宿屋
案内されたのは、落ち着いた雰囲気の静かな部屋だった。食事は朝夜の2食出るらしいが今の時間もわからない。
ベッドにダイブした俺はとりあえず今自分の身に起こっていることを理解しようと知っていることをまとめてみる。
まず俺は普通の東京に住む大学生だったはずだ。入学して3か月で俺はトラックに轢かれた。んで、気が付いたら白い場所でルナとかいうよくわからん少女にアポルがどうとかヴェルドの森とか言われて俺は気が付いたらここにいた。俺の身に一体何が起こったんだ。そして白い場所とここはどこなんだ。少なくともここは東京ではなさそうだけど。
ん?俺は事故にあったよな。まあ今ここにいるんだから死んだってことはないと思うけど。夢?にしてはリアリティ過ぎるような・・・
コンコン
「はい」
ドアをノックする音が聞こえたので返事をしてみると、ドアからさっきのおばさんが顔を出した。
「旅人さん、ごはんどうする?この部屋に運ぶことも食堂で食べることもできるけど」
ふと窓の外を見るとあたりはかなり暗くなっていた。思っていたよりも長い間考え事をしていたようだ。少しでも情報が得られるかと思い、人がいるであろう食堂に行くという返事をする。
食堂には3,4人のグループが2つと、1人で食べている人が2人ほどいた。注文を聞かれたが、何があるかもよくわからないためお薦めメニューというものを頼んだ。ご飯が来るまで周りの会話に耳を澄ませてみる。
「やっぱソルティーニの砦がな。」
「ああ。あそこはもう少し兵士の投入しないと落とされるぜ。」
「こっちはエルドの村があと1年くらいしか持ちそうにないぜ」
「なあなあ、あの噂聞いたか?」
「聞いた聞いた。とうとうエルフたちまで参戦してくるってやつだろ」
「あいつら精霊と仲いいから面倒なんだよな」
「え、それってただの噂じゃなかったのか」
やっぱりまったく知らない言語の会話なのに内容が頭にすとんと入ってくる。しかも何なんだよこの会話。砦?兵士?エルフ?参戦?精霊?どこぞのファンタジー世界だよ。今から戦争でもおっぱじめようってか?こいつら頭おかしいんじゃねーの?それともこの宿屋がやばいのかも。そんなことを思っていたらちょうど料理が運ばれてきた。見た目は普通に和食のようで1口食べるとそのおいしさに驚愕した。俺はどちらかというと洋食派だったのに。なんでこんな美味い料理を出す店を知らなかったのだろう。あまりのおいしさに一気に食べてしまうと、また最初のおばさんに声をかけられた。
「旅人さん、料理はどうだった?」
「こんなにおいしい料理初めて食べました。」
「褒めすぎよ。このくらいの料理どこにでもあるわ。」
「少なくとも俺は知らないな」
にこにこしていたおばさんが急に真面目な顔になり聞いてきた。
「あなた、本当にどこからきたの?ここがどこかもわからないんでしょう。その知識のなさははっきり言って異常だわ」
「いや、どこって言われても普通に東京ですよ。」
「ト、トーキョー?私、ずいぶん長い間ここで働いているけどそんな地名聞いたことないわ」