二人の反応
俺はどこから話せばいいのかわからずに暫くの間黙ってしまう。そもそも転生したなんて話しても信じられるものなのか?あと、種族の話とか。俺はステータス画面に《種族:使徒》の文字を思い出す。そして魔法。全属性使える上に全部特級。しかも無属性魔法が3種類。因みに俺はまだ《学習/絶対の障壁/無効化》の3つがどういう能力なのかいまいち理解しきれてない。俺にもわからないことをシャルムたちに言ってもどうしようもないとは思う。
痺れを切らしたのかオリが「おい、ソーマ!」と言って急かそうとするのをシャルムが拳骨で止める。
俺はとりあえず記憶喪失ということにしようと思った。そうすれば変に追及されないだろうし、何も知らなくても不審がられないと思ったからだ。魔法のことは聞かれたら答えればいいかと思う。
「んーと。」
俺が話し始めようとすると、オリは「やっとか」というような表情をした。
「俺さ、記憶がないんだわ。」
言った瞬間シャルムとオリの表情が凍り付く。俺はややこしくなる前に再び話し始める。
「2か月と少し前くらいにさ、気づいたらポエルの門の前にいたんだ。取りあえず中に入ったらまあ人がたくさんいるし。んで、何もわからない俺に親切にしてくれる人がいて、その人の厚意でその人が経営してる宿屋に泊めてもらってたんだ。取りあえず散歩してたらシェルリーっていうグループみたいなのに入ってる子どもたちに会って、いろいろ教えてもらったりしてたんだ。魔法の練習したりとか本当に何の知識もなかった俺にアポルの常識とかを叩き込んでもらった。でもそんなかでさ、気づいちまったんだよ。俺の強力過ぎる魔法は友達でさえも傷つけちまうって。で、修行でもしようかとポエルから出たはいいけど食料のこと完璧失念しててやばかった時にシャルムたちに会ったんだ。」
「ワリィ。突っ込みどころ多すぎて何から言っていいかわかんねえ。」
とりあえず話し終わった後のシャルムの第一声がこれだった。
「いやいや、最初っからおかしいだろ。記憶喪失ってなんだよ。しかも気づいたらポエルの門の前って。」
「その通りなんだから仕方ないだろ。俺としては突然何も知らないままに変な世界に放り込まれたって感覚だったんだから。」
「変な世界って・・・」
俺の本当の意味での言葉をシャルムたちはただのたとえだと受け取ったようだ。
「じゃあそれは置いておくとして、お前さっきシェルリーって言ったか?」
「ああ。」
「あのポエルの王の直属精鋭部隊の最年少グループ?しかも歴代のシェルリーの中でもずば抜けて高い能力を持った今代のシェルリー?」
「多分な。あいつら自分達でそう言ってたし。」
「で、そんな奴らを傷つけたのか?あんな最強部隊を?」
「ああ。模擬戦?みたいなのをちょくちょくやってたんだけどな。大けがさせちまったんだよ。」
「ふーん。やっぱ1対1か?」
「ああ。そういえばあいつらが組んで戦ったことなかったな。」
「おいおい、そんな軽いのかよ。」
「だって1対1だと俺が瞬殺しちまうから。」
「は?あのシェルリーを瞬殺?あいつらは個人でもかなりの戦闘力もってただろ?」
「多分な。個人でってどういう意味だ?」
「シェルリーの真骨頂ってのはあいつらの連携だ。ってか個人だったら最強を固めた部隊だからどこの部隊でも大して変わらねえんだ。あとは連携がものをいう。直属部隊ってくらいだからどこだって連携なんてできるさ。ただ今代のシェルリーはそれがずば抜けて上手いってわけだ。誰と組んでも何人で組んでも普通にとれるんだ。仲もいいらしいしな。」
「へー、そうだったんだ。」
「2か月も一緒にいて知らなかったのかよ。」
オリの突込みに苦笑いしか返せない。そういえば、お互いのことあんまり知らなかったな。




