収納ポーチ
部屋に戻ると、ベッドに座ってこれからのことを考える。そして、もう一度ステータスを確認してため息をつく。まるでRPGのようなその表記に、自分が本当に異世界に来てしまったのだということを実感する。とにかくこれから必要なのは情報だ。それも正確で、大量の。知らない場所で一番危険なのは何も知らずにいることよりも間違えた情報を信じることだ。1人から聞いたことを鵜呑みにしてはいけない。だが、疑いすぎると逆に不審がられてしまう。当面はシェルリーの子たちから得られる情報は得ておこう。図書館とかがあったらいいのだが。さすがにインターネットなんてものはないだろうし。
ステータスの所持アイテムの欄に目が留まる。収納ポーチレベルMAX。レベルMAXってなんだよ。っていうか何が入ってるんだよ。気になったら調べずにはいられない。腰につけっぱなしにしていたポーチに手を伸ばす。中に手を入れてみたが小さいポーチで、何も入っていない。手を突っ込んだままがっかりする。折角ならRPGらしく、HP回復薬とかが入っていたらいいのに。そう思った瞬間手に何かが当たる感覚がする。それを掴み、引き出してみると赤い液体だった。なんだこれは。よくわからないものに手を出すとろくなことが起こらない。それを知っている俺はそれを放置する。明日、バスかシェルリーの子たちに聞いてみよう。
ポーチは放置して他のアイテムに目を向ける。
所持アイテム:精霊の核×4
収納ポーチ(レベルMAX)
HP回復薬
なんか、増えてる?俺はHP回復薬なんて手に入れてないぞ。そして思い当たる。昼と今の所持品の違いは、さっきの赤い液体だけだということに。あの赤い液体がHP回復薬なのか。ってことはポーチにはHP回復薬だけが入っていた?でも確かに最初に手を入れたときは何も入っていなかったはず。そう「RPGらしく、HP回復薬とかが入っていたらいいのに。」そう思うまで。まさか、このポーチは持ち主が願ったものを出すというのか?試しにもう一度中に手を入れて「MP回復薬」と頭の中で唱えてみる。すると、やはり何もなかったはずのポーチ内に何かが現れる。掴みだして、ステータスを確認すると所持アイテムにMP回復薬が増えている。そして、いいことを思いつく。「ポーチの中身一覧」そう頭の中で唱えて手を突っ込む。しかし、手には何も触れない。おかしいと思いながらも、時間はすでに深夜になっていたので眠ることにする。明日これのことを聞いてみよう。
朝ごはんを食べてから、クーとの約束通りシェルリーの訓練場へ向かう。
昨日は何も考えずに行ったが、今日は少し辺りを見ながら行く。そして気づく。普通に見張りの兵士は居た。ただ、俺が通った道は本当に偶然に兵士たちの死角になっているのをうまく通っていただけだったようだ。流石に王直属の精鋭が見張りも何もないところで訓練しているわけがなかったのだ。人に見つからないまま昨日の場所に行くと、皆昨日と同じように訓練していた。
「おはよう。」
そう声をかけると皆がびっくりしたようにこちらを見る。
「お、おはよう。」
昨日はあまり喋らなかったミアが挨拶を返す。
「何でみんなそんなに驚いてるの?」
俺の質問にはケイルが答える。
「ミアは人の気配察知能力に長けているんだ。誰かが近づいたら真っ先に気づくのに。」
その言葉に首をかしげる。
「俺、別に気配殺したりしてないよ。そんな高等技術持ってないし。」
俺の言葉にみんな不思議そうな顔をしたが、誰もあまり深くは追及して来ないでくれたから助かった。追及なんてされても何も答えられない。
そして、昨日の疑問を口にする。
「みんなさ、収納ポーチって知ってる?」
その言葉にみんな顔を輝かせる。そして口を開いたのはリリスだった。
「知ってるも何も、伝説級のアイテムじゃない。みんなの憧れのアイテムの一つよ。無生物しか収納することはできないけれど、大きさや中に入れておく時間に関係なく、どんなものでも収納、取り出しができる魔法アイテムじゃない。」




