正体
「あー美味かった。」
俺が言うとオリが「当たり前だろ!」っと言って笑った。
「じゃあ、話をしようか」
シャルムの言葉に和やかだった雰囲気が一気に緊張したものに変わる。
「まあ、あたしたちの話から先にする方がいいか。ソーマもなんとなく予想がついてるんだろうから話が早いし。」
「いいのか?」
「いいんじゃね?ソーマは俺らのコト知ったって変わんないだろ?」
俺の質問に答えたのはオリの方だった。
そしてシャルムが話し始める。
「まあ、単刀直入に言うと、私たちは人間じゃない。」
俺の表情が変わらないことに疑問を持ったオリが「驚かないんだな。」と呟く。別に驚いていないわけではないが、やっぱりなという気持ちの方が強かったんだ。
「んで、あたしたちが何者なのかって言うと、それはズバリ魔獣だ。」
「は??」
その言葉には正真正銘驚いた。
「ちょっと待て。魔獣ってあれだよな。あのベイノルドとかみたいなやつだよな?」
「ああ。一般には知られてねえけど魔獣も高位の奴らは人型になれるんだ。勿論力は落ちるがな。」
「じゃあお前らは元々は魔法が使える獣なのか?」
「ああ。あたしはな。人型になれる魔獣は二種類いるんだよ。獣ベースと、人ベースが。まあ、ベースって言っても最初の姿ってことなんだけどな。あたしはもともとは獣だ。獣ベースってことだ。一定の領域まで上り詰めたら人化できるんだ。」
「じゃあオリは?」
「オリは人ベースだ。まあ人って言っても人間とはいろいろ違うんだがな。魔獣の中でも人間の姿で生まれる場合ってのはあるんだ。ただ、そいつらも真の姿は獣の方だ。そいつらは力が覚醒したところで獣の姿になれる。覚醒するまで自分が何なのか知らないやつは多いな。使える魔力の種類とかで何となく予想はつくんだが。」
「そんなの親と同じじゃないのか?」
「基本は同じなんだがな。人ベースの奴らって人化した獣ベースとかにも生まれるんだよ。取りあえず人間の姿の時に生んでたら人、獣の姿の時に生まれたら獣ベースって感じで。でも人ベースや人化できる奴らってそうは居ねえし。まあ数が少ない分、覚醒に時間がかかることもあるけど覚醒しきったら獣ベースなんかよりよっぽど強い。で、なんでわかんねえかというと、親が分からん場合が多いからだ。」
「親がわかんないってどういうことだよ。ってかシャルムとオリって親子じゃなかったのか?」
「違うぜ。あたしが友達の処に遊びに行ってた時にちょうどその集落が襲撃にあっててな。そんときの生き残りだよ、オリは。」
「じゃあその友達とやらの子供じゃないのか?」
「それがな、あたしの友達は土だったんだよ。人型取れるやつってベースが人でも獣でも忙しいやつばっかでさ、仲間意識も強いから子供預けたりとか多いんだ。あと、事情で育てられなくなったりとか。魔獣は結構血の繋がりを気にしないからな。」
「じゃあ襲撃ってなんだよ。」
「あんま知られてねえけど種族間の争いってちょこちょこあってんだ。人型とれる奴ってやっぱそれなりの力あるから、戦いに出向くこと多いんだよ。ちなみに魔獣にもちゃんと国はあるんだぜ?」
「は?魔獣に?どうやって獣が政治をするんだよ。」
「ベルシャークっていうのが一応最大の国なんだけど、基本的に上に立つのは人型だ。獣でも上にいる奴はいるがな。下級の獣は思考ができないから。あと、力はあるけど敢えて人化しないやつらもいるし。人間や魔人に家族殺されたやつとかは絶対そんな姿とりたくないと思うってのは分かるだろ?」
俺の中で少ないと思っていたアポルの常識すら壊れつつある。獣に国?じゃあ俺が殺してるやつってなんだよ。家族が殺された?そんなのって・・・。




