プロローグ
「バイバイ、ソーマ。また会おう。」
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目を開けると真っ先に目に入ったのは真っ白な天井だった。なぜ自分がここにいるのかわからない。ずっと長い長い夢を見ていたような気もするけど何も思い出せない。
「蒼真!?」
自分を呼ぶ声がしたほうを見ようと重い頭を少し横に向ける。そこには涙目で俺を見る母がいた。体が怠く、頭も思うように働かない。
「っっ。」
何があったのか聞こうと思ったが掠れて声がうまく出せない。そんな俺の様子に気づいた母が話し始めた。
「蒼真。あなた受験会場に行く途中で事故に巻き込まれて大けがしたのよ。ここに運び込まれてあなたは3日間眠り続けていたのよ。」
「じゅ、けん?」
そういえば、会場に向かう途中、真横でトラックと自動車が衝突して自分もその衝撃で吹っ飛ばされたんだっけ。その後何かが起こった気がするんだけど・・・
ズキッ
そこまで考えたところで激しい頭痛に襲われた。
「大丈夫?頭を打ったようで、目を覚ましたらもう一度精密検査をするようだから、お医者さんを呼んでくるわね。受験のことはあまり気にしないようにしなさい。これは事故なんだし、仕方ないわ。」
そういって母は病室から出て行った。
受験、か。まあ大学なんてどこいったって変わらないしどうしても行きたいと思っていたわけでもない。周りが行けというからとりあえず受験することにはしていたが正直どうでもいい。
ガラッ
病室に母が連れてきた看護婦に連れていかれて色々な検査を受けさせられたが特に異常もなく意識もしっかりしているため、2,3日で退院できることになった。
無事入院生活も終わり久しぶりに家に帰ってきた。といっても6日しかたっていないし、そのうち3日はまるまる眠っていたのだからたいして時間はたっていない。それなのになぜか数年ぶりのような気がするから不思議だ。
「蒼真」
リビングから親父の声が聞こえる。こんな時間に家にいるなんて珍しい。
「親父?なんでいるんだよ。」
「息子の退院の日くらい休んだっていいだろ。しかも受験がダメになって落ち込んでるかもしれなかったんだから。大丈夫か?」
「ああ。別に気にしてねーよ。」
「お前、これからどうするんだ?」
「どうでもいいよ。親父はどうしてほしい?」
「お前の進路だろう。好きにしなさい。」
「じゃあ浪人するわ。来年また同じとこ受ければいいだろ」
「本当にそれでいいならいいぞ。」
「じゃあそうする。明日から学校行くから先生には自分で言うよ。」
「ああ。まあ何か言われることはないと思うが、もしあれば言いなさい。」