最初の街
さっさと片づけをして先に行ってしまうシャルム達。
「いや、待てよ。」
そう言いながら急いで追いかける。身体能力は大して変わらないのに、こっちには靴があるために簡単に追いつける。
そしてふと気が付く。意外と自分の体が疲れていないことに。
いままで地球での生活が習慣化していたため、毎日6~8時間の睡眠はとっていたが案外必要なかったのかもしれない。アポルに来て、身体能力は大幅に上がっていると思ったけどこんなところまで変わっているとは思わなかった。
すぐに追いついてしまい、そのまま追い越すとオリが突っかかって来る。
「ソーマ!オイラの前を走るな!!」
「じゃあ歩けばいい?」
そう言って速歩きをするが、こっちには靴の効果もあるので速歩きでもあまりスピードは変わらない。だから、結局俺がオリの前を行くことになる。
「俺の前を走るなって言ってんだろ!?」
「そういうから歩いてんじゃん」
俺がそういうと、悔しそうに背後で文句を言っているのが聞こえる。
「そんな朝からとばしたらすぐバテるぞ?」
「オイラを舐めんな!」
シャルムの言葉にも耳を貸さない。
昼に休憩するころには完全にバテテいた。
俺だって闇雲にスピードを出していたわけではない。追い越そうと無駄な足掻きをするからバテるんだ。その証拠にシャルムは息も乱れていない。
「いや、ソーマが早くてホント助かるぜ。誘ったはいいけど移動時間の違いは気にしてたんだ。周辺警戒までやってくれるからな。無駄な気力の消費も避けれる。」
「はぁ?ソーマ、そんなことまでしてたのかよ!」
自分は俺に追いつくのに必死だったことが馬鹿らしく思えてきたようだ。
「やっとオリはソーマとの実力の差に気づいたな。遅いんだよ。今のお前が太刀打ちできるような奴じゃねえよ、ソーマは。」
「それは今、だろ?ソーマなんかすぐ追い抜いてやるし。」
「あんたはここまで差があるのにまだそんなこと言ってんのか。まあすぐ現実はわかるわな。」
シャルムがため息をつく。
俺はふと疑問に思ったことを口にする。
「俺達って直線で進んでるよな?なんで街や獣たちに遭遇しないんだ?」
「あ?街ならすぐそこにあるじゃんか。何言ってんだ?」
オリが呆れながら指さす方へ顔を向けると、確かにそこにはポエルほどではないがそれなりに立派な門が立っていた。なんで気づかなかったんだろ。
「よらないのか?」
「別に寄ってもいいが、何するんだ?することねえだろ。」
確かにそうだ。でも、行ってみたいもんは仕方ない。ポエル以外の初めての街なんだ。
「用はないけど行ってみたい。それに美味いもんが食えるかもしれねえし。」
「まあそれもそうだな。バレなかったら問題ないし。」
この世界は圧倒的に食い物が美味い。これは夢中にならざるを得ない。
そしてこいつらが人間ではないことを思い出す。今は普通にしてるけど、そういえばこいつら魔獣なんだもんな。
そうこうしてるうちに街に辿り着く。
「ルネッシオ。それがこの街の名前だ。」
俺にこんなことで優位に立てたと思っているのかオリがドヤ顔をしてくる。
「んなもん知ってるよ。果実が豊富にとれるところで、ジュースやジャムが特産物なんだろ?人口43000人くらいの結構大きめの街。確かオルディー家っていう貴族が代々治めてるんだっけ。」
「記憶喪失だろ。何で知ってんだよ。」
「ポエルにいたころ図書館とかで調べた。ヨールキの主な街は大体全部頭に入ってるよ。勿論地図もな。さっきはずっと歩き続けて自分がどのくらいの距離進んだかわからなくなっただけだし。」
「そんな街の名前必死で覚えるくらいなら他のことに回せよ。」
「必死じゃねえよ。このくらい一回読めば覚えるだろ。街の一覧と特徴が載ってる本1冊読んで丸暗記しただけだ。」
俺の顔を驚愕の目で見るオリ。
「1回読んだら即暗記ってどんな天才だよ!」
そういえば、この部分は地球にいたころと大して変わってないな。暗記は小さいころからの得意分野だったし。
「お前ら何喋ってんだ?もう着いたぞ。どこで昼めし食うんだ?」
気づいたら、周りには屋台のようなものばかり並んでいる縁日みたいなところにいた。




