決意
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「クー!」
急いで吹き飛ばされたクーのところへ行く。地面に落ちたクーは悲惨な状態だった。風によるたくさんの傷と、落ちた衝撃でボロボロだった。それを見たアールが表情を変える。
「これは・・・」
光魔法を使って傷を治そうとするが上手くいかないようだ。傷が深すぎるのかもしれない。俺は自分がクーを傷つけてしまったという事実に体が硬直して動けなくなっていた。そこに、やってきたリリスやケイル、ミアがクーを見て息を飲む。
「アール、何とかならない?」
「今全力でやってる」
心配そうに言うミアに、余裕がないのかアールがそっけなく答える。そして、呆然としている俺を見たリリスが俺の方へ歩み寄り
パンッ
思い切り頬を叩く。
「なっ!?」
ケイルが驚いた声を上げると、リリスが叫ぶ。
「あんたのせいでしょう!あんたがどうにかしなさいよ。そんなところで突っ立ってないで何とかしたらどうなの?」
「そんなこと俺にできるかどうかわからない。」
「あたしは、出来る出来ないを言ってるんじゃないの。あんたはまだ何もやってないでしょうが。あんたの膨大な魔力使えばきっとできるわよ。誰もクーがこうなったことがあなたのせいだなんて思ってない。これは訓練中に起きた事故。責任は監督不行き届きの私にだってある。でもここであなたが何もしないままクーに何かがあったら私たちは・・・」
いつの間にか泣きながら叫んでいるリリスの言葉に正気を取り戻す。そうだ。俺の魔力量があればなんとかなるかもしれない。俺は魔力をありったけ手に集め、クーの笑顔を思い出す。
「ソーマ、急がないとまずい。」
クーの状態がまずいのか、アールが声を上げる。それと同時に自分の魔力が十分に溜まったことを知覚する。
「アール、離れて。」
俺の言葉に、さっと場所を開けたアールに軽くうなずき、横たわったクーに向けて魔法を放つ。一瞬のうちに真っ白い光に包まれたアールの姿を再び見た時には傷はきれいに治っていた。暫くすると、クーが目を開ける。
「あれっ?なんでみんなここにいるの?ソウとの勝負の最中だったのに。」
その言葉にリリスが怒った。
「クーの負け。ソーマに吹っ飛ばされて、あなたさっき死にかけてたのよ?」
「え?僕元気だよ?」
「当たり前じゃない、ソーマが回復魔法かけてくれたんだから。」
「はは、僕の完敗だね。そこまでソウのお世話になっちゃってたんだ。勝負してたのに。」
俺はなんて答えていいかわからなかった。そして、最初のころにずっと考えていたことが、再び脳内によみがえった。
俺の力は異質だ。このままだとまた傷つけてしまう。今日は運が良かっただけで、次は本当に命を奪ってしまうかもしれない。そう思うと怖かった。ここにいるみんなは、本当に大切な俺の友達であって、もう仲間だ。これ以上彼らを傷つけたらきっと俺は自分で自分が許せなくなる。
俺は決意する。この町を出ることを。
「クー、ごめんな。」
「ソウが謝ることじゃないよ。勝負をけしかけたのは僕だし、死にかけたのも力が足りなかった自分のせいだ。命を救ってもらったことを感謝してるのに。」
クーの笑顔を見ていると、決意が揺らぎそうだったが、死にかけたクーを思い出す。
「クー、これあげる。お守りだ。首に掛けとけよ。絶対手放すな。」
そう言って、クーにお守りを渡す。もちろんただのお守りではないが、それをここで教えることはしない。
「俺、今日はもう帰るな。」
「ソウ、もう行っちゃうの?」
クーが泣きそうな顔をするが、ケイルがなだめる。
「クー、ソーマにもいろいろあるんだから。」
「クー、また会えるさ。」
そう一言言い残して俺はその場を去った。




