあるって聞いたんだが、何なんだ?」
「幻想種ってのは精霊の中でも桁違いの強さを持った精霊のことだ。確か、ムーネル種、ディーリルビー種、サンルビーグ種だったかな。」
「ソーマ、なんなの私に聞いてくれたらもっと詳しく教えたのに。強さって言うか幻想種はとある分野に特化した種族なのよ。でも、ほとんど絶滅したわ。昔は精霊も普通にアポルで他種族と共存してたのよ。でもその希少さや、見た目、力を目当てに捕まえられたり殺されたりしたの。大きな争いも起こったし。幻想種は仲間を守ろうと前線に立ってらから。私はムーネル種の唯一の生き残り。風と光魔法に通じる完全情報特化型。私に聞いてわからなかったことは、知ってる人なんていないと思っても構わないわ。」




