確信
俺の言葉に再び笑ったシャルムは「いつから気づいてた?」と聞いてきた。
「この前すでにいろいろおかしいと思う点はあったけど確信は持てなかった。まずあんな怪我した子供がそんなに長く生きてられねえよ。あの怪我、負ってから何日か経ってたろ。やけに血の匂いが周辺に濃いと思ったし、もしかして、怪我しても遊びまわってたんじゃね?でもとうとう呪いの効果が限界まで来てぶっ倒れたところで俺と遭遇!みたいな。血の匂いたどり続けたら川とかに着いたし。途中で追う対象を魔力に切り替えてよかったよ。匂い追い続けてたら多分オーリンのお遊びコースだったんだろうな。」
「よく気づいたな。あたしもベイノルド追おうとしてたんだけど馬鹿なオリがすぐどっか消えちまうから。でもソーマは人間だよな?鼻がそんなに利くっておかしいだろ。」
「あれ?そういえばそうだな。なんでだろ。」
転生体になって、五感はかなり上昇した。でも、嗅覚と視覚の上がり方は異常だった。っていうか夜目が何故か利くようになってた。
「まあそれは後で聞くとしよう。で、あたしたちがただの人間じゃないって確信を持ったのは?」
「ああ。シャルムがツーリルノを一匹倒した時、どう見ても火力使ってたのに詠唱とか聞かなかったし何より魔力を感じなかった。いや、少し違うな。魔力の流れ方が違ったんだ。で、俺は普通の人間にはありえない速度で移動してたにもかかわらず、俺より前にいただろ。極めつけが今のオリ。こんな焼けただれた場所、人間が裸足で走り回れるはずない。」
ため息をつきながらシャルムがいまだツーリルノの残骸を見回りながら走り回っているオーリンを見る。
「今夜、話すわ。ソーマには命助けてもらったみたいなもんだし、多分あたしたちの正体を知っても何も変わらないでいてくれる気がする。」
いつのまにか野宿の準備ができていてびっくりする。
「野宿の準備って案外早く終わるんだな。」
「野宿ってなんだよ。野営って言え、野営って。あたしたちの身体能力ならこのくらい普通にできるよ。あと30分くらいで飯できるから川で体でも洗ってきたら?オリを連れてってやってくれよ。」
その言葉に軽くうなずいてオーリンのもとへ行く。そういえばアポルに来てから風呂に入ってなかったことに気が付く。バスティートにいたころは、シャワーとまではいかなくても水道のようなものがあったから軽く体を拭いたりしていた。この世界には風呂何ていう文化がないらしい。というより、泥なんかを軽く洗い流しておけば体が汚くなることがない。HPが時とともにある程度は自動回復するように、傷や汚れも軽いものなら勝手に治る。体が汚れるっていう概念自体があまりないようだ。でもそれはそれ。生粋の日本人な俺は、特別風呂が好きというわけではなかったが何日も入らないのは生理的に無理だ。いつも汗をかいたりしても臭くなるなんてことはなくても水浴びくらいはしたくなる。
「おーい、オーリン!川行くぞー!!」
俺がそう叫んだらオーリンが走ってやってきた。
「まじで?早くいこーぜ!」
そう言ってシャルムの手を引こうとする。
「何言ってんのよ。あたしは今から飯の用意。オリはソーマと行ってこい。」
「は?なんで俺がこんな奴と」
「こんな奴ってなんだよ」
俺がボソッと呟くとキッと睨みつけられた。
「なんでお前みたいなやつにこんな奴って言って何が悪い!生憎オイラ自分より弱い奴のことなんて絶対認めないからな。」
「そんなこと言ったらお前友達いなくなるぞ」
シャルムが言った途端オーリンは「じゃあ」という。
「オイラよりもそいつが強いって証明したら認めてやってみいいぜ。」
「いや、別に俺お前に認められなくても・・・。」
「なんだと!?」
「話がややこしくなるから受けてやってくれ。お前の強さを知ればオリもあんまギャースカ言わなくなるから。」
シャルムに言われてしぶしぶ頷く。ただ、ここまで自身のあるオーリンの力を見てみたいとも思った。
「じゃあお前10分間思いつくままに俺に攻撃してみろ。それでもしお前が1でも俺にダメージ与えられたらお前の言うこと何でも聞いてやる。俺は防御はするが攻撃はしねえよ。」
「なんっだその舐めたルールは!?オイラの本気くらったらお前死ぬぞ!」
「大丈夫だよ。お前じゃ無理だから。」




