闇魔法
俺が思っていることがそのまま顔に出ていたのか、再びアールが口を開く。
「なんていうかね、例えば光だと、修復系とか回復系の魔法になるんだよ。だから、物理的な攻撃とか守備をするわけじゃないんだよね。だってさ、人の回復するときとかに光の玉とか使わないじゃん。僕のイメージとしては手にあったかい力を集めて人に触る。そこから力を流し込んで相手の傷を癒す、って感じ。結局魔法は全部イメージだからさ、僕にはまだできないけど、しっかり想像することができたら遠距離にいる仲間を回復することだってできるんだ。」
アールの言葉に納得する。あったかい力、か。
「じゃあ闇は?」
俺の言葉にアールは考え込む。
「闇ってさ、ほんっとうに術者次第なんだ。使い方のバリエーションありすぎて。ダークボールとか使ったら物理攻撃だし、あんまり使う人いないけど呪いとかも闇だし。」
「ちょっとまて。呪いってなんだよ。」
「ソーマ、闇使えるのに呪い知らないの?少しの魔力を、かけたい相手をイメージしながら少しずつ放出すると、呪いの効果によって相手にいろいろな状態異常が起こるんだよ。まあ、防ぐ手段も結構あるし、時間をかけて魔力を流さないといけないからみんな面倒くさがるんだ。だから使う人めったにいないんだよ。僕だって一回しか使ったことないし。」
「その一回って誰が標的?」
「ケイル。僕のお菓子勝手に食べたんだよ。ひどいよね、ほんと。」
アールに何かやらかしたら結構大変なことになりそうだ。そして、先を促す。
「そうそう。闇魔法の話だったね。あ、あとサイクロン系とか。相手の魔法を吸収して増力してから相手に返すやつ。でもね、魔法の階級とかによっても全然違ってくるし、サイクロン系はもし力負けしたら全部自分に帰ってくるから。」
「それにしても、他のと比べて闇は強すぎやしないか?」
「それが、闇にも結構デメリットがあって、光の防御魔法に弱いんだ。それに魔力消費が激しい。それに人間で闇魔法使う人、あんまりいないよ。血の問題かもしれないけど、魔法って遺伝することが多いんだ。人間には闇はあわないっぽいよ。だから、闇使えるのって大体魔人か、その血が流れてる人。逆に魔人は光に弱いんだ。魔人って魔力量とか人間とは比べ物にならないくらい高いけど、光魔法が結構苦手みたい。魔人の血が濃い人とかは人間の血が入ってても光は無理らしいし。」
俺は少し考える。闇、か。イメージが大事ってことは、どんな魔法を放ちたいかってことだろ。相手に向かって放って、相手の魔法を吸収しながら向かっていくのとか、かなり恰好いいよな。そんなことを考えながら手に魔力を集めてみる。そして実体化する。闇に染まった球状の魔力の塊が。
「なっ!」
アールが驚いた声を上げる。そしてリリスが眉を寄せて呟く。
「今、あいつ詠唱した?」
アールが訪ねてくる。
「ソーマ、それ何?」
「なんか闇の魔法やってみたいと思って魔力固めてみたらできちゃった。ねえ、これ放ってみてもいい?」
アールは深刻そうな顔で何か考えているが、クーが叫ぶ。
「ソウ、打って!ソウの魔法、見たい」
「んじゃあ遠慮なく。」
そう言って何も考えずに魔法を放つ。放った先には広場のベンチや花壇があった。
「あっ。」
そう叫んだケイルが、相殺しようと大きめの火球を作り出し、俺の放った闇魔法の塊に当てる。
その瞬間
「う、嘘だろ!?」
ケイルの放った火球は俺の魔法に飲み込まれた。




